ドンドンドンドン……,
姉
「りこ、りこーっ!」
お姉ちゃんが、トイレのドアを盛大に叩く🚪
りこ
(そんなに叩いて、壊れたって知らないからね)
りこ
(このマンションって、賃貸なんだから。
りこ
(だったら、いっそのことドアをこわして、引っ越しの時に、大家さんに修理代をたくさんとられたら、いいんだ)
りこ
(それで、引っ越しの費用がなくなっちゃえば良い)
私は、「ふん!」と、鼻を鳴らして、ひざの上の本に目を戻す
でも、トイレに閉じこもった時は、まだ、明るかったけれどだんだんと、日が暮れてトイレの電球の明かりだけは、本の字が読みにくくなった
りこ
(せっかくお気に入りの本を持ち込んだのに……,。
りこ
ふぅー
ひざの上に両ひじを立ててほおづえついて、おっきなため息をついた。
今日は、8月最初の日曜日
夏休み中に引っ越しする予定のその日があと、1週間後に迫っていた
りこ
(今度うちは、桜町にある今のマンションから、新しい家に引っ越しをする)
りこ
(両親が、桜町から電車で数駅離れた金岡市の、ニュータウンに新築の家を買ったからだ。)
私とお姉ちゃんが両親から、初めて引っ越しの話を聞いたのは、5月の連休明けの頃だった
母
金岡市に、良い家ができたのよぅ
父
ほんと、あんな条件の良い建て売りの家に出会った時はラッキーだったな
目を輝かせていたお父さんと、お母さんは、すごく嬉しげで今にも抱き合って踊り出しそうだ
りこ
(思いがけない急な引っ越しの話に、ポカンと口を開けたままの私。)
りこ
(お姉ちゃんは、そんな私をじっと横目で見ていた)
りこ
(引っ越しだって…………へぇー………。ええっ!?
りこ
私の最初の感想は、そんな感じだった