戦線の魔法使い

魔力吸引器に囲まれて穏やかな顔で眠る貴女はいつ目を覚ますのでしょうか

指で頬に血管状に流れる魔力道を撫でる

本来魔力は血液と共に血管の中で流れている 先日の戦闘でサーシャは魔力が溢れ出たままだ

だから血管の形に魔力道が出来ている

貴女が眠って2ヶ月 魔力が収まるまで魔力吸引器に身体を繋がれて、目覚めるのを待つ

学業が終わった後、父親の仕事の手伝いを終えてから毎日病院に通っている

いつ来ても貴女は同じ顔 可愛い寝顔して私を待っている

何度名前を呼んでも返事はしない

カタンッ

魔力吸引器から魔石が出てくる これは貴女が生きている証 この証は医療魔道具に使用される きっと貴女なら喜ぶかなって、勝手にしちゃったけど、いいよね

魔石を手に取ると綺麗な赤色をしていた 曇りなんてない綺麗な赤色

魔石を鞄に入れて立ち上がり傍に置いてある花瓶を取る

入ってた花を取り出し持ってきたピンクのカーネーションを刺して水を入れる

再度傍において椅子に座る

手を握り指先の魔力道を撫でて手の平を揉み込む

手を頬に当てて体温を感じる

いつの間にか眠ってしまっていたのかサーシャと手を握り合ったままだった

……握り合ったまま…？

顔を上げて眠ってるはずの貴女の顔を見る

上手く言葉が出ず、頬に液体が流れるのを感じた

彼女の胸に飛び込んでギューッと抱きしめた

グリグリと頭を擦り付けると背中をポンポンと力なくさすられる

久しぶりに抱きしめた彼女は前よりも筋肉が無くなっており、ほっそりとしていた

私の声に気づいた看護師が医師を呼んで私をサーシャから離さそうとしたが私は意地でも離れなかった