雨の教室が嫌い。
耳に当てたヘッドホンから流れる音楽がかき消されそうで嫌だから。
この音楽の中でのみ私は私でいられ、
深海をただよう魚のように 静かに生きていける。
成績も運動も読書感想文の課題も、
すっかり忘れていられる。
なのにこの雨は、
私をふたたび悪夢に引き込もうと誘うただの雑音だった。
栞
やがて授業が始まる。
そうだった。 私は海に揺蕩う魚ではなく、
中学2年生の双葉 栞(ふたば しおり)。
馬鹿で愚図でノロマな、
ダメ人間なんだ。
栞
栞
栞
栞
夕方の光に透けるカーテンを横目に
寝ぼけ眼で帰りの準備をした。
全てをのろのろとやれば、
いつか人間以外になれるのか。
私は音質が悪くなり始めたヘッドホンで音楽を聴きながら、
無駄に流れる時間を過ごした。
ワイテルズ、 という実況者グループがいる。
音楽以外で視聴するコンテンツと いえば彼らだけだった。
スマホから聞こえる笑い声は私の心を温かく満たしていく。
やがて動画は終わり、
私はまた音楽を聴き始めた。
長い間、そうしていた。
読書感想文の課題。
さっきから、どうやってサボろうかと考えている。
横髪をいじりながら考える。
図書室に行けば不登校の人達が教えてくれるのでは?
栞
栞
栞
もちろん読書などは嫌いである。
だって、 音楽と違って自分の頭で考えなければ読めないから。
ヘッドホンに揺蕩う魚ではないのだ。
栞
栞
栞
昼休み、私は図書室に行った。
そして恐る恐る扉を開ける。
「失礼します」と小さく声をかける。
栞
Nakamu
…ワイテルズのNakamuさんがいた。
……To be continued
コメント
6件
私が2代目誰かさんです テラーにいられるか分からないとは言いましたが新しくアプリを入れないとは言ってません←謝れ 色々な準備が整ったら第五章を作りますね
第5章きちゃぁぁ() もう好きです。毎日の楽しみになれました。 ミッドナイトさんの発言が気になって夜も眠れない(´◉ω◉` )