人は、
暗闇の中にずっといると精神が崩壊すると言われている…
突き付けられた非現実
恐怖と怒りと戸惑いと迫るような闇の中
朔
…いッ
朔
…めん…いッ
朔
ごめん…なさいッ
彼のすすり泣く声が聞こえた気がした。
夜が明けたんだうか。
窓のない小さな物置のような部屋に閉じ込められた私には、
かすかに外の世界の音が聞こえた。
彼は誰かに電話をしているようだった。
朔
…しもし。
朔
…のお母様…ですか?
お母さん?
朔
僕、娘さんとお付き合い…ま…
朔
はい。
なかなか聞き取れない
朔
ええ。事故に遭ってしまって…
朔
…
朔
…時にそちらでお待ちしてます。
朔
…はい。
どうやら彼は私を事故に見せかけて母と会う約束をしたようだ。
ガチャ
朔
…ちょっと出掛けてくるから。
背中越しに気配が伝わる
朔
いい子でいるんだよ。
ガチャ
そう言い残すと彼はどこかへ出掛けて行った。
…チャンスかもしれない。
何か音を出せば、近所の人や同じアパートに住む住人に気付いてもらえるかもしれない…!!
私はガタガタと椅子を横に揺らす。
私
っす、け、
私
たす、、て!!
叫ぼうにもタオルがじゃまで声が出ない。
強く腕を広げようと、足を広げようと
強く頑丈に結ばれたロープは解けない。
私はもっと強くガタガタ!!
ガタガタガタガタ!!!と椅子を強く揺らした。
ガタッッ
ドンッッッッ
ちょっとバランスを崩した瞬間
椅子ごと崩れ落ちた。
私
…っ…っ…
自分の無力さに涙が止まらなくなった…
私
っかあ…さん
私
…あさん…
助けに行かなきゃ…
お母さん、あいつに騙されちゃだめ…
あいつは、あいつは殺人鬼なの…
頭を大きく床に打ち付け
ドンドンと音を出し続けた…
この時間…近所の人はみんな仕事に出掛けてる…
そんなの知ってる…
ドン、ドン、ドンドンドンドンドン!
私
っ…あ…っ…
涙で床を濡らしながら
途方もなく無力な音を出し続けていた…。
…つづく