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え、え、えええええええええ!!

その時の3年生の声と言ったらどれだけ大きいことか。

我ながらびっくりするくらいの声が出た。 そして周りには引かれている。

な、ななな

菊に友達が

あの、菊に?

あの1年生のことはよーく知っている。

この学校の、この世界の誰よりもと言っていいくらいには。

自称できてしまうほどの知り合いに友達らしきものが出来ている。

そんな王耀は心底びっくりしている模様。

王耀

菊に友達ができたあるううう

そのまま教室に飛び込みかけたが、自分は3年生であり相手は1年生なのだと思いとどまった。

王耀

そうだったある、我3年生あるよ……

老師うるさいヨ

王耀

ごめんある〜!
でも少しだけ

それじゃあ周りの人に迷惑的な?

王耀

う、うう

引き連れていた弟子達になんともまあ色々言われる。仕方がない、いつもの事だ。

王耀

でも〜

ぐぬぬと声を出し教室に戻ることにした。

本当は驚きすぎて今すぐにでも事情を聞きたい。

でも彼に話してはいけない。 仲良くしたい、そう思ってるはずなのに、彼はずっと過去を引き摺って自分に話そうとはしない。

もう気にしてない、といえば少し嘘になるかもしれない。それでもまた2人で。

仲良くしたい。 話したい。

それでも彼の嫌がることはしたくない。

王耀

そうね、早く教室戻るある

我ながら本当に寂しそうな細い声だった。

本田菊

あ、あ、ああああああ!!

フェリシアーノ・ヴァルガス

え!?なに!?

本田菊

は、初めてなんですよ!?

抱きしめられたことによって大声を上げてしまう。 自分に注目が集まってるのもお構い無しにフェリシアーノに話しかける。

フェリシアーノ・ヴァルガス

え?え??

だからどうしたと言わんばかりにクエスチョンマークを浮かべた表情。

本田菊

は、離してくださいっ!!!

フェリシアーノの胸元をグッと押しハグを辞めさせようとするが緊張してか上手く力が入らず押せない。

フェリシアーノ・ヴァルガス

うわ!菊結構力強いね!?

本田菊

え!?ええまあ多少鍛えてましたので!?

混乱により変な会話が続いた。

後にHRが始まり、やっとのことで離して貰えたと思っていた。

思っていただけだった。

本田菊

フェ、フェリシアーノくん!

フェリシアーノ・ヴァルガス

何〜?菊

ずっと抱きしめられている。心底懐かれているのだろうが、とても恥ずかしい。

本田菊

その、なんと言いますか

本田菊

仲良しの証と言いましてもこれは

フェリシアーノ・ヴァルガス

えーー!だから!イタリアでは普通の挨拶だよ!!

本田菊

でもその日本の文化とは違いますし

あたふたしながとにかく離してもらいたいという説明をする。

フェリシアーノ・ヴァルガス

ヴェ〜、菊はハグするの嫌いなの〜?

本田菊

ち、違います!照れくさいのであって

フェリシアーノ・ヴァルガス

うーん?

本田菊

とにかく!慣れていないのです

やっとのことで離してもらったが、今度はうーんと悩んだ顔をしている。

かと思えばぱっ!と何か思いついたような顔で話しかけてきた。

フェリシアーノ・ヴァルガス

ねぇねぇ

正直嫌な予感しかしない。

本田菊

なんです?

返事をしてしまった。

フェリシアーノ・ヴァルガス

菊が慣れればいいんだよ!

フェリシアーノ・ヴァルガス

これから猛特訓!よーし!やるぞー!!

嫌な予感は的中しフェリシアーノはなぜだか勝手に盛りあがっている。

本田菊

え、えええ!

本田菊

いいなんて一言もっ!

フェリシアーノ・ヴァルガス

ダメなの?

しょんぼりとした顔で見つめられる。

本田菊

(あああ、良くないですよフェリシアーノくん!そういうのカマトトって言うんです!)

本田菊

(私はそういう顔に弱いのですよ)

本当に友達になったばっかりには思えない。 なんだかフェリシアーノくんにリードされている感じだ。

ああ、友達ってこんな感じなのだなと寂しがっていた本心が温かみに包まれてゆく。

本田菊

(私はやはり……)

本心に気づいていたのに見て見ぬふりをして感情に蓋をしていた。今も尚そのままなのかもしれない。

でも友達っていいなと思ってしまった。 あの時私は人を傷つけたのに。 フェリシアーノくんも傷つけてしまったら。

そんなことないようにしなければいけない。

ドロドロとした黒い感情が胸で渦巻く。苦しくてモヤモヤして気持ち悪い、的確に表現は出来ないがなった者にしか分からないのだろう。

本田菊

ダメでは無いですよ

間の空いた愛想笑いでの返事だった。 不自然に思われるだろうか?

