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37 - 第三十七話:二度のビンタ

2022年05月28日

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波瑠はきっと

私、以上に恭也さんのことが好きだった

だから私の言葉が許せなかった

何度、私がトラウマやフラッシュバックのことを主張しても

波瑠の耳にはもう届かない

だって波瑠は

必死に訴えた私の言葉に

強烈なビンタを返してきたから

ビシッ!!

店内に響く手のひらが頬を打つ音

再び視線が集まり

近くにいた店員の女性は驚いて固まっている

波瑠

最低……

愛紗

私が?

愛紗

どうして?

愛紗

恭也さんの方が最低なのに……

波瑠

恭也さんは愛紗のために!!

愛紗

トラウマのこと……

愛紗

話そうとしたのに……

愛紗

勝手に想像してそんなやつと一緒にするなって……

波瑠

当たり前でしょ!?

波瑠

あいつと恭也さんは違う!!

愛紗

同じだから……

波瑠

は!?

愛紗

だってそうでしょ?

愛紗

ホテルで強引にしようとしたんだよ?

愛紗

そんな人とシンガポールに行けって言うの!?

愛紗

だから別れるって言っ……

ビシッ!!

痛かった

頬だけじゃなく心の奥もじんじん痛い

波瑠は高校からの親友だった

その波瑠から二度も叩かれて

結局、理解してもらえないこの状況が一番、辛くて苦しかった

波瑠

恭也さんの気持ち考えてよ

愛紗

私の気持ちはどうでもいいの?

波瑠

愛紗のためにカウンセリングをって言ってるじゃない!

波瑠

恭也さんに全てを任せればいいのに……

出会ってからずっと仲がよかった

何かあった時は一番に相談していたし

いつも親身になって話を聞いてくれていた

でも今は何を言っても一方通行で伝わらない

波瑠

恭也さんが傷つく姿なんて見たくないの……

波瑠

だからお願い……

波瑠

シンガポールに行って……

波瑠

恭也さんには愛紗しかいないのに……

もう限界だった

これ以上ここにいたくない

波瑠の顔も見たくない

口を開けば恭也さんを庇ってばかり

そんな言葉はもう聞きたくなかった

愛紗

そんなに心配なら波瑠が一緒に行けば?

愛紗

好きなんでしょ?

波瑠

何、言ってるの?

波瑠

そんなことできるわけないじゃない!

波瑠

恭也さんが好きなのは愛紗なんだよ!?

波瑠

何で私が……

ビシッ!!

今度は私が波瑠の頬を叩いた

やり返されるかと思ったけど

波瑠は私が叩くと思っていなかったのか

どんどんと顔が青ざめていく

他のお客さん達も私のビンタに驚いたのか

すっかり店内が静まり返ってしまった

これ以上はお店にも迷惑がかかると思い

愛紗

コーヒー代……

テーブルにお金を置いて外に出た

波瑠が追いかけてくることはなく

降りしきる雨の中を駅に向かって進んだ

相変わらず混雑した電車内で

私は涙が止まらなくなった

追い討ちをかけるようにスマホが震える

恭也さんからの着信

勿論、出なかった

電車内だったと言うこともあるけど

今は声を聞きたくなかった

恭也

不在着信

不在着信

残った不在着信の表示

これだけでも苦しくなる

愛紗

(波瑠……)

波瑠は高校からずっと一緒だった唯一無二の親友

だからショックだった

波瑠にだけはわかって欲しかった

私の決断を後押しして欲しかった

でも波瑠は恭也さんのことが好きだったから

私よりも恭也さんを庇った

その気持ちはわからなくはないけど

私のトラウマのことも全部知っている波瑠から

波瑠

恭也さんとシンガポールに行って

あんな言葉は聞きたくなかった

頬に残る痛み

叩かれるようなことを言ったつもりはなかったのに

愛紗

(明日夢……)

愛紗

(私、間違ってたかな……)

あの子の顔が浮かんだ

あの子ならきっと

明日夢

間違ってないよ

明日夢

母ちゃんは悪くない

きっとそんな風に言ってくれる

優しい笑顔で励ましてくれる

あの子は未来から来た私の息子

いつか運命の人と巡り会って

素敵な恋をして結婚して

今はまだ信じられないけど

いつか必ず訪れる未来

その先にあの子がいる

愛紗

(いつ出会うのかな……)

愛紗

(どんな人なんだろう……)

止まらない涙を拭いながら

愛紗

(本当に……)

愛紗

(幸せになれるのかな……)

心の中でそう思っていた

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