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数日後――。

空港で手配したレンタカーの車内。

サガノ

さて、これでいよいよ後に退けなくなったぞ。

サガノ

ミヤギ、大丈夫なんだろうな?

ミヤギ

はい、辞める覚悟はできてます。

ミヤギはそう言うと、常にバッグの中に入れている辞表をサガノに見せる。

ハンドルを握りながら、サガノは大きな溜め息。

サガノ

お前って、変に大胆というか、覚悟決めた時の行動力が半端ないよな。

ミヤギ

私、高校の時、本当に引っ込み思案だったんです。

ミヤギ

そんな自分をあまり好きじゃなかったし、どこかで変えたいと思ってました。

サガノ

で、今はめでたく編集長に噛み付く面倒臭いやつになったってわけか。

サガノ

まぁ、それについてはいい。

サガノ

それより、このまま向かっていいんだな?

サガノ

上野原高校とやらに。

ミヤギ

はい、ナポレオンが本気であれば、今日その高校で革命が実行されます。

例のサイトは日を追うごとに過激となり、とうとう脅威はサイトから現実へと飛び出した。

だからこそ、こうして北海道までやってきたわけだが。

サガノ

これで実際に現地に行って、何事もなかったら――それはそれで面白いな。

ミヤギ

何もなかったら、それでいいんです。

ミヤギ

ただ、あまりにも具体的すぎる気がして。

サガノ

それにしても、その命の恩人君が、上野原高校に勤務してるなんて、良く分かったな。

ミヤギ

あ、一応なんですけど、当時のクラスメイトが全員入っていたグループメールが残っていて、そこまで頻度は高くないけど、たまに近況報告みたいなのが入ってきたりしていたんです。

サガノ

それで、命の恩人君が、上野原高校で教師をしていることを知ったってことか。

ミヤギ

そう言うことですね。

サガノ

ふーん、それで、どうなの?

サガノ

好きなの?

サガノ

命の恩人君のこと。

ミヤギ

な、なんでそうなるんですか!

サガノ

いや、わざわざ北海道まで行こうって思えるか?

サガノ

単なるクラスメイトってだけで。

ミヤギ

だから、命の恩人なんですって!

サガノ

分かった分かった。だからムキになるなよ。

ミヤギ

本当に――何事もなければ、それでいいんです。

それは、ミヤギの切実な願いだった。

例のサイトを見つけた時、それを眺めつつ、大きな悪意を見た瞬間、ミヤギは実に悪い予感を抱いた。

そして、悪い予感というものは、得てしてよく当たるものである。

サガノ

いや、どうやらそうはいかないみたいだぞ。

サガノは減速すると、車を路肩に寄せる。

パトカーのサイレンが、けたたましく鳴り響きながら、ミヤギ達の脇をすり抜けて行く。

しかも何台もだ。

それらの赤色灯は、少し先を左折していく。

その先に見えるのは――。

カーナビ

目的地周辺です。

カーナビ

ナビを終了します。

詰めの甘いカーナビがナビゲーションを放棄し、赤色灯が遠くで踊るは――。

目的地である、上野原高校らしかった。

サガノ

てっきり規制線を張られるかと思ったけど肩透かしだな。

サガノ

こうして見ると、警察だけではなくマスコミの姿もちらほら――。

ミヤギ

ナポレオンの計画では、マスコミを入れて、革命の一部始終をテレビ中継させるはずでしたから。

サガノ

なるほど、だから俺達みたいなのが紛れ込めたわけだな。

サガノ

週刊【すなっぴ】が。

ミヤギは早速行動に移す。

サガノ

っておい、ミヤギ。どこに行くんだ?

ミヤギ

ちょっと周囲の様子を探ってきます。

ミヤギはあらかじめ上野原高校のことを徹底的に調べてあげていた。

ネットを使い、現地の様子を探り、校舎の構造などを、それこそ徹底的に。

その理由はいたってシンプル。

校内へ入り込むためだ。

なにがそこまでミヤギを突き動かすのか。

実のところミヤギ自身も分からない。

強いて言うならば、嫌な予感。

自分のことを救ってくれた人を失うかもしれないという、妙な危機感。

ミヤギ

(確か、校舎の裏手に回ったところに、職員専用の勝手口があるはず)

ミヤギ

(さすがに真正面からはまずいけど、裏のほうなら警戒されていない)

ミヤギ

(相手が何人くらいかは分からないけど、多分全部の出入り口に人員を配置するのは難しい)

ミヤギ

(先に配置するなら、まず正面玄関とか、表立った場所からだろうし、裏口の――しかも職員専用勝手口となれば、優先度も低い)

ミヤギは自身のバッグの中を確認する。

護身用のスタンガンを取り出し、裏口へと向かった。

裏口へと辿り着くと、中から何やら揉めているような声が聞こえる。

恐る恐ると窓から中を覗いたミヤギは、思わず息を呑んだ。

ミヤギ

(あのガスマスクをしているのが【革命軍】ってこと?)

【革命軍】はライフル銃らしきものを持っているが、おそらくナポレオンの言葉通りならば、改造したエアガンというやつだろう。

ナポレオンの指示に従い、他の人間に作らせたものだったはず。

恰幅の良い男

こんなふざけたことやっていいと思ってるのか?

ライフルを突きつけられ、両手を渋々挙げているように見える恰幅の良い男。

察するに、どうやら【革命軍】ではないらしい。

革命軍

貴様――教師の分際で、まだ立場が分かっていないのか?

恰幅の良い男のこめかみに、ライフルが突きつけられる。

ミヤギ

(ガスマスクは2人か――。武器らしいものは、あのライフル。改造エアガンって話だけど、どれくらい危ないかは分からない)

ミヤギが様子見に徹していた、次の瞬間のことだった。

隙をついて、ライフルの銃口を払いのけた恰幅の良い男。

その勢いでバランスを崩した革命軍の1人にタックルをかます。

革命軍

くそっ!

気味の悪い合成音声を発しながら、もう1人の革命軍がライフルを男に向ける。

ミヤギ

(危ない!)

体が頭より先に動くとはこのことで、ミヤギは靴も脱がずに土足で勝手口の中に飛び込んだ。

勢い良く飛び込んだから、思わず転びそうになってしまうが、足を前に踏み出して、辛うじてバランスを保つ。

革命軍の1人には、恰幅の良い男が馬乗りになっているが、しかしもう1人の革命軍が男の背後に迫る。

ライフルの引き金に指がかけられたのを見て、ミヤギはなかば無意識に駆け出していた。

ミヤギの気配に気づいた革命軍が振り返るよりも早く、ミヤギが首筋へと突きつけたスタンガンが弾けた。

ほんの一瞬のことだったため、革命軍は声も上げずに倒れる。

一方、恰幅の良い男は革命軍の首に腕を回し、寝技のようなものをかけていた。

ぐったりとした様子から、意識を失っているようだ。

恰幅の良い男

……ふぅ、舐めやがって。

恰幅の良い男

って、あんた誰だ?

ミヤギ

あ、あの――。

なんと言って説明して良いのか分からなくなったミヤギは、スタンガンを片手にこう続けたのであった。

ミヤギ

週刊【すなっぴ】の記者、ミヤギです。

恰幅の良い男

はぁ?

恰幅の良い男の、疑心に満ちた返事が、静まり返った廊下にはやけに響いた。

上野原高等学校革命同好会

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