主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
彰人
息を切らしながら、人を避け、目的地へ無我夢中で走る。 そろそろ、苦しくなってきた。 くそ、自転車で来れば良かったか。 体力はかなり限界だが、不思議と思考は冷静だった。
周囲からはざわめきが聞こえ、視線が突き刺さるが、そんな事は関係ない。
一瞬だけ立ち止まり、スマホを見る。
彰人
グッと足に力を入れ、地面を力一杯蹴る。 なぜ、ずっと気が付かなかったんだろう、この感情に。
…残り10分。
人生に悔いはあるし、色々と思い返すことはあるが… 今となってはもうどうしようもない。
今はもう、すぐに来る手術の時間をただ待つことしか…
彰人
冬弥
彰人…来てくれたのか。 すごく息が荒く、汗が大量に出ていることからして、走ってきたのだろう。
彰人
冬弥
冬弥
彰人
あぁ、彰人と話すのは、これで最後になるかもしれない。 一度大きく深呼吸をして、心を落ち着かせる。
冬弥
冬弥
冬弥
冬弥
彰人
冬弥
冬弥
冬弥
冬弥
彰人
…今、俺はどんな顔をしていただろうか。 ちゃんと笑えていただろうか。 つう、と頬を水が伝った気がした。 彰人は、ぼろぼろと大粒の涙を流してた。 床に水が落ちていく。
彰人
思っていた答えと全く違う答えが返ってきたため酷く驚いてしまった。 目に熱が集中しているのが分かる。
彰人
冬弥
冬弥
今度は、はっきりと涙を頬が伝った感触が残る。 あぁ、辛い。 もう、二度と会えないかもしれないだなんて。 無意識に、手が彰人へ伸びる。 俺は、そのまま彰人を強く抱きしめた。
冬弥
冬弥
彰人
…何時間経ったか。
あれからずっと泣いていたし、ここには時計も見当たらないため、時間の感覚が狂ってしまった。
冬弥は、死ぬなという声に対して、頷きはしなかった。 酷く辛そうな顔で微笑んでいた。 あいつだって、死ぬのが怖いんだ。
何もしてやれなかった自分の情けなさ、不甲斐なさに胸が押しつぶされそうになる。 冬弥は、最後、幸せだったろうか。
何を考えても、今は手術が成功することを祈ることしかできない。
不意に、右端の方で赤いランプが消えた気がした。
彰人
手術室の扉が開き、医者の一人が出てきた。冬弥は、どうなったんだろうか。
医者A
彰人
医者A
…良かった。 良かった…!! だが、医者の言葉に少し引っかかる。 手術「自体」…? どういう意味だろうか。
医者A
医者A
植物…植物状態? 初めて聞く名前だが、病名かなにかなのだろうか? 話の雰囲気から、間違いなくいい事ではないのは確かだ。
彰人
医者A
彰人
医者A
彰人
医者A
彰人
あれからかれこれ2時間。 すっかり日が沈んでしまった。
冬弥…いつか、目覚めてくれるだろうか。 また一緒に、歌えるだろうか。 この気持ちも、もう一度、ちゃんと伝えられる日が来るだろうか。
どんなに時間が経っても、俺はお前のことを忘れない。 苦しみも、楽しさも、一緒に分かち合ってきた相棒への感謝を、相棒への気持ちを、はっきりと伝えられるまで。
幾らでも、目が覚めるまで隣で待つから。
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
彰人
冬弥
彰人
彰人
医者B
冬弥
手術が終わった。 俺はほんの一瞬だけ眠ったという感覚しかない。 しかし、話を聞くと、どうやら俺は3年間ずっと意識がなかったらしい。 彰人は、今、大学1年らしい。 やはり3年経つと見た目こそガラッと変わるが、雰囲気は彰人のままだ。
看護師
彰人
看護師
彰人
看護師
冬弥
バタン。 2人が出ていくと、部屋の中に気まずい空気が漂い、沈黙が続く。 今は気になることがいくらでも出て来たが、俺はまず彰人に言いたいことがあった。手術が終わったら、絶対言おうと思っていた言葉。
冬弥
彰人
彰人
冬弥
彰人
彰人
冬弥
彰人
ふと、彰人に言いたいことあったことを思い出す。 そういえば結局手術前に言えなかった。
冬弥
冬弥
冬弥
彰人
ぽたっ。 彰人の瞳から涙が流れ落ちる。 あの時も、こんな感じだったような気がする。 やっぱり彰人は彰人だ。 ほんの少し嗚咽が聞こえてくる。 20秒ほどで、最初は少なかった涙の量も増え、大粒になっていた。
彰人
あぁ、幸せだ。 生きることが出来て、良かった。
主
主
主
主
主
主
主
主
コメント
1件
うぅ(´;ω;`) 涙が...