フェリシアーノ・ヴァルガス

じゃあ早速今日からだよ!

元気がありあまるフェリシアーノくんによってそんなもやもやはうっすら消えた気がしていた。

気の所為かもしれないが。

正直に言えば怖い。 あの時の私は人を傷つけた、自分の手で言葉で。そんな私なんかが友達を作ってもいいのだろうか?

裏切った相手だっている。

その人もこの学校に来たという噂も聞いた。

あの人はなんでもっと頭のいい学校に行けるはずなのにこの学校に来ているのだろう。 分からなくてとにかく会わないように願って毎日を過ごしている。

本田菊

え、ええ、そうですね

フェリシアーノ・ヴァルガス

本田菊

あ、授業が始まってしまいます……

席に座るよう促そうとした。

フェリシアーノ〜席座んなよ〜

すれば、フェリシアーノくんの友人が座るように促した。

フェリシアーノ・ヴァルガス

あ!ほんとだ授業始まる!grazie!

フェリシアーノ・ヴァルガス

またね!菊

本田菊

あ、はいではまた後ほど

なぜだか気づいて貰えなかったのが寂しかった。

本田菊

なれないことをするからですね

小さく呟いた。

音が聞こえる。 授業の始まりを告げるチャイムだ。

もう少し菊と話していたかったが辞めた。

HRが始まる前、後と長く話し込みすぎた気もするけれどもっと仲を深めたかった。

フェリシアーノ・ヴァルガス

ヴェー、先生が何言ってるかよくわかんない……

正直集中するのは得意じゃない。 この学校はドイツ人の友達がここに入ると言ったから着いて行けるために勉強を頑張っただけ。

正直彼に教えてもらわなきゃダメダメかもしれない。

日本語も彼が教えてくれたわけだし。

フェリシアーノ・ヴァルガス

(あとは生活してるうちに慣れたよねー、そこまで日本に来てから日が浅いのになー)

学校の制度?がいいことは何となく知ってる。 多分一日中日本語に触れ合ってるからだと思う。 たまにちゃんとイタリア語で話してくれたりする子もいるからありがたい。

フェリシアーノ・ヴァルガス

(多分いい所なんだよね)

頭が働かない

教師が何を言ってるのか、呪文でも唱えているんじゃないかとも思う。

フェリシアーノ・ヴァルガス

(あー、この前教えてもらった気がしなくもない〜)

フェリシアーノ・ヴァルガス

(難しいよ〜!!)

ちらっと菊の方を見る。

自分とは違って真面目に授業を聞いている。

本田菊

……

細い指がペンを握りつらつらとノートに字が書かれていく。

少しだけあんなふうに慣れたらいいなと思う時もある。

よく迷惑をかけてしまうから。

それで友達にも迷惑をかけて呆れられて、それでもずっと一緒にいてくれた。今でもずっと1番で。

フェリシアーノ・ヴァルガス

(早く休み時間にならないかな)

クラスが別れてしまって悲しい。 友達らしい人はいるけど彼にはかなわない。

菊もきっとそう。

紛らわせるものなんだ。

なんだろう。すっごく仲良しな友達は少ない気がしてる。他は勝手に仲良くなった感じ。でも楽しいよ、仲良しなんだもん。

楽しい筈だよね。

本田菊

(なんだか見られている気がします…)

授業の内容は理解できる。予習をしてきているからだ。

いい子だと思われるような行為をして気を紛らわしている。

でなければ存在意義が分からなくなりそうだ。 何が出来る?何も出来やしないではないかと脳がネガティブなことで埋め尽くされてしまう。

色々な出来事があって、失敗して。 それを機にぷつんと糸が切れたかのように何も考えられなくなった。考えられても止まった時が動き出したかのような止められた水が一斉に溢れ出すような感覚に似て一気にマイナスな考えが頭を埋め尽くすのだ。

それをやめるために勉強に集中して、ただいい子になろうとしている。

いい子に見えるだけの人間だ。

本田菊

(あれ、この問題の回答どこに書けばいいんでしたっけ)

