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上野原高等学校革命同好会

第17話 - 幕間【２】

2025年07月22日

#ミステリー

#心理戦

#推理

#デスゲーム

#エターナル・コウタ・ブリザード

日比野響

ヤナギ

さて、イガラシ先生。

ヤナギ

これはどういうことだか説明してもらえますか？

イガラシ

その前に、とりあえず【革命軍】の脅威は退けられたみたいだから、一度カメラのほうを――。

イガラシが言うと、ヒグラシは無言で頷き、カメラを下ろした。

イシカワ

で、これはどういうことだ？

イガラシ

それは、俺も把握できていないというか――。

イガラシ

ただ、俺達に対して罪の暴露をしている【革命軍】は、なんとなく本物の【革命軍】じゃないような気がしたんだ。

イシカワ

あ、さっきのイガラシの罪か。

イガラシ

あぁ、察するに【革命軍】は、しっかりと組織立って動いている。

イガラシ

そして、自らの信念を持っているように思える。

イガラシ

そんな連中が【革命軍】の黒幕であることを【罪】だと捉えるとは思えなくて。

ヤナギ

つまり、あの問いかけの時点で、イガラシ先生は疑いを持った。

ヤナギ

目の前にいる人物は本物の【革命軍】ではないと。

イガラシ

えぇ、ただゲーム自体は、しっかりと作り込まれていたと思います。

イガラシ

まるで、誰かが俺達を追い込もうとしているかのように。

ミヤギ

あれは――本当なら別の設問を出すところを、セイヤ君のところだけ変更したの。

ヒグラシ

そうだ。根本的な疑問がひとつ。

ヒグラシ

確か君は【３Ｄ事件】の時にいた子だよね？

ヒグラシ

どうしてこんなところに？

ミヤギ

そんなことを言ったら、どうしてハカセ君のお父さんがこんなところにいるの――って話になるんですけど。

ヒグラシ

まぁ、私はたまたまさ。

ヒグラシ

たまたま転勤先がセイヤ君の高校の近くだった――っていう、皮肉にもならないような偶然だよ。

イガラシ

全くもってその通りです。

イガラシ

まさか、こんなところで再会することになるとは思わなかった。

キョウトウ

そ、その――話が見えてこないんだが。

キョウトウ

イガラシ先生と、そちらのお二方は知り合いということでいいのかな？

イガラシ

えぇ、【３Ｄ事件】と呼ばれた事件に巻き込まれたクラスメイトと、クラスメイトの父親です。

ホソヤ

ふん、あの事件は悲惨だったようだが、今回もいい勝負だな。

オオタ

というか、ホソヤ先生もどこに行っていたんですか？

オオタの問いかけに、ホソヤとミヤギが顔を見合せた。

ミヤギ

話すとちょっと長くなりますけど――。

昔とは違い、どこか頼もしくなったミヤギが、静かに口を開いた。

某地方　すなっぴ編集部

編集長

はぁ？

編集長

北海道？

編集長

北海道まで行って、何を取材するんだ？

ミヤギ

高校生の間で広がりつつある革命運動。

ミヤギ

それを取材したいんです。

分かりやすいくらい、深い溜め息をつく編集長。

編集長

あのな、ここは地方週刊誌の編集部なんだわ。

編集長

そういうのは、しっかりとした一般大衆紙がやればいいのであってな。

ミヤギ

でも、もしかして大きな事件に発展するかもしれないんです。

ミヤギ

これ、見て下さい。

ミヤギはそう言うと、自分のスマートフォンの画面を見せた。

来るべく革命の日に向けて――我々は全てをささげねばならない。

同志よここに集え。

ナポレオン

同志達よ。

ナポレオン

私はナポレオン。

ナポレオン

この【革命同好会】のリーダーだ。

匿名Ａ

完全に厨二病だろ。

ナポレオン

そうだな。近親感を持ってもらうために、少し自己紹介をしよう。

ナポレオン

私は現在、高校生である。

ナポレオン

ずっと昔から思っていたが、この学校という組織は、どうにもいささか居心地が悪い。

匿名Ｂ

