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───時は戻って現在。

白凌の住む長屋。

白凌

ふむ…

白凌

確かに”記録”されていたよ

白凌

その”野鎌(のがま)”がもしや

白い兎

ええ

白い兎

何者かによって

白い兎

抜き取られたようなのです

白凌

封印されて数百年…

白凌

雨風に晒されてきたんだ

白凌

普通に考えれば

白凌

何かを斬るほどの強度は無いと思うけど

白い兎

しかし

白い兎

それは普通の鎌であればの話し

白い兎

相手は妖怪の類いです

白い兎

妖力を持ってすれば

白い兎

その切れ味を維持することは

白い兎

そう難しいことではないでしょう

白凌

なるほど

白凌

確かにね

白凌

ということは

白凌

仕事というのはその”野鎌”を?

白い兎

はい

白い兎

回収してきてほしいのです

白凌

わかった

白凌

でも

白凌

それだけ聞くと

白凌

春太は別にいなくても大丈夫そうだけど?

白い兎

白凌

白い兎

貴方は”龍宝(たつとみ)とわ”さんが生み出したモノ

白い兎

人の強い想いがそこにあればあるほど

白い兎

その妖力は増す、と

白い兎

ご自身で昔、言いましたよね?

白凌

そうだね

白い兎

強い想いを宿す書物

白い兎

『永久記(とわき)』と

白い兎

妖怪の類いしか切れない刀

白い兎

”怪誕不経(かいたんふけい)”

白い兎

それから春太くんの存在も

白い兎

貴方を強くするモノ……

白い兎

だからどこに行くにも

白い兎

春太くんは必要なのです

白い兎

そうでしょう?

白凌

……

白凌

…そうだね

白凌

どのみち”あちら”のことは

白凌

私よりも春太の方が詳しいし

白凌

春太の力を借りれば”野鎌”もすぐ見つかると思う

白凌

でも…

白凌は手元の缶を見つめる。

白い兎

ご心配なく

白い兎

その程度で切れる縁ではないでしょう

白凌

…ま、そうだね

白い兎

では

白い兎

月世見神社に来てください

白い兎

”あちら”に行く門を開けますから

白凌

わかったよ

春太

にゃっ!

春太

見つけたにゃ

春太

確かに……

春太

良くない気配のする鎌を持ってるにゃ

春太

あれはもしかして…

春太

”野鎌”かにゃ?

ジョセフィーヌ

うにゃ?

春太

昔、”とわ”様が封印した妖怪だにゃ

春太

……にゃるほど

春太

封印が弱まって

春太

抜けちゃったんだにゃ

春太

それであの人が…

ジョセフィーヌ

にゃにゃっ!

春太

わかってるにゃ

春太

確かに止めないと

春太

大変なことになりそうだにゃ

春太は駆け出し

夜道を歩く男の前に立ちはだかった。

 

……猫…

春太

止まるにゃっ

 

…喋った…

春太

その鎌を返すにゃ

 

…まぁ…鎌も喋ったし

 

猫も…喋るか…

春太

にゃにゃ!

春太

と、止まるにゃっ

男はゆっくりと

鎌を振り上げる。

 

猫…

 

試し斬りには丁度いい…

ニヤリと笑い、

鎌を振り下ろしたが

春太はそれを避ける。

 

チッ

春太

な、何するにゃ!?

 

避けるなよ!

男は鎌を右へ左へと振り回すが、

身のこなしの軽い春太を

捉えて斬ることは出来なかった。

 

あ゙あ゙っ!!

 

ウザいな!!!

春太

にゃっ!

避けたと思ったのに、

後ろ足がわずかに斬られてしまった。

 

ははっ

 

斬れた!

 

どうだ?痛いだろ?

春太

こんにゃの全然平気だにゃ

春太

(あの人…)

春太

(”野鎌”に操られてるにゃ……)

春太

(こうにゃったら…)

 

ふんっ

 

だったら次は思い切り斬ってやる!

振り上げた手を見て、

春太は飛びかかり、

その手首に思い切り噛み付いた。

 

いってぇ!!!

 

は、離せ!!!

春太

(離すのはそっちにゃ!!)

 

くそっ

殴られても

地面に叩きつけられても

春太はその口を離さなかった。

春太

(白凌がいなくたって)

春太

(オイラだって!!)

さらに強く噛むと、

男は悲鳴を上げて

鎌を手から離した。

春太

(やったにゃ!)

素早く口を離し、

落ちた鎌を拾おうとして、

その脇腹を思い切り蹴飛ばされた。

春太

に゙ゃっ!!

 

クソ猫がっ…

手首から血を垂らしながら

男は鎌を拾い上げる。

 

切り刻んでやる…

春太

うぅ…

鎌が振り下ろされる瞬間、

春太は反射的に目を閉じた。

しかし、

痛みも無ければ

衝撃も無く

ただ

そばで猫の鳴く声がした。

ハッとして目を開けると

そこには体を斬られ

血を流す

ジョセフィーヌの姿があった。

春太

ジョセフィーヌ!!