話が入ってきていないことに気がついた。

色々なことが起きて疲れているんだと一括りにして何となくで回答を書いた。

そして視線は未だに注がれている。

いい子でいなければいけない。でなければきっとまた誰かを傷つけて失敗してしまう。

ふと窓の外を見れば綺麗な花が見えた。 誰かが手入れをしているのだなと一目でわかる。ああいうのをいい子というのだろう。 所詮自分は偽善だ。

本田菊

(あぁ、窓から見える花壇の花が綺麗です)

心からそう思う。苦しくなるほどに。

良くない考えをして授業を聞かないのも良くない、そう思い手の甲をつまむ。 切り替えて黒板の方を向いた。

時は経ちお昼休憩。

途中途中の休憩もフェリシアーノと会話をすることも無く、私は本を読むか授業の準備をしたり、フェリシアーノはフェリシアーノで他の友人と話していた。

不思議だなんて思わなかった。最初から彼は友人に恵まれていると知っていたから。

弁当を食べようと思ったがなぜか教室は気分ではなくどうしたものかと思った。

本田菊

(こんな日もありますよね)

本田菊

さて、どこで食べましょうか

フェリシアーノをちらりと覗く。 がフェリシアーノはどこかへ行く気満々だった。

本田菊

友人にでも誘われてますよね

今度はフェリシアーノの奥にある窓を覗く。

花壇に植えてある花が見えた。 授業中にも見えたがやはり綺麗だ。

ベンチが近くにあることを確認し、お弁当箱を持って席を立った。

本田菊

久しぶりに外で食べます

気がつけば顔がほころんでいた。 外で食べる人は少なくないが場所としては誰も近寄らなさげだった。騒がしい中で食べるよりもいいかと思い足早に廊下へ向かった。

本田菊

はあ、1人も気楽ですね

お天道様の下で食べるお弁当は最高だ。

本田菊

少しこってしまいましたが、その分ちゃんと美味しいです

本田菊

はぁ〜〜、白米最高です

ご飯の時間はとても幸せだ。 人のことを考えず好きな物にだけ集中できる。

本田菊

漬物を漬けた甲斐があるというものです

ご飯を食べる手を止める。

本田菊

花が綺麗ですね、誰が手入れなどしてるのでしょう?

恐らく前まではなかったであろう花が生えている。きっと心の綺麗な人がちゃんと手入れしているのだろう。

そっと花弁に触れると、またご飯を食べ進める。

本田菊

あの人も園芸はできましたね、懐かしい

本田菊

もう二度と会いたくはありませんが……

そんな所を知り合いが通り過ぎた。

ーーーーーー!!!

本田菊

ひっ

隠れようにも何も出来ずただ俯いた。

怖かった。

親同士の馴染みだからといって仲良くしてきた人。それなのに傷付けてしまった人。 きっと許してはくれない、許してくれても自分がそれを許さない。

いっその事許してくれない方が楽なくらい。

謝ることを許されるのか。

本田菊

(私だってあの頃のように戻りたいですよ)

ズボンをギュッと掴む。 掴んだところはシワになり慌てて手を離した。

本田菊

(どうか目が合いませんように)

俯きながら心からそう思った。

空き教室。

昼休憩だからなのかざわざわとした音が廊下などから聞こえる。

そんななかフェリシアーノはある友達を誘い2人で昼ごはんを食べようとしていた。

フェリシアーノ・ヴァルガス

日本食もいいけどたまにはイタリアンがいいよ〜!

彼は真面目だからなのか食べながら喋るな、と言ったような顔でこっちを見てくる。

俺は彼が食べ終わるのをとりあえず見守ってる。

その間になにかほかの話でもしようかと思い口を開いた。

空き教室で2人っきりって日本でいうアオハル?みたいじゃない?

フェリシアーノ・ヴァルガス

ヴェー、今日友達できたんだよ〜

フェリシアーノ・ヴァルガス

日本人でね、ずっと独りなの

フェリシアーノ・ヴァルガス

はじめはさぁ?色んな国の人たち沢山いるから言語的に無理なのかなーって思っててさ!

フェリシアーノ・ヴァルガス

でもそんなことなかったんだよね、周りにたくさん日本人いるのにずーっと本読んでる

1人でマシンガントークをするフェリシアーノ。

それを見つめる相手は「一気に話題を振るな!」と言いたげだった。

フェリシアーノ・ヴァルガス

お前みたい!

げほっ、ごほっ

フェリシアーノの発言で咳き込んでしまった。

フェリシアーノ・ヴァルガス

ヴェー?大丈夫?

誰のせいだと思ってるんだ。

このあと教室には叫び声が響いたという。

続く

お友達でいなきゃ

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コメント

6

ユーザー

他のキャラたちも絡んでくるの最高です。

ユーザー
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