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HAPPY BIRTHDAY ICHIGOTARUTO

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HAPPY BIRTHDAY ICHIGOTARUTO

3 - 彼岸の館 前編

♥

522

2024年10月06日

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桜吹雪が舞う春の青空を見上げる

(カナト…)

花束を持ちながら夢で起きた、到底夢だと片付けられない出来事を思い返す

カナト。お世辞にも幸せとは言えなかったであろう彼の人生に涙が溢れそうになる

レパール

苺子

…レパール

ねぇ、カナトは報われたのかな。一人じゃないかな

寄り添う親友に本音をポツポツと零す

親友もまた、夢に巻き込まれた人であった

レパール

苺子の…僕達の思いはきっと彼に届いてるよ

そうだと良いね…

レパール

さぁ、行こう。カナトを待たせてる

…うん!

彼が見たいと言っていた春の花々を抱え直し、私達は歩き始めた

意識がぼんやりと覚醒し、浮上する

ん~…今何時?

外を見ると真っ暗なので夜中であることには間違いないだろうが如何せん時間が分からなかった

部屋には時計がついていないのでスマホを探す

(あれ…?何処だ…)

しかし、幾ら探しても見つからない。二度寝を視野に入れていた頭がどんどんはっきりしていく

(しょうがない、起きるか…)

…!!?

そうして起き上がった瞬間、悪寒が走った

(何だろう…凄く嫌な予感がする)

考えるうちに不安になった私はいつの間にか親の部屋の前に移動していた

いつもなら、何の躊躇も無く入れる親の寝室

今は心臓がドクドクト大暴れしていて落ち着かず漠然と不安になる

(大丈夫。大丈夫)

(親の顔見て、安心したら二度寝するだけだから)

(スマホも明るくなればきっと見つかる)

そんな思いを持ちつつ、扉を慎重に開けた

…えっ?

思わず声が漏れる

お母さん…?お父さん…?

普段はここで寝ている筈の両親がいない。しかし他の部屋にいる様子も見られなかった

やけに静かだとは思っていたが出来れば勘違いであって欲しかったところである

どうしよう…!どうしよう!

軽くパニックになった私は思わず外を見た

起きたばっかりの時はただただ暗いと思ってた外は、クレヨンで塗りつぶされたように黒かった

なにこれ…

ここ、何処なの…?

どうしようもない恐怖に襲われる

…外はどうなってるのかな

しかし、同時に好奇心も抱いた

……

私は自室に引き返した

私は部屋に入るなり、準備を始めた

何を持っていこう…

そこそこ入るリュックに何を詰めるか考える

スマホは持っていきたいが無いので論外。何に役立つかは分からないがルーズリーフと筆箱を持った

(万が一の為に、動きやすい服にしよう)

そんな事を考えながら、いそいそとパジャマを脱ぎ捨て着替える

準備完了!

誰がいる訳でもないのに恐怖を拭おうと、できるだけ元気な声を出す

そして、ドアに手を掛けた

…いってきます!

出来れば早くこの悪夢が覚めることを願いながら玄関を見る

見慣れた玄関なのに何だか怖かった

外は見たこともない鬱蒼とした林であった

ホントに何処…

どうしようか考えた瞬間

────がさり

…!?

急な音に構える。足はガタガタと震え、今にも崩れ落ちてしまいそうだ

レパール

…苺子?苺子なの!?

えっ!?

レパール!

音の正体は、何故かいる己の親友であった

私は心細くなっていた時に現れた親友に抱きついた

レパール

わっ!苺子!

会えて良かったー!

暫し寂しさをレパールにぶつけていると、あちらも抱きしめ返してくれた

そういえばレパールは何でここにいるの?

レパール

それはこっちのセリフだよ

レパール

家に誰も居なくて恐る恐る出たらここだったから

私も!同じ!

レパール

ほんと?

ほんとほんと!!

レパール

まぁ、苺子が嘘つくとは思えないし信じるよ

どうやら状況は同じらしい

急に目が覚めて、家の何処を見ても誰もいなくて、家を出た。そんな状況

これからどうする?

