カラン__
見慣れた看板の扉を開ければ ベルが小鳥の様に鳴った
其処に一足踏み込めば、まるで、世界が変わった様に店の雰囲気に呑み込まれる
階段を降りると、ジャズが耳に入って落ち着いた匂いがした
何時もと変わらない居場所
…だが、今日は一つ、違う処があった
太宰
太宰
白い外套に白い帽子
後ろ姿からでも伝わる不気味な佇まい
私が、1番会いたくない人
其して_
D
私が、今、1番会いたい人_
D
太宰
D
D
空いている隣に目配せして坐る様催促する
D
D
私が坐ったのを合図にDが口を開く
太宰
太宰
D
D
太宰
_カラン
Dが氷を指で弄ぶ グラスに当たって綺麗な音が鳴る
ほろ酔い気分で眺めていると 目の前に頼んで無い筈のワインが置かれた
D
太宰
D
D
太宰
どうも怪しまれているのはバレているらしい
信じ難いが残すのも勿体ない 1口喉を潤す
太宰
思わず水を飲んでしまいそうな程 甘く濃厚なワインだった
D
太宰
聞いたことのある名に脊髄反射する
太宰
D
太宰
もう一口ワインに口付ける
太宰
太宰
D
グラスを傾けると毒色の液体がひっそり波打つ
太宰
太宰
太宰
太宰
D
_カラン
溶けた氷が崩れ、グラスの音を響かせる
D
たっぷり間を開けた後にしたのは 深い溜息だった
太宰
D
D
噛み締めるように、呟くように、そう云う
太宰
私は何処か恥ずかしく思えて 顔を隠すようにワインを1口流し込む
完全に、照れ隠しであった
D
D
太宰
ガタリと立ち上がっては 状態を低くし太宰の耳元で囁く
D
D
太宰
顔が猛烈に赤くなるのを感じ取って 咄嗟に俯く
D
D
誰にも訊こえない、二人だけの会話に柄にも無く時めく
太宰
返答に困って、曖昧に濁した
D
其の何気無い言葉に何だか惹かれて
私は貰ったワインを全て飲んだ後 追い掛けるように店を出て、彼の人の元へと向かった
私が、1番、好きな、__
__カラン
end
コメント
19件
相変わらず最高な作品をありがとうございます!(^.^)(-.-)(__)
とっても爽やかです
ん"~やっぱり杠葉様神!文才の塊! 僕にその表現力、語彙力頂戴(((((千陽にも云ったけど 語彙力ありすぎで困ってない .....?(゜.゜)(((((( 僕が貰うy((ベシッ((どうぞどうぞこいつを殴って下さい