向日葵に落涙を

最初に

さっそく なんですけど ！ これ 音楽聞きながら 思いついたお話なんですよ 〜

新海誠 監督 【　天気の子　】 より　、 花火大会　／　RADWIMPS

歌詞のない 3分ほどのBGMで 綺麗なんです

主と 読む速さ が 近ければ　、 場面視点 が　若井　に 変わったところから 流したら いい感じになるはずです

前置き長くなって 申し訳ないですーーーー ではどーぞっっ

初夏がすぎ　、　蝉の声が煩くなった 7月上旬 。

テレビは 「 観測史上最高気温 」 と 綴られて ばかりで 、 本格的に 今年 の 夏が始まろうとしている 。

夏 なんて キラキラしたものを言ったって　、 病室に籠って 外に出ることが許されない 僕には 関係ない 。

けれど 、 今年だけは違う 。

今年の夏は 、 僕にとって 最期の夏だ 。

一昨年　、　中学校生活最後の時 。 6月にした学校の尿検査 に ひっかかり 、 そこから調べると 白血病　に なっていることが 判明した 。

そこからは 入退院の繰り返しで ろくに学校も行けず 、 ぎりぎりで 高校に入学できても 、 2年になってからは ２度しか行けていない　。

最初こそ お見舞いに来てくれていた 両親だって　、 先月から顔も出しに来ないし 。

兄貴2人とも できた人だったのに　、 僕が神様に与えられたのは 音楽 だけだったのにも 関わらず 1年ほど前に 余命宣告もされて　。

いらない子 だったんだな って 、 つくづく 病室の窓辺で思ってしまう　。

『　可哀想な主人公　』 何度も憧れた 漫画の世界だと 僕はきっとこの立場で　、 好きな人と結ばれて 病気も克服し 報われるはずだ　。

なのに 、 現実はなぜこんなにも 過酷 なのだろう 。

僕より後に 入院してきた あの子も 、 あの子だって 。 みんな 笑顔で 退院していったはずだ 。

僕にだって夢があるのに　。 神様は 心底僕のことを嫌っているんだ　。

だって 、 『　ライブで僕の曲を楽しく歌う僕　』 なんて 、 そう 我儘じゃないでしょう ？

どうして 頭では すぐ想像の出来る僕の姿が　、 手では 届かないのだろう 。

前触れもなく 僕の思考を 途絶えさせたのは 、 普段から良くしてくれる 看護師さんの声だった 。

誰が来たかなんて 目星は着いている　。 平日の6時付近に来る いかにも　学校帰りに来ました なんてやつは 1人しか居ない　。

若井滉斗　。 中学からの仲で 、唯一の親友と呼べる ぐらいの親密関係だ 。

元 サッカー部で　、　その実力は 名門高校の監督が 腰を抜かすほど　。　とにかく 努力家 。

だが 、 高校に入った途端 10年続けていた サッカーを ぱたり と 辞めてしまった　。

名門高校からのオファー を 全て蹴り 、 僕と同じ　ごく普通の市内の私立高校 を選んだ 。

親にも 友達にも 最後まで否定されるも 頑なに 変えようとせず　、　理由も話さなかったそう 。

けれど　、　僕だけがその理由を知っている　。

あいつは 、 僕を最優先に考え 行動している 。

それも 中学２年生の時の話　。 初の入院で1週間休んだ時に 理由を問い詰められ 、　仕方なく 理由を話せば 責任感を感じ この様だ　。

そして 高校に入り 僕の長期入院 が 決まると 1週間に 4回ほど 見舞いに来るように　。

なぜここまで するかは分からないが　 兎に角 彼は 同情しやすい 友達思いの性格だ　。

“ 友達 ” 僕は 彼から頻繁に出る この言葉に 非常に過敏 。

そう　、　僕と彼の関係性 を 聞かれたって　 ただの友達 か 親友 でしかない　。

僕は 、 彼に 片想いをしている　。

中学で 若井が モテていた時 、 騒いでいた女子に紛れ ひっそり恋心を寄せていたのが 僕 。

若井が 此処に通うようになってからは　 思いが 大きくなっていくばかりで 。

来世をかけても 叶わぬ恋 を してしまった　。

そう言い 手渡してきたのは 1本の向日葵と 学校の課題たち　。

高校に入学ができたのも この若井のおかげなのだが　、 これは話すと長くなるので 辞めておく 。

入院で学校に行けない僕は　、　毎週 課題を出せば 内申点を貰えて 退学を回避出来る 。

花については　週に1度程のペースで 花屋の花を ランダムに買ってきてくれるのだが　、 既に 先週 8本の向日葵を貰っている 。

