おそらく、お金を少しほど
こすつもりなのだろう。
アルバートは老人のことなど、忘れ、
いつもどおりの日々を送っていた。
相変わらず、仕事の合間に
ギャンブルを楽しんでいる。
いや、
楽しんではいない。
悔しい思いばかりが続いている。
ここ最近、ギャンブルに勝った記憶がない。
こんなに調子が悪いのは、はじめてだ。
だが、負ければ負けるほど
ハマってしまうのが
ギャンブルの恐ろしさだ。
昨日の負けをなんとか取り戻そうとして、
さらに負けてしまう。
いつしか個人の口座からは金がなくなった。
それでもやめられない。
借金をしてまで続ける。
まるで何かにとりつかれたようだ。
おかげで本職の音楽活動は、
すっかりおろそかになってしまった。
やがて家の金にも手を出し、
貯金を使いきった。
そしてついに、破産寸前まで
追い込まれたのだった。
アルバートは腹をくくり、
妻にすべてを告白することにした。
だまって話を聞き終えたマリーは、
深くため息をつき、こう言った。
妻 マリー
アルバート
妻はすべてお見通しだったようだ。
ならば、どうしてこうなるまで
放っておいたのだろう。
知っていたのなら、止めてくれても良かったのに……。
アルバートは身勝手に考えた。
きっと情けない自分を見限ったのだ。
マリーは自分を見捨てるに違いない。
しかしマリーの口から出てきたのは、
意外な言葉だった。
妻 マリー
離婚を切り出されても
しかたないと覚悟していた
アルバートは、キョトンとした。
マリーは、ふいに厳しい顔になり、
こう続けた。
妻 マリー
そして席を立ち、何かを持ってきた。
それは預金通帳だった。
妻 マリー
マリーが開いた通帳を見て、
アルバートは目玉が飛び出そうになった。
アルバートがこれまでに
ギャンブルで失った金の何倍もの金額。
借金を返しても、十分すぎるほど、
おつりがくるだろう。
主婦のマリーが、こんなにお金を持っているのはおかしい。
理由をたずねた。
妻 マリー
アルバート
妻 マリー
妻 マリー
アルバートは混乱するばかりだった。
妻 マリー
妻 マリー
何を言い出すんだ。
アルバートは、妻の頭がおかしくなったのかと思った。
しかし、マリーは冷静な表情で
語り続けた。
妻 マリー
妻 マリー
アルバートは、完全に忘れていた記憶を、
頭の奥から引っ張り出した。
アルバート
妻 マリー
妻 マリー
妻 マリー
妻から聞かされた話は、
にわかに信じられないものであった。
あの老人は、以前アルバートに
ほどこしを受けた時、
その感謝のしるしとして、
アルバートが音楽的に成功するよう、
まじないをかけたという。
それなのに、その恩を忘れて付け上がり、
今回は冷たく接した。
そのことに怒り、今度は、
「ギャンブルで絶対に勝てない呪い」
をかけたのだという。
なぜそんな言葉が信じられるのか?
妻 マリー
妻 マリー
ここまでです!
♥150で書きます!
お楽しみに!
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