優人
優人
歩実
宗一
三人は吹雪が吹きすさぶ中、
歩いていた。
優人
優人
優人
大声で喋らなければ、
風の音で全てが掻き消されてしまう。
歩実
歩実
宗一
ほんの数分前まで晴れていたのが
嘘のようだった。
優人
歩実
宗一
優人
歩実
優人
宗一
優人
指差した先に、
微かに建物のようなものが見えた。
歩実
宗一
優人
優人
優人
・
・
歩実
宗一
優人
歩実
そう言った彼女の視線の先には、
一人の青年が
薪ストーブの前に座っていた。
香坂
歩実
香坂
歩実
三人は素早く小屋に入り、後ろ手で扉を閉めた。
歩実
宗一
三人は赤々と燃える薪ストーブの側に座る。
香坂
優人
香坂
宗一
香坂
窓が突風を浴びてガタガタと揺れる。
優人
香坂
宗一
優人
宗一
優人
重そうにバックパックを手繰り寄せる。
香坂
青年はストーブの上に置かれたヤカンを指さす。
歩実
優人
宗一
三人は各々持っていたカップを取り出し、
青年は自分のバックパックから
ティーバッグを取り出した。
一人ひとつカップの中にティーバッグを入れ、
ヤカンの中の熱々のお湯を注ぎ入れた。
歩実
香坂
そう言ってスティックシュガーを差し出す。
優人
香坂
宗一
香坂
歩実
香坂
優人は砂糖を二本、
宗一は三本、
スティックシュガーを紅茶に入れた。
四人はお茶を啜る。
優人
宗一
香坂
歩実
歩実は目を泳がせる。
優人
優人が代わりに答える。
香坂
優人
宗一
香坂
宗一に言われて、青年は渋い顔をする。
優人
香坂
香坂
青年は”やれやれ”とため息を零す。
黙ると窓枠が揺れる音、
隙間から吹き込む風の音がうるさいくらいに響く。
歩実
彼女はスマホ取り出して呟く。
優人
宗一
宗一
優人
宗一
・
・
あ……れ…?
私の部屋……?
おかしいな…
さっきまで雪山に居たのに…
そうだ…
あれは夢だったんだ。
そうだよ…
美紀が……
私を殺そうとするなんて…
悪い夢だ……。
えっと……スマホは…。
テーブルの向こう…
仰向けに誰か倒れてる…。
宗一?
違う。
あの足は…
倒れていたのは幼馴染の美紀。
頭から血を流して
驚いたように見開かれた目が
ぐるりと動いた。
美紀
ちがっ…
美紀
違う!
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
う、うるさい!!
あんたが!
人の彼氏に手を出さなかったら!
美紀
美紀
そこで、
持っていた金槌を
振り下ろした。
・
・
目を開けるとそこは山小屋の中だった。
歩実
足元を見ると
男二人は気持ち良さそうに寝ていて、
視線を横に向けると
青年が窓の外をぼんやりと見ていた。
歩実
香坂
歩実
歩実は立ち上がり、
青年に近付く。
歩実
長い前髪のせいでよく見えなかったが、
近くで見ると端正な顔立ちをしていた。
香坂
歩実
前髪の隙間からチラリと見えた
黒曜石のような黒い瞳に
吸い込まれてしまいそうだった。
香坂
香坂
香坂
そう言って青年は微笑む。
歩実
香坂
歩実
香坂
歩実
香坂
歩実
歩実はそっと手を伸ばし、
香坂の手に触れた。
歩実
香坂
歩実
歩実の手をほどき、
そっとその頬に触れる。
香坂
歩実
指先がそっと、
唇に触れた。
歩実
香坂
香坂
歩実
香坂
香坂
彼は、そう言って
薄っすらと笑みを浮かべた。
・
・
これは悪い夢だ。
起きたら自分の部屋にいて、
くそウザイ先輩のいるバイトに行かなきゃいけない。
ああ…そうだ。
これは夢だ。
でも……
…ノコギリで肉を、
骨を切る音が耳について離れない。
あれがなにかなんて考えたくもない。
これは全部…
全部…
歩実のためなんだ。
歩実が助けてくれと言ったから
俺は、
俺は…。
でも…
彼女が頼ったのは自分だけじゃなかった。
宗一…
美紀の元カレで
歩実の今の彼氏…
俺は…俺は…。
それでも俺は、
彼女のために
死んだ美紀を
運んで遺棄しやすいように
バラバラにした。
美紀
生首が語り掛けて来る。
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
黙れ!!!