レパール

うーん…取り敢えず出口を探してみよう

そうだね

ここにいたって何も変わらない。私達は歩き始めた

気づけば開けた場所にいた

そして、目の前には大きな館が佇んでいた

レパール

すっごく大きいね…

お金持ちが住んでそうな大豪邸って感じがする

…行ってみる?

レパール

不法侵入にならない?

色々と変だし今更でしょ!

レパール

それもそうだね

そんなこんなで私達は館に足を踏み入れた

ひっろ…

レパール

広い…

入ってすぐの大広間は外見に見合う、いやそれ以上の広い空間であった

レパール

僕の家より広い…

流石豪邸…!

各々の感性で感心していると、奥から音が聞こえた

何…この音!?

レパール

も、もしかしたら僕ら以外の誰かも…

人かも知れないが人であるとは限らない。ホラーゲームにでるような化け物かもしれない

私とレパールは団子のように固まりながら音がする方を注視した

レパール

どんどん近づいてくる…!?

帰りたい…!

そうこうしている間に、ガチャリ。と扉が開く

(怖い!お母さん!お父さん!助けて!)

恐る恐る見てみる。そして────

レパール

人…?

人…良かった…

安心して思わず座り込む

すると、入ってきた人。いや少年が話しかけてきた

カナト

驚かせて済まない…

カナト

まさか人がいるなんて思わなかったよ

あ、うん。大丈夫

レパール

人がいることが確認できて僕らも驚きました

レパール

ちなみに…名前は何というのですか?

カナト

俺の名前はカナト

カナト

よろしくな

カナトという名前らしい。あちらが自己紹介したならこちらもしなければ無作法というもの

私は苺子だよ!よろしく

そして隣にいるのが親友の

レパール

レパールです。よろしく

カナト

おう、よろしく

一通り自己紹介を終えたところでカナトが話し出す

カナト

お前ら何処から来たんだ?

私達は気づいたら家に誰も居なくて外に行ったらここに着いたの

レパール

カナトはこの館が何なのか知っているのですか?

カナト

…いや、何も知らない。気づいたらここにいたんだ

じゃあ私達と一緒だね!

レパール

そうみたいだね

気づいたらここにいたらしいカナト。私達とは違って、家で目が覚めたわけじゃないみたいだ

カナト

これからどうすんだ?

取り敢えず外の林から抜け出したい!

レパール

じゃあ外に戻ってみる?

カナト

すぐそこの玄関から出てみるか?

うん!

さっき開けた扉に手を掛ける

…あれ?

レパール

どうしたの?

扉が…扉が開かない!

レパール

えぇ!?

カナト

ほんとだ開かない

幾ら押しても扉はびくともしない。入る時はすんなり開いたのが嘘みたいだ

ど、どうしよう!

カナト

この館の中を探索するか?

レパール

そうですね…今はそれぐらいしか出来ないです

外に出れなくなった私達は、この謎の館を探索することになった

一番近くの扉を開けると、そこには広い空間があった

これ全部本…!

凄い!

カナト

一部屋が異様に広いよな

レパール

うん。流石御屋敷なだけはあるね

レパール

全部読んでみたいな…

カナト

馬鹿言え。何ヶ月掛かると思ってんだ

カナト

しかも、昔の言葉だから意味が分からないと思うぞ

レパール

そうなんですね…とても残念です

レパールは残念そうな声色で言った

(どれどれ…)

試しに本を取ってみるとカナトが言った通り、よくわからない言語が並んでいた

解読は無理そうであった

読めないならヒントとかあっても意味ないじゃん!

レパール

しょうがないよ…違う部屋に行ってみよう

カナト

それもそうだな

また私達は部屋を移動した

更に奥に進むと薬品が並んだ部屋についた

レパール

色々置いてあるね…危険な薬品もあるかも

カナト

気を付けないとだな

む、難しい…

何…?このエスユーエルなんたらとかエイチつーエスオーフォーって書いてある

カナト

それH₂SO₄!!硫酸だ!

