体育館。
夕方の空気が、
微かに埃の匂いを含んで流れている。
バレー部の練習を見学すると言ったはいいが、
柊は部活というものに殆ど関わったことがなかった。
体育館の熱気。人の声。
ボールの声。
全てが眩しくて、どこか遠くに感じた。
おっ、新人?
え、まじ?この人が例の伝説の不良?
しっ、聞こえるって…!
ザワつく部員達の視線が刺さる。
けれど、柊は気にする様子もなく、
壁際で黙って腕を組んでいた。
その様子を見て黒尾は笑った。
黒尾 鉄朗
なぁ、柊。ちょっとスパイクやってみない?
黒尾 鉄朗
難しいこと考えずにさ。
柊 冬夜
やったことないんですけど…
黒尾 鉄朗
大丈夫。俺がパスするから。
黒尾のトスは驚くほど丁寧だった。
柊の構えに合わせて、
まるで気持ちを汲み取るようにふわりと浮かぶ。
受けるだけなら、出来るかもしれない_
構えた柊の手にボールが当たった。
けれど、勢いに耐えきれず
バランスを崩して尻餅をつく。
柊 冬夜
やっぱり無理なんですよ、笑
黒尾 鉄朗
いやいや、初めてにしては上出来。
黒尾 鉄朗
センス、あるかもね?
そう言って差し出された手は何故か
暖かくて、優しかった。