春太

ど、どうして出てきたにゃ!?

 

ははっ

 

いいねぇ

 

お前も斬られたかったのか

春太はジョセフィーヌの傷口を押さえるが、

血は止まらない。

春太

ジョセフィーヌ…

 

二匹揃って斬ってやる!

春太

…止めるにゃ!!

 

がっ!!

勢い良く蹴られた男は

電柱にぶち当たった。

白凌

やぁ春太

白凌

大丈夫かい?

白凌

と言いたいところだけど

白凌

悠長なことは言ってられないみたいだね

春太

…白凌…

春太

ジョセフィーヌを

白凌

任せて

白凌は懐から一枚のフダを取り出し、

ジョセフィーヌの体の上に置いた。

白凌

”全癒清風(ぜんゆせいふう)”

そう呟くと

ふわりと風が吹き

血が止まり

傷が癒えた。

ジョセフィーヌ

にゃぁ…

春太

ジョセフィーヌ…

春太

よかったにゃ…

 

ああ、もう

 

どいつもこいつも邪魔ばっかり

男はフラフラと立ち上がる。

 

なんだよ畜生がっ

白凌

あれが”野鎌”だね…

春太

そうにゃ…

春太

白凌…

春太

オイラ、酷いこと言ったにゃ

春太

許してくれなくてもいいから

春太

アレを止めて欲しいんだにゃ

白凌

やれやれ

白凌

何に気を遣っているのやら

白凌は春太の頭を軽く叩く。

白凌

手を貸すのは当たり前だろ?

白凌

春太は私の”友達”なのだから

白凌

ね?

春太

白凌…

 

くそっ

 

どいつもこいつも

 

オレを差し置いて

 

幸せそうに喋りやがって!!

 

全員…

 

ぶった切ってやる!!

白凌

そうかい

白凌

私は”とき”のように優しくないからね

白凌

覚悟するといい

白凌はゆっくりと

龍の姿が彫られた鞘から

刀を抜き取る。

現れた白銀の刀身は、

まるで水面のように

煌めく。

 

うおおおおお!

赤く錆び付いた鎌が

刀に触れた瞬間、

───パキンッ…

と乾いた音を立てて

折れた。

 

え……

白凌

長く封印されていたのだから

白凌

当然のことだよね

《そん…な…》

男は膝から崩れ落ち、

白目を向いて

倒れた。

《こんなの……》

《ああ……くそ…》

白凌は折れた鎌を拾い上げる。

白凌

もういいだろう?

《……》

白凌

もう充分、苦しんだだろう?

《なにを…》

白凌

確かにお前は数百年前

白凌

多くの人を傷付け

白凌

殺したかもしれないけど

白凌

もう許されていいはずだ

《うるさい…》

《オレは…オレは…》

《…まだ…》

《なんの手柄も立ててねぇ……》

白凌

……

《ああ……》

《でも…》

《そうか…》

《もう手柄を立てる意味も》

《無いのか……》

すると鎌の柄が

パキリッ

と折れた。

春太

……声が

春太

聞こえなくなったにゃ

白凌

そうだね

白凌

あとのことは兎月さんに任せよう

春太

にゃ?

春太

もしかして

春太

宮司さんからの依頼だったにゃ?

白凌

そうだよ

白凌

でも

白凌

先に春太が見つけてくれていてよかった

春太

先に見つけたのは

春太

ジョセフィーヌだにゃ

白凌

そっか

白凌

お手柄だったね

白凌はジョセフィーヌを撫でる。

白凌

じゃ、帰ろうか

春太

……

白凌

春太?

春太

オイラ…

白凌

春太

まだクッキーを食べた白凌を

春太

許してないにゃ

白凌

…えー…

白凌

まったく…心の狭い猫又だねぇ

春太

う、うるさいにゃ!

春太

あ、あれは!

白凌

そもそも

白凌

私はあのクッキーを食べていないんだよ

春太

でもっ

白凌

犯人の目星はついているんだ

春太

にゃ?

白凌

さぁ

白凌

一緒に帰って懲らしめてやろう

春太

白凌……

白凌

ん?

春太

殺しちゃダメにゃ

白凌

あははっ

白凌

それはしないさ

白凌

…たぶんね

春太

にゃぁ…

春太

心配だから帰るにゃ

春太

ジョセフィーヌ

春太

一人で帰れるかにゃ?

ジョセフィーヌ

にゃ!

春太

白凌、この人は?

白凌

”こちら”の宮司さんが対処するんじゃないかな?

春太

わかったにゃ

春太

じゃ、ジョセフィーヌ

春太

またにゃ!

ジョセフィーヌ

にゃあ

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