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人気のない音楽室。
1人うずくまっている奴がいる。
はやと
俺はそれが誰だかすぐにわかった。
えいく
永玖の息が荒くなっていた。 最初は手が震えるだけだった。けれど、次第に肩が波打つように揺れはじめ、 目は焦点を失っていった。
彼の声は上ずっていて、 まるで何かから逃げるようだった。
颯斗はすぐに異変に気づいた。
はやと
けれど、その声も永玖には届いていなかった。 息がどんどん浅くなっていく。両手で頭を抱え、まるで自分の中の何かを消そうと するように蹲った。
えいく
叫びながら、永玖は手当たり次第に近くの 譜面台を倒し、後ずさった。 恐怖で顔は真っ青、涙が止まらない。
はやと
颯斗は決意したように、恐怖に取り憑かれた 永玖をそっと、けれどしっかりと抱きしめた。
その瞬間――
えいく
バシッ💥
永玖の手が、思い切り颯斗の顔を叩いた。 唇が切れて血が滲んだ。でも、颯斗は怯まず、 そのまま力強く永玖を抱きしめ続けた。
はやと
永玖は暴れた。 手を振り上げ、背をのけぞらせ、 何度も何度も叫んだ。
えいく
それでも颯斗は永玖の背を包むように抱き、 何度も、何度も、繰り返した。
はやと
やがて、永玖の身体から力が抜けていく。 肩が震え、嗚咽とともに 全身の緊張がほどけていった。
えいく
はやと
ゆっくり、永玖は颯斗の胸に顔を埋めた。 頬にぽたぽたと涙が落ちていた。 その夜、永玖の心の奥底に、少しだけ“安全”という感覚が戻ってきた気がした。