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
美紀
黙 れ ! !
嘲笑う頭を踏みつぶした。
・
・
歩実
優人
歩実
優人
薄っすらと目を開けたが、
視界に紗がかかったように
はっきりと見えなかった。
歩実
優人
視線先に
長い髪を乱した女性と
彼女にまたがる男性の姿が見えた。
歩実
歩実
歩実
耳を澄ませば
粘質な音が聞こえる。
優人
歩実
息苦しそうな艶やかな声を零す歩実。
歩実
歩実
伸ばされた手が
”ビクビク”と痙攣する。
優人
動こうにも体は言うことを利かず、
伸ばした手を掴むことすらできなかった。
歩実
優人
香坂
優人
だんだんと視界がはっきりとしてくる。
香坂
香坂
歩実
優人
歩実
優人
伸ばされた手を見て優人は息を飲んだ。
歩実
その手に
指は無く、
断面から
血が滴り落ちていた。
優人
歩実
歩実は大量の血を吐く。
香坂
香坂
飄々と呟く香坂。
優人
香坂
香坂
歩実
香坂が腹部に置いていた手を上げると、
その手は真っ赤に染まっていた。
優人
立ち上がろうとしたが、
足が言うことをきかず、
もつれ、
盛大に転ぶ。
香坂
優人
歩実
優人
優人
ようやく紗がかかっていたような
違和感が消えると、
露わになったのは
好きな人の無残な姿だった。
耳を削ぎ落され、
口は耳元まで引き裂かれ、
右目には深々と
フォークが刺さっていた。
歩実
優人
香坂
香坂
香坂
香坂は終始にこやかに言い、
振り上げた手には
包丁が握られていた。
歩実
優人
振り下ろされた包丁が、
左目に突き刺される。
歩実
さらに、容赦なく包丁を捩じる。
歩実
痛みで
手足をバタバタさせると
辺りに血が飛び散る。
優人
歩実
優人
香坂
歩実
鈍い
聞いたこともないような音がして
包丁が根本まで
深々と突き刺さると
二回ほど大きく痙攣をし、
彼女は動かなくなった。
香坂
香坂は嬉しそうに呟く。
優人
優人
優人
しかし、彼女は何も答えない。
優人
優人
香坂
香坂は、
ゆっくりと立ち上がる。
香坂
優人
香坂
優人
香坂
優人
優人
香坂
そう言って香坂はウインクして見せた。
優人
・
・
香坂
香坂
香坂
そう言って下山する彼の後ろで、
山小屋は赤々と燃え盛っていた。
中から悲鳴のような声が聞こえたような
そんな気がするが、
彼は二度と振り返ることなく
山を下りた。
入山規制がかかったこの山に
再び人が訪れるのは、
雪の融けだす四月下旬以降。
それまで彼らの死体は、
誰にも見つかることなく
ひっそりと朽ち果てるだけ――――。
・
・
END
コメント
6件
毎回思うんですけど香坂さん可愛いです🤧🫶🏻🫶🏻
私の書くストーリーに使われているあのシルエットアイコンのみ全て同一人物となっております♪
途中、R指定の場面!?と思いきや…別の意味でR指定の場面だったのでヒャ〜となりました!香坂さん名乗ったのはこれが初なのですか…!?