レパール

多分Sulfuric acid…硫酸だよ!

えぇ!?

二人がまくし立てるように同時に言う

そ、そんな危ないやつだったんだ…

カナト

机に置いておけ

レパール

僕もカナトと同じ意見。置くのが良いと思うよ、苺子

りょ、了解!

私は慎重に硫酸を机に置いた

レパール

ここは危ないから違う所に行こう

う、うん!

そそくさと部屋から出ていった

次の部屋は鍵が掛かっていた

カナト

駄目だな。鍵が掛かってる

カナト

さっさと違う部屋に行くぞ

鍵が掛かっていたことで興味が失せたのか、カナトは違う部屋に行こうと催促した

そうだね

次の部屋へレッツ・ゴー!

次の部屋に行かない理由は無いのでカナトに従うように移動した

色々な部屋を回っていると、明らかに雰囲気が違うところに出ていた

(扉も部屋も、今までとは全く違う)

…何だか嫌な予感がする

カナト

奇遇だな。俺もだ

レパール

僕もあまり良い予感はしません。引き返しましょう

カナト

そうだな

そうしよう!

鍵のついた部屋などを除いて、殆どの一階の部屋を見終わった私達は大広間へと戻った

結局出れそうな所、一階には無かった…

レパール

うーん…困ったね

カナト

なら二階に行ってみるか?

そうだね…くよくよしたって何も起きないし!

カナト

元気だな…

レパール

まぁ、それが苺子の良いところですから

一階には脱出の手掛かりになりそうなものは無く、私達はカナトの意見で二階も探索することにした

レパール

じゃあ、早速行ってみよう

カナト

なぁ、待ってくれ

レパール

どうしたのですか?

カナト

俺、こういう隙間がある階段苦手なんだ…

カナト

心配し過ぎなのは分かっているんだが、誰か先に行ってくれないか?

レパール

階段、苦手なんですね

カナト

あぁ…情けないことにな

どうやらカナトは階段が苦手らしい。私は何だか意外に感じた

なるほど…カナト!

カナト

急に大声出すなよ…どうしたんだ苺子

この私に任せておけ!

カナト

行ってくれるのか?

勿論!

今、先陣を切るのは自分だと確信した私はカナトに堂々と宣言した

レパール

流石、苺子

カナト

苺子…ありがとうな

どういたしまして!早速行ってくる!

そうして私は階段を上り始めた

いざ上ってみると、隙間のせいで下が見えて僅かながら恐怖を感じる

(カナトが怖がるのも無理ないね)

レパール

苺子ー!大丈夫?

カナトの気持ちが分かった気がするー!

レパール

怖い?大丈夫?

大丈夫大丈夫!

カナト

よく上れるな…

私は二人と会話を交わしつつ、どんどん二階へと足を進めていった

(ちょうど真ん中辺りかな?)

そう思った瞬間

────バキリ

…え?

レパール

苺子!

カナト

苺子危ない!急いで上るんだ!

カナトの声を聞いた私は全速力で階段を上る

その間にも、階段から大きな音が鳴り響いている

(足を止めたら死ぬ!)

私は必死に上った

はぁ、はぁ…

何とか二階に着いた私は疲れからか、その場に寝転んでしまった

レパール

苺子!苺子!

カナト

大丈夫か!?

う、うん…大丈夫…

息も絶え絶えで伝える

レパール

取り敢えず無事で良かった…

カナト

済まねぇ…俺が情けないこと言ったばっかりに…

レパール

カナトは悪くないです

そうだよ!カナトは悪くない!

息を整えた私はカナトに向かって叫んだ

カナト

苺子…レパール…ありがとうな

いえいえ!

レパール

当然のことです

カナトを何とか元気付けようと私は出来るだけ元気に振る舞った

私、二階を探索してみる!

レパール

分かった。任せるよ

一階には行けないので私は一人、二階を探索してみることにした

カナト

じゃあ俺らは一階をもっと調べてみる

カナト

手分けするぞレパール

レパール

了解です

じゃあ探索開始!

