主
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※BL ※中太 ※死ネタ ※シリアス ※時間軸18歳位かな ※終始世界観がわかりにくい ※ドスくんがガチの悪者になってるのでドスくん推しは注意 ※泣きたくなる様な終わり方
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太宰治幹部が攫われた。
某日、ポートマフィアに入って来た通信。
中原 中也
通信を聞き返した。何度も。
あの太宰が攫われた?
揶揄うな、彼奴はそんな木偶の坊じゃない。
何かの策略?ドッキリ?
否、違う。 彼の一番近くに居た中也の勘が告げる。
頭の中がこんがらがり、上手く情報が纏まらないが。
今の疑問は一つ。
中原 中也
首領に呼ばれた。
「君なら何か思い当たるのでは」と。
嗚呼、そう、一番彼奴と距離が近かったのは自分。
彼奴の事をずっと目で追っていたのも。
考えろ。答えろ。彼奴の相棒として。
中原 中也
額に汗が浮かぶ。
吐気すらして来た。
その時。
けたたましい呼び鈴。
机に乗っていたレトロな電話が、受話器を取れと叫んでいる。
護衛に着いていた一人の組員がその電話を取った。
程無くして、組員が受話器のマイク部を押さえて言う。
「中也さんに御用だそうです」と。
中原 中也
誰が?どんな用で?疑問は尽きない。だが、何か厭な予感がした。
護衛から受話器を受け取る。 その時初めて気が付いた。
自分の手が震えている事に。
中原 中也
声が強張る。
「もしもし」と、面妖な声が響く。
初めまして、と。中也の頬を汗が伝って床へと落ちる。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
反射的に、相手が云い切る前に怒鳴った。
びりっ、と空気が揺れる。
周りの者_首領ですら_が一歩退く。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
中也の眼光が一層鋭くなる。
護衛が慄き、膝に当たった花瓶が落ちた。割れた破片と水が光を反射する。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
フョードルは中也のその言葉すら楽しんで居る様で。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
住所の後に続く通話終了音。
中原 中也
首領は何も云わなかった。 ただ、少しだけ不安そうな眼をしていたのが、気になった。
指定された住所。
扉の鍵は掛かって居らず、異能を遣う間でも無く簡単に開いた。
緑色の怪しげな光が足元を照らす。
奥の方、他よりほんの少しだけ明るく見える場所に、彼は居た。
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
太宰はフョードルの隣にある筒形の容器の中に、液体と共に入って居た。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
どうすべきか。
直ぐにでもあれを割って太宰を救出するのが最善策__だが。
割った事による副作用は?もしも、其れによって太宰が死んでしまう仕掛けがあったら?
動けなかった。 其れが良くなかった。
中原 中也
がばっ、と、中也を覆う様に出て来たガラスの箱。
出せ、と叫ぶが、声が届いて居ないのが中からでも分かる。
フョードル・ドストエフスキー
目の前のフョードルの声は、スピーカーを通して伝えられた。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
素材的に破れない事はない。 だが、最後の言葉が刺さった。
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
其の笑みは底が見えない。
と云うか、何故自分はこんなにも彼奴に執着しているのだろう。
大嫌いな〝彼奴〟では無かっただろうか?
中也の脳裏に浮かぶ疑問。
フョードル・ドストエフスキー
中也の碧い目が紅い釦を捉える。
フョードル・ドストエフスキー
中也が釦に手を掛けた。
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
要するに、自身が死ぬか、彼奴が死ぬか…と云う事だろう。 其の装置がどんな作用をするのかは分からないが。
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
奥歯がぎりりと音を立てた。
唖々、何故俺はこんな奴の為に?
…あれ、なんで俺、ここに居るんだ?
駄目だ、目的を見失うな、此奴を助ける為だろう?
訳も分からぬ疑問が沸々と湧いて来る。
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
「いえ、」とフョードルは笑んだ。
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
思い出そうとした〝彼奴〟の顔に靄が掛かる。
目の前の魔人は愉し気に笑う。
散々弄びやがって、俺と__
彼奴を、__彼奴、は…
…誰だっけ。
焦って装置の中を見る。
目の前に居る筈なのに、眼を逸らすと顔が分からなくなる。
彼奴は〝誰〟だ?
彼奴は俺の何だったっけ?
彼奴を助ける意味って?
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
フョードル・ドストエフスキー
淡々と説明するフョードル。
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
時間は刻々過ぎて行く。
よく見ると、装置の中の体は避けて来て居る様にも感じる。
助ける?此奴を?〝居なくなる〟人間を?何の関わりも無い、人間を?
意味がない……。
悶々として居る内、残り時間は一分を切った。
フョードル・ドストエフスキー
中原 中也
フョードル・ドストエフスキー
恐らく最後の問いだ。
フョードル・ドストエフスキー
否、もう良いだろう。前に浮かぶ人間は、もう存在しない者なのだろうから。
駄目だ
だって、知らない人なのだろう?
違う
皆が忘れる存在を助けて何になる。
太宰は
嗚呼、何だか頭の中が煩い。
大事な人なんだ
愛してる人なんだ
中原 中也
分からない。
分からない、けど。
このまま彼奴が消えたら、俺の中の何かが失くなる気がする。
駄目だ、押さなきゃ。
自分を殺してでも?
嗚呼そうだ、俺が代わりに死ぬだけだ。
だって、愛してるから
短い電子音。
装置が解除され、中から液体と人間が出て来た。 フョードルは瞠目する。
ふ、と記憶も戻る。
中原 中也
嗚呼。太宰だ。
中也の周りにガスが充満し始める。
中原 中也
中原 中也
中原 中也
もう二度と会える事は無いと云うのに、笑みと涙が溢れる。
中原 中也
面と向かって伝えられなかった言葉を。
中原 中也
中原 中也
ガラス越し、意識も視界も薄れる中で、中也は笑った。
フョードル・ドストエフスキー
フョードルは想定外の事態に困惑して居た。
ガラス箱の中に倒れる死体を前に、溜息を吐く。
フョードル・ドストエフスキー
後日記録__ 太宰幹部奪還成功。 魔人・フョードルの行方はわからず
中原幹部、死亡。
コメント
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マリアナ海溝くらい内容深くて泣きそうなった(?) 圧倒的文才✨
此れが授業中に思いついたものとは思えないほどのストーリー構成…見習わねばッッ
やばい感動...最高だぁ