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教師

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教師

5 - 愛情

♥

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2024年01月18日

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黄野

えぇ!?一ノ瀬が80を切ったぁ!?!?

紫稲

うるせぇとでも言いたいようにこちらを睨んだ。

黄野

…ごほん…秀太が…?
意外だ…

紫稲

えぇ。化学…彼が1番
得意な教科。

黄野

…まぁ…難しかったのでしょうかね

紫稲

…平均は50…特別
という訳でもないんですがね〜

黄野

…生物は82だった…かな

紫稲

下がりつつありますね

黄野

…まぁ…受験期ですから

紫稲

…そうですからね〜

黄野

……?????

そこでその日の会話は終わった。

一ノ瀬 秀太

彼は学年1位の座をキープしている頭の良い生徒だ。

俺は彼の担任。

友人関係も良好。 運動神経もよい。 優秀という言葉が似合う男だ。

一ノ瀬

先生、手伝いますよ。

黄野

えぇ、あ、ありがとう

さらに他人に対して優しく、様々なことを手伝ってくれる何もかもが完璧な生徒

一ノ瀬

黄野

…最近元気ないよな?

一ノ瀬

…ぇ…あぁ、いや

黄野

…どうした?

一ノ瀬

な…なんも無いですっ!…
これここに置くんですよね…?
置いときます!さようならっ!

黄野

え?…さ、さようなら…

彼の焦り具合がいつにも増して酷い。

…そういえば最近授業中ウトウトしてること多くなったよな…前までそんなこと無かったのに。

黄野

黄野

よろしくお願いします

母親

お願いします

受験生ということもあり 三者面談が多く行われる時期。

黄野

それでは…志望校は決まった?

一ノ瀬

…白尾高校…

高校の名を口にした彼は母親の顔をちらりと見た

母親もまた、彼を睨むように見ていた

一ノ瀬

です

俺の方をむき、断定を告げる

黄野

白尾高校…か

白尾高校はここら辺でも1位2位を争う学校だ。入るのは相当難しい。

黄野

志望理由は?
部活とか…勉強とか

一ノ瀬

勉強…

黄野

…そう…か

確かに、彼なら行けるかもしれない。

黄野

"今の"学力では
問題ないとは思います。
けど…一ノ瀬

一ノ瀬

…はい

母親

何か問題が…?

不安そうにこちらを見る母親

黄野

最近よく寝れてるか?

母親

…まさか…居眠りとか
ないでしょうね?

一ノ瀬

っ、…

黄野

落ち着いて、まぁまぁ

驚く母親を沈める。

母親

成績も下がりつつありますよね?

黄野

勉強も難しくなっているので
おかしなことではありませんよ。
それでも上位…1位に居座ることは
凄いことです。周りも相対的に
下がっている──────

母親

秀太…

一ノ瀬

っ…はい

黄野

どうやら…止めようとしても 無理だったらしい

異様な雰囲気の中彼らを見守る。

母親

周りが下がっているから
あんたも下がっていいわけ…?

一ノ瀬

ふるふると首を振った。

母親

あんたはあんた。
周りは関係ないわ。
何を舐め腐った態度を
取っているのかしら

一ノ瀬

…ごめんなさい

黄野

お母様、中三のこの時期に
1位をとる必要はありません。
志望校に相応な学力さえあれば
高校進学に問題はありません。

母親

先生、この子の生活態度は
いかがですか…?

黄野

私を手伝ってくれたり周りを
よく見てくれる優しい子です。
ほかのクラスからも秀太君と
話すために来る生徒は多くいます。
とても愛されている存在ですよ。

母親

いいえ、そうでなく…

黄野

…ぇ?

母親

休み時間、昼休み、遊ばずに
勉強してますか?

黄野

は…

一ノ瀬

この母親…

前回の三者面談…こんな感じじゃ なかったよな…

黄野

…えぇ、していますよ

一ノ瀬

っ!

黄野

それも、とっても合理的な方法で。

母親

…それは…?

黄野

実は人間って、周りに教えると
その記憶が定着しやすいんです。
クラスメイトに教えることで
自分でただ勉強するよりも
力が着くんです。彼は色んな人に
勉強を教えていますよ。

母親

そうなんですか

黄野

えぇ。ほんとですよ。

母親

…ならいいわ。でも
成績下がりっぱなしは醜いだけよ。
今を保ちなさい

一ノ瀬

…はい

それからほとんどが勉強の話。

時間を迎えて。

母親

それでは…失礼します。
これからもよろしくお願いします。

黄野

はい。こちらこそお願いします…
それと秀太くんに一つお願い
したいことがあるので
秀太君お借りしても大丈夫ですか?

