新連載
泣けない俺と泣かせたい君
この作品は、[余命0日の僕が、死と隣り合わせのきみと出会った話。] を参考にしています。
ゆあん
ガタッ (パソコンを起動する)
ゆあん
絶対泣ける!映画
ゆあん
ゆあん
ゆあん
この作品は、俺を殺してくれるのだろうか。
ゆあん
ゆあん
ゆあん
__やっぱり、今日もだめだった。
今回こそは、泣けると思ったのに。
環境も俺と似ていたのに。
ゆあん
ゆあん
__早く、
殺してくれればいいのに__。
俺は____。
涙失病だ。
昔は、ずっと泣き虫だった。
涙失病と宣告されるまでは__。
それから母は、「悲しいときこそ、笑いなさい」と言った。
愛犬のモコが亡くなったときは、必死に涙を堪え、笑顔に笑った。
今思えば、不気味だったと思う。
でも___。
母が脳溢血で亡くなったのだ。
前触れもなく、台所で倒れた。
それから一週間誰も気づかず、 起きてきた父が発見して救急車を呼んだが_…
手遅れだった。
あまりにも急な別れに、俺は困惑して号泣してしまった。
視界が徐々に青くなっていた。
父は、ずっと泣くなと必死に言っていた。
だけど、無理だった。
それから俺は、生死をさまよった。
奇跡的に俺は今生きている。
今は、殺してくれればよかったのにと後悔している。
ゆあん
あんなふうに泣いてみたい__。
俺はかれこれ、7年間涙を流していない。
それに嫌気が差して、最近は泣ける映画などを見ていた。
ゆあん
ゆあん
俺だって、青春を味わってみたかった。
俺は、感情を押し殺して生きていかなくちゃならないのだ。
心底うんざりした。
だから俺は、1年以内になんとしてでも自分を泣かせ、…
この辛い毎日に終止符を打とうと決意した。
ゆあん
ゆあん
死ねないんだろうな__。
ゆあん
ゆあん
静かな図書館に入ると、すぐそのコーナーに目を走らせる。
本の数は少ないけれど、無料で泣かせてくれるなら、むしろ嬉しいくらいだ。
ゆあん
ゆあん
ゆあん
俺は、そのコーナーを読み尽くしていたのだ。
ゆあん
ゆあん
???
???
えと
ゆあん
振りかえると、そこにいたのは「星野えと」だった。
その大きな瞳からは、涙が一筋流れている。
ゆあん
ゆあん
クラス替えをしてから2ヶ月、大半の生徒の名前を覚えていない。
だけど、彼女の名前だけは知っている。
俺は、入学前から知っていた。
あれは、この高校の合格発表の日。
ゆあん
ゆあん
えと
えと
えと
えと
えと
ホワイトボードに番号が張り出されると、自分の番号をみつけたらしいロングの彼女が号泣していた。
ゆあん
あんなふうに泣けるって……
それが印象的で、名前を覚えている。
それからもずっと涙を流していたから。
俺は星野のことを”よく泣くやつ”と認識していた。
それから俺は__。
少し興味がわいた。
そして、二年で同じクラスになった。
今日も星野はないていた。
ハンカチで目元を押さえながら本を読んでいる星野に歩み寄り、背後から声を掛けた。
ゆあん
ゆあん
えと
えと
えと
えと
ゆあん
そのタイトルを見て目を見開く。
まさに、俺が探していたものだった。
ゆあん
えと
えと
ゆあん
ゆあん
ゆあん
ゆあん
ゆあん
えと
えと
星野はそう言って、ポケットティッシュではなをかんでいた。
ゆあん
涙脆い人=優しい人
この予想は、まちがっていなかった。
えと
ゆあん
えと
ゆあん
こういうときにどうすればいいのか、俺にはまったく分からない。
えと
えと
ゆあん
ゆあん
ゆあん
えと
えと
ゆあん
ゆあん
えと
ゆあん
そうドキドキしながら、読み初めた。
ゆあん
ゆあん
えと
えと
星野が、俺の顔をのぞいた。
俺の瞳がうるんでないか確認したのだ。
ゆあん
ゆあん
今回も、泣けなかった。
俺の瞳は、潤みもしなかった。
星野は、もうじき俺が泣くころだと視線を向けてくる。
申し訳ない気持ちになった。
ゆあん
ゆあん
えと
えと
ゆあん
えと
ゆあん
ゆあん
えと
えと
他に何をいえばいいのか、分からない。
ゆあん
えと
えと
ゆあん
えと
ゆあん
俺も泣きたいよ。
えと
えと
ゆあん
泣きたいんだよ、俺も。
君が羨ましい。
誰か俺を__… 。
泣かせてくれよ___。
えと
えと
ゆあん
ゆあん
えと
ゆあん
えと
えと
えと
ゆあん
__俺、
泣いたら死ぬ病気なんだよ。