体が浮く感覚…。
夢、夢だ。
私は夢の中にいるんだ。
…そうだ
これは全て夢だったのかもしれない。
…暗闇。
私は思い出す。
暗闇の中にいる私そっくりな…。
愛梨
…!
ここはどこ?

愛梨は目を覚ますと
見知らぬ部屋のベットの上にいた。
そしてある事を思い出す。
青斗
(お前はここで女王となり国を治める)

愛梨
!!
(帰らなきゃ)

愛梨はベットから出てドアの前まで行き
開けてみた。
だけど…。
愛梨
(ドアが開かない…。
どうして…。どうしたらいいの…?)

どうしたらいいのか分からず当たりを見合わし
大きな鏡がある事に気付き自分の姿を見て驚いた。
愛梨
…え?

駿
どう?
その服気に入ってもらえた?

駿
初めまして。
新しい女王様。

急に声をかけられて愛梨は驚いた。
そこには1人の青年がいたのだ。
そしてもう1つ驚く事が。
何と彼にはウサギの耳がついていたのだ。
愛梨
…耳?

駿
ん?
耳か?
耳がそんなに珍しいのか?

駿
耳くらいついてるさ。
俺は三月うさぎだからな。

愛梨
三月うさぎ…?

駿
俺の名前は駿。
よろしくな。
その服、良いだろう?
俺が仕入れてきたんだ。

駿
出入りの仕立屋は
死んじゃったからな…。
…どうしたんだ?
気に入らなかったのか?

愛梨
…ううん。
何でもない。
とても素敵。
ありがとう。

駿
だろう?
正反対って聞いていたから
似合うと思ってさ。

愛梨
…正反対?

愛梨
!!

愛梨
あの…

そして愛梨は聞こえるか聞こえないかくらいの声で…。
愛梨
服を用意してくれたと言うことは…。
あ、あなたがサイズとか着替えとか…。

駿
…。

駿
…!!

駿
イヤ、違う!
俺は服を用意しただけ!
サイズも着替えもここの
メイドがやったから!

駿
見てない。
俺は見てないから!

愛梨
う、うん
(何だか良い人そう。)

愛梨
あの、駿…くん。

駿
?

愛梨
助けてほしいの!
私、ここから出たくて…

駿
何でだよ?
お前はこれから
ここの国の女王に
なるんだろ?
何の不満があるんだよ?

愛梨
…
駿くん、私!

青斗
何をしている?

愛梨
青斗…さん

青斗
青斗でいい。
女王であるお前の立場は
俺より上だからな。

愛梨
…女王って何の事ですか?

青斗
お前の役目だ。

愛梨
役目って…。
私はただの女子高生です!
お願いですから私を元居た場所に
帰して下さいっ

青斗
何と言おうと
お前はここの女王だ。

青斗
お前は元々ここの世界の住人だ。
17年前にお前はこの世界の王家に
生まれ白の世界に送られた。

愛梨
(え?)

愛梨
(そんなはずない!
だって私には優しい家族がいて
友達だって…)

愛梨
…っ
…?

青斗
先の女王はクーデターにより
追放された。
今、この国を治められるのは
正統な王家の血を持つお前しかいない。

愛梨
…つまり私は
生まれた時も
今も…
貴方達の勝手で
望んでもいない世界に
連れてこられたという
事ですか?

愛梨
…ひどい

青斗
…

駿
お、俺
邪魔みたいだから
帰るな?

と言って扉を開けた時…。
愛梨は走り出してしまった。
駿
あ、待って!

青斗
…。

愛梨
(…また廊下)

随分走ったのに曲がり角すらない…。
どれだけ大きい建物なの?
愛梨
(まず、外に出ないと!)

愛梨
!
お庭?

優希
何をしているの?

愛梨
!!

愛梨
(まさか追手!?)

優希
ああ…。
君が新しい
『アリス』?

優希
僕の名前は優希。
チェシャ猫だよ。
よろしくね、アリス。

愛梨
…私
アリスなんて名前じゃ
ありません。

優希
そうなの?
僕は猫だよ。
でも、そこら辺の
猫と一緒にしてもらっては
困る。

優希
僕はね、
それはそれはえら〜い
猫さんなんだよ?

愛梨
…

愛梨
あの…
優希さん、ここから
出る方法を知りませんか?
私、無理矢理連れてこられたんです。
だから…。

優希
ふーん?
でも、僕は
城の中にいた方が
良いと思うな…?

