数日後
女の子は児童相談所を出ていった
そのまま児童養護施設に向かったようだった
あの子の体の傷はショックだったけれど
何日か経つと自然と考えなくなっていって
四回目の日曜日が来る頃には
思い出すこともなくなっていた
拓郎
美結!
美結
たっくん!
美結
いっちゃんは?
拓郎
ちょっと……風邪引いちゃってね……
美結
いないの?
拓郎
ごめんね……
拓郎
でもほら、たっくんは来たよー
いっちゃんが熱を出してしまい
たっくんが一人で会いに来てくれた
たっくんが来てくれたのは嬉しかった
でもいっちゃんがいないだけですごく寂しくて
美結
いっちゃん……
拓郎
美結……
拓郎
はい、これ
美結
たっくん?
たっくんはポケットからスマホを出して
いっちゃんに電話をかけてくれた
画面に出てきたいっちゃんの顔に
美結
いっちゃん!
嬉しくて跳び跳ねそうになった
郁美
美結……ごめんね……
熱で顔が赤くて咳も酷くて
それでも必死に笑顔を見せてくれる
それが嬉しくて
美結
もうおしまい
拓郎
え?話さなくていいの?
美結
いっちゃんおねつだから……
郁美
美結……
美結
いっぱいねんねして……
拓郎
美結……
郁美
ありがとう……
郁美
今度はちゃんと行くからね
美結
うん……
電話が切れて真っ暗になった画面
ぎゅっと抱き締めて離さなかった
たっくんが何度も頭を撫でてくれて
いっちゃんがいなくてすこし寂しかったけど
その分たっくんがたくさん話してくれて
最後にはちゃんと指切りをしてくれた
拓郎
今度は二人で来るからね
美結
うん
どんどん遠ざかっていくたっくんの車
またいつか
あの車に乗っておでかけしたい
そんな思いが膨らんでいく
拓郎
ただいま……
郁美
おかえり……
拓郎
起こしちゃった?
郁美
喉が乾いて……
拓郎
スポーツドリンク買ってきたよ
拓郎
あとお粥、レトルトだけど……
郁美
ありがとう……
たっくんはいっちゃんに
今日、私と話したことを報告
いっちゃんは横になりながらも
私のことをすごく気にしてくれていて
郁美
次は絶対に行かなきゃ……
早く風邪を治そうと
大量の風邪薬を用意していた
拓郎
そんなに薬飲んじゃダメだって
郁美
だって、美結のために
拓郎
わかってるよ
拓郎
でも薬はこれだけにして
二人は指切りをして
拓郎
早く風邪治して会いに行こう
郁美
はい!
いっちゃんはそのまま眠りについた