同じ花瓶に 入れて 窓辺に飾り　 毎日僕が 水をあげている　。

ベッドから 降り　立ち上がって 花瓶に向日葵を飾っていると 、 ふと若井が声をかけてきた 。

普段 世間話などを出さない 若井の口から 夏祭り　という言葉が 出たのは とても 新鮮だった 。

夏祭りと言っても　、　メインは花火で 。

そういえば 去年 、 この窓 からも 花火が見えたな なんて 情景を思い出す　。

あんな 人混みの中で 歩き回るなんて 勿論禁止　。 今年も 、 去年と同じ　。

1人で ここから あの花火を見るんだろう　。 そう思っていた矢先　、

予想外の言葉が 次々と出てくる　。

一緒に花火を見る　？？ 僕と　？　若井で　？

こういうのは 普通 好きな人と 夏祭りに行って 花火を見るものじゃないの　？

振り返ると 照れくさそうに 棒立ちしている 若井と目が合う 。

若井とは 恋愛話なんて 一切しない 。

高校で 若井も好きな人が出来ているはずだし　、 でも 話さないのは僕への配慮なだけで 。

配慮は嬉しかったけど　、 そのせいで 僕の恋は諦めきれなくて 。

やっぱり　、　若井も 好きな人がいるんだ　。　 いいな ぁ　。　僕も 若井に好かれたかったな　…

そんな感じで　、　人生最後の花火は 好きな人 と 見れることになったらしい　。

僕を 優先してくれたのが 嬉しくて 、　胸の中が熱くて 幸せを噛み締めたくなる　。　

余命はあと１ヶ月 。 これが 最期の思い出になるだろうな 。

余命の事は 若井にですら 教えていない　。 若井の悲しむ顔は 、 もう 絶対に見たくないから　。

それに 、 そんなこと伝えたら　ずっと学校休む　なんて 言いかねないし　。

ベッドの横の 机にある 時計に 目をやった 若井は 、 さっきまでの余裕はどこにいったのか 急いで 荷物をまとめている　。

ああ　、 これで 今日は終わりか　。 寂しいな　。

きっと 明日はみっちり補習させられるから 会えないだろうし　。

勢いよく 病室から飛び出した 若井の背中に 小さく手を振る　。

廊下からは　「 走らないでね 」 という 声が聞こえてきて 笑いが込みあがってくる 。

面白いやつ だな　。

横たわろうと ベッドに目を向けると　、 僕のじゃない ノートワーク が 置いてあった 。

裏表紙 を 見ると　男らしい字で 若井滉斗 と 書かれている　。

しかも これは 明日提出の課題だったはずだ 。

追いかけようか迷ったが 、 今度来た時に 怒られた談を 聞きたくて 机に置いて 眠ることにした 。

明日は 補習に怒られるのか　。 ふふ 、　可哀想な奴　。

花火を一緒に見る約束をしてから 1週間。

いよいよ 今日が約束の日だ 。

楽しみにしすぎて 1週間がいつもより長く感じたが 、 いざ目前になると 時間が早すぎる　。

差程 神社まで遠くなく 、 此処が5階のため　 屋台の灯りがよく見える 。

各々の灯りが良く見えて 現実か疑ってしまうほど 綺麗だ 。 死んだ時は あんな風に 明るく囲んでくれたらいいな 。

いや 、 … もしかしたら 僕はもう死んでるのかな なんて 。

梅雨時にも関わらず 外は満月が見えていて　、 雲がひとつも見えない 。

窓辺にある 11輪の向日葵から 1本 向日葵を取りだし 夜空に掲げる 。

夏は 、 誰でも主役になれるんだな　。

きっと 、　向日葵だって 、 花火だって 。 綺麗に咲きほこる姿は 漫画の勇ましい 主人公そのもの 。

だから 、 今日だけは 僕が この世界の主役だ 。

1日だけでも 、 彼の 視線を 独り占めしたい 。

不意に鳴ったのは スマホの通知音　。 誰からか 確認しなくても 通知をオンにしてるのは 1人だけ 。

ゆっくり ベッドに座って 内容を確認する 。

　「　道が混雑してる 。 開始に間に合うか分からないかも 」

それは 僕の 気持ちを沈ませるには とても簡易なメールだった 。

誰も悪いことでは無いが 、 少し苛立ちを覚えてしまう　。

現在時刻は 18時49 分 。 花火開始は 19 時 から の 約10分間　。

あと 11分 あるが　、　それでも 間に合わないのだろうか 。 そんなこと考えなくてもわかっていた 。

地方ニュースは 花火大会に釘付けで　、 道が混雑してるなんて 毎年のことだし 、 写真を見ると 「 本当にそこまで行きたいか ？ 」 と 思うほど 鳥肌が立つ　。

