私は事件の被害者や加害者を専門にカウンセリングを行う臨床心理士

今日も加害者の男性との面会があり

少しでも心を開いてもらおうと努力したけれど

結果は惨敗

特に彼は冤罪を訴えていたため

心のケアには細心の注意を払わなければいけない

でも

警察の調書を見る限りでは完全に黒

証拠もバッチリ残っている上に目撃者も多数

恐らくこのまま起訴されて

裁判でも無罪を勝ち取るのは難しいだろう

なぜ彼は無罪を主張し続けているのか

そんなことを考えた時

私の脳裏にある事件が浮かんできた

十年前

まだ新人だった私にとって

あれはとても強烈な事件だった

加害者の男性、三村優真は

女子高生を拉致し監禁したとして拘留されていた

性的な目的で少女を拉致し監禁する

これは一般的にもよくある性犯罪の一種だと思われていた

でもこの事件には少し不思議な点があり

私がこの事件の担当を引き受けたのも

被害者の女性を診察した医師から妙なことを聞いたからだった

開口一番に彼が発した言葉

普通に考えれば

自らの無実を訴えているだけだと思うだろう

しかし、話をするうちに

それが被害女性、井川あすみさんのことだと言うことがわかり

私はますます困惑した

彼の目はとても純粋で

何故このような人が女性を監禁したのか？

そんな疑問が頭の中に浮かびつつあった

こう言う事件の犯人は

一方通行の愛情を被害者に向ける傾向がある

しかし彼のその言葉は

よくある犯罪者のそれではなく

何か本当に危機迫るものを感じた

これが演技なのか

それとも一方的な愛なのか

本当に愛し合っているのか

その全てが知りたくなっていた