結愛
はやく、はやく

翔太
確か家はここだったよな。
カチャカチャ(鍵を開ける音)

母
今、お母さん交番へ向かってるわ。
結愛は大丈夫!?

結愛
大丈夫!
もうすぐ交番だよ!

母
良かった…
多分今あの男は私たちの家に居るわ。
指示を出して正解だったわ。

結愛
とにかく今は、逃げることを考えよう。今からどうなるか分からないから。

母
ええ。『良い子』ね。

久しぶりに『良い子』なんて言われて、
泣いちゃいそうになった。
生きてて良かった。
翔太
いない…
くそあの女、指示を出しやがったな。
気づいてるんだったらもうどうでも良い。早く見つけ出そう。

結愛
ああっ、転んじゃった…痛い…痛い…

翔太
多分交番へ逃げてるな。
俺の方が足は速い。
ガキなんか捕まえられるさ。

母
結愛、そこから離れた方がいいかもしれない。

結愛
何で…?
今、交番へ走ってるよ?

母
今、男の姿を見かけた。
必死に走ってた。
私、その男の容姿は分からないけど、
必死に交番の方向へ走ってたの。
貴方や私を見つけるためかもしれない。
私たちが交番へ向かってることを
知ってるんだわ。きっと。

結愛
ほんとかも分からないのに、
何で危険な方へ逃げなきゃいけないの!
そもそも、お母さんが指示を出したのに…

母
ごめんなさい。ごめんなさい。
全部私のせいなのは分かってる。
だからこそ、逃げてほしい。
結愛を傷つけたくない。

結愛
分かった。
今、商店街へ向かう。
人も沢山居るし一応安全だわ。

母
ありがとう。結愛。

翔太
どこにも居ねぇじゃねぇか。
もう、ここまでか?

結愛
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00:00

結愛
助けてお母さん!!
男 がいる!私の存在に気づいたみたい…
今、橋に居るの…

母
え!?
結愛!!?
逃げて!逃げて!

翔太
あのガキ、橋にいんじゃねぇか…
よし、捕まえにいこう…

結愛
ぎゃぁぁぁああ!!!

母
結愛!!結愛!!
電話から悲鳴が聞こえたわ…
どうしよう、どうしよう!!

???
どうしたんだい、君。
急に悲鳴をあげて。

結愛
助けて、助けて下さい!
追われてるんです!不審者に!!

???
とりあえず落ち着いて。
このお茶を飲んで。

結愛
ありがとうございます…

ゴクゴク
あれ、なんだか、体がほわぁっとする。
まるで、浮いてるみたい。
母
結愛の声が聞こえなくなった。
どうしよう。結愛はどこに居るの。

翔太
やあ、結衣さん。

母
(わ、わたしっ!?)

翔太
また人格が変わったのかな。
僕のこと、覚えてないみたいだね。
そりゃそうだよ、僕が脳をおかしくする『あるもの』を飲ませたんだもん。
君の娘さんもそれを飲んじゃったよ。
僕のグルの人が飲ませてくれたんだ。

母
どういうことなの…

翔太
さて。ここで問題。
僕は何者でしょうか。

母
そんなの…知るわけないでしょ…
それより…娘を返して…よ…

翔太
おっと、僕の話を遮らないでくれるかな。質問に答えて。

母
知らないわよ…

???
君も馬鹿だよね。
自らこっちに来ちゃって。
君のお母さんももう助からないね。

結愛
おかあ…さん…

母
結…愛…

二人の視界がぼやけた。
ああ、何も分からないまま死ぬんだ。
翔太
死ぬ前に教えてあげるよ。
僕はね、『別の世界』からやってきたんだ。どうだい、素敵だろう?
正確には、僕は、君の娘、結愛と君のお腹に居た、『兄』なんだ。

母
私の…子供?

翔太
ざっくり言うと、そういうことになるね。僕は結愛と生き別れになっちゃったんだけど、それがどうにも気に入らなくてね。別の世界に転生し、逆襲しに来たというわけさ。

翔太
理不尽と言えばそこまでだが、
僕は、それがどうしても許せなかったんだよ。でもまぁ、これから僕も死ぬし、
今度死ぬときは、『一緒』だね。