母親

大丈夫です。先に帰ってるわ

一ノ瀬

…うん

彼の母親が背を向けて帰って行った

黄野

…秀太。

一ノ瀬

…はい

黄野

お前の悩みは母親か

母親

あなたは私の子。
なんでも出来る、完璧な子

母親

そうよね?

母親

…なぜ90も取れないのかしら。
100より下げてあげてるのに…

母親

ダメね…塾のコマ…増やさなきゃ…

つら

母親

いいわね。日曜の5時から9時まで
のコマ取るから。感謝する
ことね。

母親

わかった?

一ノ瀬

…はい

親の言いなり

苦しい

寝る時間…ない

寝れて…3時間…

オール…今日で何日目…?

…わかんないや

バタリと話していた彼が倒れた

黄野

っ…!一ノ瀬!

一ノ瀬

っ、

やばい…考えろ…俺

黄野

…救急車…

スマホを取り119にかける

出た隊員の人にことを伝えて。

俺の大きな声に気づいたのか

紫稲

…おぉ…何が起きた…

黄野

っ!スマイル!市川さん
呼んでこい!

紫稲

わ、わかった…

走って彼は保健室の市川の元へ向かった。

黄野

一ノ瀬…無理しすぎ…
ふざけんな…馬鹿野郎…

どうしていいか分からずに スマホで調べるも変なものばかり出てくる

市川

大変…大丈夫…?

幸い、この教室は2階で保健室は1階。かなり近いのだ

市川

とにかく…息はしてるわね…
一ノ瀬君!一ノ瀬秀太くん!

黄野

話していたら急に倒れたんです

市川

…貧血かしら…?

隊員

失礼します

そんなことを話していると すぐに隊員の人たちは来た

隊員

息はしてる…とにかく
近くの緊急病院に運びます

黄野

は、はい

隊員

この子の名前は?

黄野

一ノ瀬秀太です

隊員

お二人はどういう関係ですか?

黄野

教師と生徒です

他の隊員が状態確認してる間 質問に答える。

隊員

お母さんに連絡とれますか?

黄野

まぁ…一応…

隊員

ーー病院に搬送しますので
お伝えください。この状態では
今日中に家に帰すことは
無理です。

黄野

わかりました

そう言って一ノ瀬は運ばれた

市川

大丈夫かしら…

そう言って保健室の市川は後を付いて行った

俺とスマイルはただ教室に残る。

紫稲

…何があったんだ

黄野

…一応…母親に連絡した方が
いいよな

紫稲

…?そうだろ

黄野

…悔しくは後で話す…

紫稲

…おう

大急ぎで職員室に入り 生徒情報のファイルを取り出す。

黄野

一ノ瀬…秀…あった…

記載された番号を打ち込み 電話をかける

数回なった後 彼女の母親はでた

母親

"はい、一ノ瀬です"

黄野

"もしもし、黒尾中学校の黄野です"

母親

"あら…どうかなさいましたか…?"

黄野

"先程秀太君が倒れて
しまいまして…今救急車でーー
病院まで搬送されました"

母親

"はぁ…なるほど"

黄野

"それをお伝えしたく電話を
差し上げました"

母親

"わかりました。今すぐ向かいます。
ありがとうございます"

黄野

"それでは"

そう言い、プツリと電話を切った。

俺も時間を作って様子見に行くか…

紫稲

…倒れたのか

近くにいたスマイルが話しかけに来る

黄野

あぁ。話してたら急にな

紫稲

そうか

黄野

俺は仕事終わったら
病院行く。

紫稲

行ってらっしゃい

そう言って彼は背を向けて歩いていった。

中途半端になっている仕事を終わらせようとパソコンを開いた。

時計の長針が一周、二週動いた時

黄野

そろそろ落ち着いたかな…

ぼそりと呟く。

俺の周りにはあまり人がいなかった。

帰宅の準備をし退勤の用意をする。

紫稲

おー、帰るのか

手にコーヒーを持ちながら 生徒の点数表を見ていた彼。 作り終わった資料の確認だろう。

黄野

…お前…終わった…?