まぁ、学校なんてだるいだけだしな。

ナポレオン

だるい――で済めばいい。

ナポレオン

あんな窮屈は場所に監禁し、同調圧力に晒さられ、時として虐げられる。

ナポレオン

教師の言うことは絶対であり、みんながいいように飼い慣らされている。

匿名Ａ

おい、だから厨二病がすぎるぞwww

ナポレオン

まだ気づかないのか？

ナポレオン

我々は日本という国のために、真面目で勤勉に働く奴隷となるため、学校という場所で飼い慣らされている。

ナポレオン

このままでいいのか？

ナポレオン

――決起せよ。

ナポレオン

決起せよ！

編集長

ふーん、で？

ミヤギの訴えは編集長には届かなかった。

このサイトを見つけたのは数週間前。

編集長

ただの大人の階段登りたい、意識高い系の高校生が作ったサイトだろ？

編集長の言う通りだった。

しかし、サイトを追いかけてみると、最初こそ見向きもされなかった【ナポレオン】だったが、１人――また１人と支持する人間が出始めたのだ。

それは、ある種の宗教のようだった。

最初こそ馬鹿にしていた人間も、いつしか【ナポレオン】に魅了されていった。

ミヤギ

でも【ナポレオン】は有名な革命家ですし、事実この【ナポレオン】も、北海道のとある高校で革命を起こすと言い出しているんです。

編集長

――仮にそうだとして、本当に革命なんて起きるのか？

編集長

高校生が言ってることだろ？

編集長

口だけの可能性だってある。

ミヤギ

――行かせて下さい！

ミヤギ

なんだか悪い予感がするんです！

ミヤギ

それに――その高校には、私の命の恩人がいるかもしれないんです！

しかし、編集長は大きな溜め息を落とすばかり。

編集長

あー、分かった分かった。

編集長

行きたいなら、プライベートで行け。

編集長

もう明日から来なくてもいいから。

予期せぬ反応ではあったが、しかしミヤギにとっては、それでも構わなかった。

ミヤギ

ありがとうございます！

ミヤギ

あ、ついでに先輩を借りて行きます！

ミヤギ

私、免許持ってるけど、運転怖いので。

編集長

あ？

編集長

ミヤギ、俺が言ってることの意味、分かるか？

ミヤギ

お休みをいただけるってことですよね？

ミヤギ

ここブラックですし、これまでの代休と有給全部使って、取材に行かせてもらいます。

編集長

お、おい。

編集長

それはちょっと困――。

きっと、そう言えばミヤギが引き下がると思ったのであろう。

編集長は困ったように眉をひそめる。

そこに、タイミング良く、ミヤギが同行してもらおうと考えていた先輩が戻ってきた。

部屋の外でやり取りを聞いていたのだろう。

やけにニヤニヤしていた。

サガノ

編集長、こいつに何言っても無駄ですよ。

サガノ

まぁ、確かにうちはブラックだし、俺もちょっと有給使わせてもらいますよ。

編集長

え、ちょっと待って。

編集長

次号の編集はどうするんだ？

編集長

企画は？

編集長

記事は？

サガノ

そいつは編集長がやればいいでしょう？

サガノ

まぁ、優秀な社員を簡単にクビにするようなところだ。

サガノ

すなっぴの読者なんて、そんなにいませんから心配いりません。

サガノ

なんで週刊で出すかなぁ？

サガノは困惑する編集長に歩み寄ると、編集長の肩を叩く。

サガノ

すなっぴ、ただの地方週刊誌から全国誌にしましょうよ。

サガノ

そのために――ね？

サガノ

お留守番よろしく。

編集長

――はい。

サガノ

行くぞ、ミヤギ。

サガノ

そこまで言うなら、ちゃんと調べはついてるんだろうな？

ミヤギ

はい、もちろんです！

ミヤギはそう答えると、サガノの後に続いて編集部を飛び出したのであった。

編集長

あの、俺――パソコンもろくに扱えないんだけど。

そんな、編集長のつぶやきを背をして。

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