主
緑色
時が止まった 緑色さんの視線は、確かにらっだぁを 捉えている 俺ではなく、確実にらっだぁを
らっだぁ
恐る恐る出したらっだぁの声は 尻すぼみになる それを聞いた緑色さんは 困ったような笑いを見せた
緑色
ぺいんと
俺がそう言うと緑色さんは 驚きの色を見せた
緑色
らっだぁ
らっだぁ、若干おこ
緑色
と、楽しそうに 緑色さんが言う
緑色
緑色
緑色さんは御札の様なものを ちらつかせる
らっだぁは「ひっ」と喉を 鳴らし、俺の後ろに隠れた やっぱらっだぁ霊的なものなのか
そう思ってると緑色さんが 「でも」、と言う
緑色
緑色
ぺいんと
緑色
なんなんだ、この人…
緑色さんは荷物類を抱えると 小さくひらひらと手を振りながら 美術室から出ていった
数秒後、 「…レウサン~」と気の抜けた声で レウさんを呼ぶ声と共に バサバサとお菓子が 落ちる音がした
〜1週間後〜
美術部に入ってから 平凡な日常が色についた そこからはもう、目ぐるましく 時は過ぎる
緑色さんはそれっきり らっだぁに触れることはなかった
同い年のしにがみくんは 何やら変に気があってクラスは 違ったものの、すぐに仲良くなった 今ではずっと一緒にいると言っても 過言でもない
らっだぁはというと、 相変わらず俺にちょっかいかけたり 独り言の嵐だったり自由さは 哀えない
少し変わったことと言うなら 美術部の皆に興味を示してるくらい 今までは俺以外には興味を示すことはなかったから、そこは珍しいことだと言える
それから、俺にくっつかなく なったかも……? いや、それはかわんないけど
いつの間に変わってしまったのか、春の桜はすっかり緑になっていた 照りつく太陽もだんだんと元気になってきたので、長袖はタンスでお休み
夏に近づいた美術室 今日は3年の先輩方は業後補習らしく、1、2年生の4人で黙々と作業をしていた
きょーさんとレウさん、しにがみくんと俺、一言も喋らない ただひたすらに 自分の作品に向かう
らっだぁだけが、暇そうにみんなの作品や窓の外を眺めていた
学校はケチなので、クーラーはもう少し先にならないと付かない 殺す気かよ…… じわじわと身体から出た汗が 1本になってこめかみを伝う
金豚きょー
言い出したのはきょーさん
レウクラウド
と、呆れ気味のレウさん
金豚きょー
しにがみ
金豚きょー
金豚きょー
そう言って真上に拳を突き上げる きょーさん こうなったら仕方ないので 残りの3人も渋々と手を出す
その姿にらっだぁが笑う
らっだぁ
え?
その親しげな呼び方に 懐かしむような笑いに、 一瞬気を取られた
金豚きょー
ぺいんと
全員がパーを出すところに 俺は慌ててぐーを出した
金豚きょー
と、きょーさんは 笑っている
しにがみ
と、しにがみくん
ぺいんと
そう言って顔を覆うと ぽんっ、と何にかが飛んできた かろうじて受け取るとそれは レウさんの財布
ぺいんと
レウクラウド
と、苦笑いをするレウさん
金豚きょー
レウクラウド
レウクラウド
レウクラウド
めちゃくちゃカッコイイ…! 感激している俺の隣で しにがみくんがぼやく
しにがみ
しにがみ
レウクラウド
しにがみ
俺の後をついてくるしにがみくん 後ろを振り返ると レウさんきょーさんと共に らっだぁが笑いながら 手を振っていた
いつもは俺の後ろを 着いてくるくせに……
しにがみ
ぺいんと
さっさと済ませたいのか 早歩きで歩き出すしにがみくんの 後ろを大股で歩き、 追いかけた
しにがみ視点
まだ6月というのに、照りつける 太陽のお陰で汗は止まんない ぺいんとさんと喋りながら 学校の中庭の自販機に たどり着く
しにがみ
しにがみ
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
この人は…… 自分がじゃんけんで 負けたというのに……
しにがみ
再び尋ねると、ぺいんとさんは あー、とかうー、とか 唸った挙句
ぺいんと
と、キレの悪い答えを出した
絶対適当だな…と思いながらも 綾鷹を1つ買う まぁ、誰か飲むよね…多分
しにがみ
ぺいんとさんに数本の ペットボトルを押し付けて 自分は残りのペットボトルを 抱え、お釣りを 取り出す
ぺいんと
相変わらず曖昧な返事を して、ぺいんとさんは目を 逸らした
グランドから響く運動部の 掛け声が、2人の沈黙を 埋める
僕は、はぁ〜、とため息を ついて、ぺいんとさんを 近くのベンチに座らせた
ぺいんと
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
そう言うとぺいんとさんは ははっ、と小さく笑った
ぺいんと
しにがみ
しにがみ
今の発言が何か悪かったのか それとも良かったのか ぺいんとさんの息が一瞬止まった 僕はぺいんとさんじゃないけど 確かにそれがわかった そして、ゆるゆると、喋り出した
ぺいんと
僕はゆっくりと頷く ぺいんとさんは遠くを見てる
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
うん、と言った自分の声は すごく情けなかった きっとこの後、もっと大きな 衝撃が来るような気がして
ぺいんとさんは続ける
ぺいんと
チャイムが鳴った きっと、3年生の補習が 終わったんだろう
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと視点
補習を終えた3年生が 1人、また1人と昇降口から 出てくる
きっと彼らはこれから 予備校にでも向かうのだろう 勉強漬けの2年後に、 密かにぞっとする
しにがみくんが ゆっくり口を開いた
しにがみ
ぺいんと
しにがみ
入学式の日、地元では 見慣れない風景と、桜並木 美術部のみんなと、しにがみくん との出会い 忘れもしない、美術部に入部した日
全て改めて思い返しても 俺ははっきりと断言することが 出来た
ぺいんと
しにがみ
しにがみ
言い終わって、しにがみくんは ふ〜、と息を吐いた
しにがみ
しにがみ
ぺいんと
全く、良い友達を持ったものだ そう思ってしにがみくんを 覗き込むと、少し照れて しまったのか
しにがみ
と、勢いよく立ち上がった
ぺいんと
しにがみ
しにがみくんがそう言って 笑う
ぺいんと
ぺいんと
そう言った瞬間だった しにがみくんが凍りついたのは
しにがみ
ぺいんと
クロノア
よく通る声が上から俺たちを 呼んだ、校舎の方を見上げると クロノアさんが身を乗り出して 手を振っている
クロノア
しにがみくんを見る その目は俺を捉えている
ぺいんと
しにがみ
校舎の方へ帰ろうとする しにがみくんが俺の腕を掴む 抱えていたペットボトルが 数本、バタバタと音を 立てて落ちた
ぺいんと
しにがみ
しにがみくんは 急いで ペットボトルを拾い上げる 俺の持っていたペットボトルまで 抱えると、しにがみくんは 校舎の方へ歩き出す
何かいけないことだった? やっぱり話しちゃいけなかった? せっかく、しにがみくんが 心配してくれたのに
呆然と立ち尽くす俺の方を しにがみくんが振り返る
しにがみ
しにがみくんの顔は 何故か乾いた笑顔だった
主
主
主
主
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