「 そっか 。 どれぐらいかかりそう ？ 」 後悔で途方に暮れる中 、 何とか手を動かし 返信する 。

一瞬にして既読がつき　、　連絡が返ってくる　。

若井が示したのは 丁度 花火が始まる頃の時間 。 早くて 10分なのか 、 遅くて 10分 なのかは分からないが　、 それぐらい 時間が厳しいことがわかる 。

早く逢いに来てよ　。 僕のこと守るなんて言ってきたくせに 。

独りは やっぱり寂しいから　。

夜は どれだけ明るくたって 暗闇に呑み込まれてしまいそうになるから 。

それから 10分以上たっても 若井は来ず　、 花火大会 は 予定通り 19 時に行われた 。

流れた涙は 誰の元にも届かず　、 ただ 静かに花火に解けて 消えていく 。

次々に 花火が上がっていく様子は 今見るには 心苦しくて　、　死体のように 横たわって 時間の流れを待っていた　。

19 時 4 分

病室に入った時には 既に息が切れていて　、 乱暴に扉を開き 駆け足で ベッドに足を運ぶ　。

普段明るい病室が 、 今日は 深夜灯程 の 小さな 光しかなくて　。

深呼吸をしながら ベッドに目をやると 小柄な少年が 独り 眠っていた 。

シーツにできた シワに 、 枕が濡れてるいるのは 決して 魘されているのではなくて 。

背もたれのない 小さな椅子に 座って 窓の外を眺めると 、 大きな花火があがっている 。

語りかけるように 独り言を呟けば 、 先程まで寝ていた 愛する友人の声が聞こえるのだから 吃驚した　。

ぬくぬく と 上半身を起こして 窓に目線を向ける 彼の横顔 は すごく綺麗で　。

寂しそうに笑った 彼の細い目は 赤く光っている 。

その孤独な瞳に 俺が映れば と どれだけ願ったかなんて わからないけど 。

ゆっくり こちらを向く彼の瞳は もう 俺が写っているか 分からないほど 真っ黒で　、 何故か 淡い寂寥 を 感じた　。

また 今日も 手に持つ 向日葵は　、 これで 12本目 。

1人で呟き　、　花は直接渡さず 窓辺に向かい 向日葵を集める　。

まだ 全て綺麗に咲いていて　、　 綺麗な夏の匂いが　僕の鼻を掠めた 。

自身のカバンから 真っ赤なリボンと包み紙 を 取り出し　、 優しく 、 折れないよう 紙に巻いて リボンで 束ねる　。

この日のために 、 花屋店員の方から 丁寧に教えてもらった 為　すんなりできた 。

花束は 、 どの方向からでも 必ず2つは 花が咲き誇って 見えるように　。

… 元貴が 、 淋しくならないように 。

再び 先程まで座っていた 椅子に座り　 元貴と目を合わせると 、 驚いた表情をしていた 。

元貴の言う通り　、　最初から 花束 にして 渡した方が 驚いたと思うし 手間もかからなかった 。

毎日 こうして 花を1つずつ渡したのは 、 毎回 愛を伝えたかったのは そうだけど　。

なにより　、　自分自身 （ 元貴 ） が 育てれば この花に 愛着が湧いてくるんじゃないかなって 。

2つの愛情で出来上がった花束の方が　、 綺麗だから 。

しっかり 自分なりに考えた 結果 だった 。

同性愛者 なんて 知られたら 嫌われるかな　。 もう 、 会えなくなるかな　。

でも 、 今日だけは 精一杯の笑顔と花束を 貴方に送らせて 。

いつから こんな 感情を持ったかなんて 覚えていないけれど 、 貴方が 、 元貴の事が 誰よりも大好きです 。

今日だけは　、　花火より　、　俺を 見てください 。

全てをあげるから 、 受け取ってください 。

皆の為の 花のように咲き誇る 火薬 より　、 貴方との 12本の 愛情で咲き誇った 花の方が　、　 よっぽど綺麗だと思うんだ　。

元貴は　、　どう思う　？

背後の窓からの花火によって 照らされた 元貴は　、 尋常ではないほど 火照っていて 。

彼の目から零れた涙は　、 そのまま 花に与えられた 。

ああ 、 こんなに幸せなことがあっていいんだ 。

これはきっと 悪夢だ 。 目が覚めた時 俺が悲痛を 感じてしまう 程の 。

でも 悪夢じゃないほど　、 泣きながら 微笑んでこちらを見つめる彼は きっともう 、

外からは爆音が 聞こえる中　 小さく 小さく　、　世界の端で 言葉を繋いだ　。

唯　、　地球は丸いように 何処かの世界線では 僕らは主人公で　、

その世界線が 此処じゃなくとも　、　貴方は 誰よりも 輝いて強い 主人公 だから　。

そんな貴方に 惹かれていったのはきっと　、 同性愛者だからでも なんでもなく　

運命であったからだ と 今はそう信じていたい　。

そこからは 何度も 愛を確かめるように キスをして　、　気付けば 花火なんて終わっていた 。

重たく 口が開いたのは　、 元貴に関することだって 分かっているから 。

今だけは言わないで　。

本当に大切なことは 、 秘密でいいよ 。

だから今だけは　、　2人だけで 幸せをかみ締めていよう　。

眉を下げて 笑った貴方の 孤独だった瞳には　、 もう 俺が 写っていて 。

彼から 流れた涙は 、 そのまま 消えることなく 俺の手に 掬いあげられた　。

これは 、 同性愛者 という 檻の中で　、 世界から 嫌われる2人が 神をも敵にして 愛し合う 物語 。

蝉時雨の煩い 7月の中旬　。

“ 出会えてよかった 、 愛してる ． またね 、 若井　． ”

最後に そう 綴られていたのは　、 貴方の字で　。

それは 、 貴方との 自由な世界 で　、 来世をかけて 主人公の 2人が 愛し合う までの 物語 。