愛梨
(モタモタしてたら
追手が…)
知っているなら、教えて下さいっ…!

優希
それなら向こうへ行くと
良いかもね?

優希
僕を信じて…
僕を信じると
とっても良い事があるかもね。

愛梨
…分かりました。
ありがとう、優希さん

優希
まだ花開く前の
真っ赤な薔薇のつぼみ…。

優希
可愛いね、アリス
頑張ってね。

優希と別れ森の方へ向かった愛梨。
どれくらい進んだのだろうか?
愛梨
敷地の外に出られたの?

愛梨
…っと
え?

何かにつまずきそうになり足を止めて下を見てみると…。
そこには人が座って寝ていた。
愛梨
(寝てる…?)

律
…もう食べられない
んん…ん?
わぁ!!

愛梨
きゃあ!?

律
…あれ
女王様?

愛梨
ち、違います。
私は愛梨って言います。

律
そっか
女王様いなくなったんだっけ?

律
俺は律。
眠りネズミだよ。

愛梨
(女王って
青斗さんが言ってた?)

そういえば、先の女王ってどこへ行ってしまったんだろう?
亡くなってしまったんだろうか?
いえ、違うわ…。
青斗さんはきクーデターにより
追放されたって言ってたし…。
もしかして、私のように
鏡に入ってどこかへ?
愛梨
…そうだ!
鏡!

愛梨
律さん!
鏡を知りませんか?
別の場所に行ける鏡っ…。

律
うーん…。

律
それって、鏡の間の?
あそこの鏡を通れば白の世界に
行けるんだって。

愛梨
…!

愛梨
その鏡の間が
ある場所を知っていますか?

律
確か
お城の深い場所にあるって
海斗が言っていたような…?

愛梨
ありがとう!
行ってみますね。

愛梨は律にお礼を言い走り出した。
だが、その時…。
国民1
女王?

国民2
女王だ…。

国民3
女王だ…!

愛梨
違います!
私は女王じゃ…。

国民1
殺せ

国民2
女王

国民3
殺せ!

国民1
殺せ!!

愛梨
(何、この人達!?)

優希
(僕はお城の中にいた方が
良いと思うな…。)

愛梨
(そんな…!
こんな所で!)

青斗
…遊びはそこまでだ。

国民1
くそっ…!

愛梨
青斗さっ…。

青斗
戻るぞ。

国民2
待て!

国民3
女王を殺せ!

昴
彼らは私が引き受けます。
急いで!

青斗
昴か。
頼む。

愛梨
え!?
たった1人で?

青斗
心配いらない
下位の数字とは言え
あれはトランプ兵の隊長だ。
民衆など束になっても敵わない。

愛梨
(下位の数字……?)

青斗
それよりこれで分かっただろう
もうこれで城の外から出ようとするな。

青斗
女王である事を受け入れろ
そうすればお前は俺が守る。

愛梨
私は女王なんかじゃっ…。

愛梨
誰かっ…。

青斗
諦めろ
誰も助けには来ない。

青斗
女王がいない今、
この国は不安定になっている。
国民は荒れ治安は悪くなる一方だ。
その一端をお前も森で見ただろう

愛梨
待ってください!
だからと言って私に
政治なんて…。

青斗
問題はない。
必要なのは『アリス』だ。

愛梨
『アリス』…?

青斗
お前の血に含まれる
物質の名前だ。

青斗
王家は『アリス』の血を使い
この国に君臨してきた。

青斗
『アリス』には
人を支配する力がある
そして今『アリス』を保有
しているのはお前だけだ。

愛梨
…だから
私に女王になれと?

青斗
そうだ

愛梨
もし私が
嫌だと言ったら?

青斗
この国は滅びる。
多くの国民が死ぬだろう。

愛梨
そんな…。

自分のわがままで多くの人が死ぬなんて…
そんな事言われたらどうしたらいいんだろう。
簡単には受け入れることは出来ない。
それから数日、時間だけが過ぎていった…。
国民1
女王を出せー!

国民2
女王を殺せ!

愛梨
(まただ…)

時折聞こえる騒音や罵声が
この国が滅びかけているという事実を
物語るようだった。
愛梨
(でも、私は…)

駿
よっ!
アリス!

愛梨
駿くん!

駿
本当だ、元気ないなぁ。
ちょっと、痩せた?
まぁ、こんな所で1人じゃ
食欲わかないよな…。

愛梨
…。

駿
ってことで
ほら!

駿
お茶会の招待状だ!
