テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
時 透 s i d e .
蝶屋敷の朝は静かだった
雨上がりの庭には水滴が光り、小さな花たちが露を抱えていた
無一郎は早朝から、庭の隅で木刀を振っていた
ただでさえ鋭い表情に、今は言葉に出来ない迷いが浮かんでいる
時 透
確信は無い
だが、直感は何かを訴えてくる
以前、任務で遭遇した上弦の零と、芙梛の持つ何かが、どうしても重なってしまう
そしてもう一つ、心に影を落としているもの──
時 透
不意に背後から声を掛けられた
振り向くと、「 甘露寺蜜璃 」が小さく微笑んでいた
時 透
甘 露 寺
甘 露 寺
無一郎は少し口を閉ざし、暫くしてから答えた
時 透
甘 露 寺
蜜璃の無邪気な言葉に、無一郎の手が一瞬止まる
時 透
甘 露 寺
甘 露 寺
甘 露 寺
蜜璃はそう言って、無一郎の肩を軽く叩いた
甘 露 寺
甘 露 寺
彼女の言葉に無一郎は答えない
けれど、その心の奥で何かがゆっくりと形になっていくのを感じていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日の昼
芙梛と出会った縁側で、一人腰掛けて空を見上げた
無一郎は静かに呟いた
時 透
そこまで言いかけて、言葉を止める
時 透
時 透
揺らいでいるのは心ではない
揺らいでるのは、 "信じたい想い" と "疑ってしまう直感" だった
コメント
1件