紫稲

…えぇ?…まぁ…俺もそろそろ
帰ろうかなっておも────

黄野

よし、お前も行こう

紫稲

んえぇ、?

そう言って肩を叩くと

紫稲

いやいや、病室入れるか
わかんねぇぞ

すぐに一ノ瀬の事だと察した。

黄野

入れなかったら入れなかったで帰る。
行こ!お前の愛しい教え子だ

紫稲

俺は化学しか教えて…っておい、
勝手にリュック出すな…ちょ、
なんでペンケースの場所
知ってんの!?

俺の行動になんか言葉は突いてくるものの。

黄野

これは?

紫稲

そのポッケだけど…てか俺
コーヒーあるんだけど

黄野

飲み干せ

紫稲

えぇ…無理…

黄野

行くぞ!

紫稲

ちょっ、待て…!

黄野

ほら、飲んで飲んで!
お前も心配してんの
わかってるから

紫稲

よへいなへわ…ッゴフ…ゲホッゲホッ…
(余計な世話…(むせる音))

そう。この男あの時からソワソワしていたのだ。それも見ていたからこいつも行かせようとしてる。

紫稲

ねぇ"まっで…

黄野

飲みながら!レッツゴー!

紫稲

ゲホッ…まっで喉詰まっ…

黄野

んええぇ!?スマイルぅ!?
倒れた…?起きてる?死んでる?…

黄野

死んでるぅぅぅ!!!!

紫稲

勝手に…殺すな…

看護師

一ノ瀬秀太さんのお見舞いですね

黄野

そうです

面会の名札をつけて彼の病室の前まで連れてこられる。

一ノ瀬

ッ先生!

同時 病室のドアが開き点滴をつけた彼がいた。

看護師

一ノ瀬さん!

黄野

…!一ノ瀬…!

紫稲

歩いて大丈夫なのか…?

看護師

一ノ瀬さん!歩いちゃダメですよ!
安静に……!

一ノ瀬

先生の声聞こえて…
どうしても伝えたいことが
あるんです…

黄野

話は聞くから安静にしろ…

看護師

とにかくベッドに…

看護師

それでは

ベッドに戻ったことを確認すると看護師はカーテンから出ていった。

一ノ瀬

まさか来て下さるとは…
紫稲先生まで…

黄野

一ノ瀬

一ノ瀬

……はい

黄野

お前の話を聞く前に
ひとつ聞きたいことがある

一ノ瀬

……

黄野

母親と…上手くいってるのか?

一ノ瀬

ッ……

黄野

正直に。

一ノ瀬

ずっと…勉強…… 勉強で…
寝る時間もないくて…
塾…も増えてて…

日本語が崩れながらも 今までの事を話している彼は

黄野

……

紫稲

〜…

頬を濡らして。

一ノ瀬

ずっと…辛くて…

黄野

そうか…お医者さんには
なんて言われた?

一ノ瀬

…重度の貧血…です

そう言って検査結果の紙を見せてくれた。

紫稲

ヘモグロビン7!?

黄野

は!?

一ノ瀬

黄野

お前ッ…今15歳だよな?

一ノ瀬

……そうです

15歳男が貧血と診断されるヘモグロビンの値は13.0

黄野

こんな値テレビでしか
見たことねぇよ…
よく死ななかったな……

紫稲

…一ノ瀬、お前くらいのヘモグロビン
基準値知ってるか?

一ノ瀬

13以下が貧血と診断されるって
言うのはさっき聞きました。

紫稲

そうか……

黄野

…お大事にな

紫稲

安静に。

一ノ瀬

ありがとうございます…

黄野

それで…お前が俺に
伝えたいこと…だっけ?

一ノ瀬

……はい

紫稲

…それじゃ…俺は
出た方が良さそうだな

そう言って立ち上がる紫稲の腕を掴んで

一ノ瀬

いえ…紫稲先生にも…
もしよろしければ…

「助けて欲しいんです…」

紫稲

ッ…!

黄野

一ノ瀬……

彼のアメジストの目が見開く。

「助けて…ください…」

かつて、彼のクラスの女生徒が彼に言った。

彼女と一ノ瀬が重なった。

紫稲

……

きっと今のあいつの目にも彼女が重なって映っている。

紫稲

…わかった

そう言って元々座っていた椅子に腰をかけ直した。

黄野

ゆっくりでいいから
俺達に話してくれ。

一ノ瀬

……ふー…

彼がひとつ深呼吸をして。

彼の口が開いた。

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