こうして私達は分かれて探索をすることになった

上ってすぐの大きな扉を開けると教会のようなスペースが広がっていた

こういう所入るの何気に始めてかも…

その神々しさに圧巻される

…何だろうこれ?

真ん中には、儀式とかに使われていそうな大きな祭壇があった

中心にあるのやつ、棺桶じゃん…何か怖いな…

今までは誰かといた事によって緩和されていた恐怖が再び押し寄せてくる

一体この祭壇は何の為に使われていたのか考えてみるが、正直なところ分からない

一階の本があった所に書いてあったりしないかな…

後で二人に言ってみよう。そう思いつつ部屋を出た

さっきの教会から、離れた場所にある扉を開けてみると書斎らしき部屋があった

また本がいっぱい…

思わず呟くと、机の上に巻き物のような物が乗っている事に気づいた

何て書いてあるのかな?

好奇心に身を任せ紐を解く

ええと…何々

そこには、かつてこの館に住んでいたであろう一族の家系図が書かれていた

なんて読むんだろう…漢字って難しい

「酔木家」という漢字は難しく読めなかったが、他の文字は読めるかも知れない

いっちょやってやるか!

そう意気込み私は解読を始めた

前の代の方は文字が古いうえに、掠れていて読めそうに無かったが最近の代の部分は何とか読めそうだ

この部分は…39代目か

(まつめい、で読み方あってるのかな?)

どうやらこの家系図、酔木松明という当主の子供の所で終ってしまっている

…何かあったのかな

子供は双子と書いてある

名前は…

姉・酔木奏音 弟・酔木奏斗

何たらカナネ?と…カナト?

奇しくも弟の名前はカナトであった

まさか、ね

一つの妄想が頭によぎる

酔木奏斗というのは、ここで目覚めたというカナトの事ではないかということだ

(だとしてもおかしい。一番新しい所ですら、こんなに古い)

もしかしてカナトはもう…

そう思った瞬間、声が聞こえた

────よく分かったな

カナっ、ん!

声を発する前に布で口を塞がれてしまった

(やばい…眠い)

何か薬品を嗅がされたのか物凄く眠くなってきた

(もう…無理…)

私の意識はそのままブラックアウトした

本を見て回っていると奥にある本が読めそうである事に気づいた

これなら、文字も掠れてないし読めるかも…

僕は近くにあった「馬酔木ノ儀」という本を手にとって読んでみる

…なるほど。この家に住んでいたのは酔木という人達か

本によると、馬酔木(アセビ)という花から名をとり「酔木」と名乗り始めた一族らしい

そして、何代かに一度産まれる双子の優秀な方を神に捧げる儀式を行うみたいだ

この儀式を行う事によって一族が繁栄していたのか

昔って怖いなぁ…平然と命を犠牲にする

この館については、ある程度分かったが脱出の手掛かりは見受けられなかったので本を閉じた

もう少し探せば脱出の手掛かり見つかるかな…

流石に一人では骨が折れそうなのでカナトに手伝って貰うことにした

カナト!手伝って欲しいことがあるんです!

ここまで来てくれませんか!

しかし、いくら声を掛けてもカナトは現れない

カナト…?カナトー!

僕は焦り始めた

(そうだ!苺子)

苺子!苺子ー!

二階にいるはずの苺子も現れない

二人共、どこに行ったの…?

どうしようも無い、不穏な予感が僕を襲った

HAPPY BIRTHDAY ICHIGOTARUTO

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コメント

4

ユーザー

待ってましたー!!!✨ こんなにボリューミーな内容で投稿が早いなんて、、、贅沢すぎるよ、私!!!!? そして、めちゃくちゃ気になるところで前編が終わってしまった、、、!!後編もとても楽しみです!!✨✨ 私も全裸待機!!!!!待機_( ˙꒳​˙ _ )

ユーザー

だいぶ遅くなってしまいましたが、前編を投稿することが出来ました。 何か質問等が御座いましたらここにコメントください!答えられる範囲で答えます!

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