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〜真冬side〜
校長先生
今は、入学式の真っ只中
どうやら校長先生の話は、 小中高と共通らしい
真冬
校長先生
校長先生がステージの上でお辞儀を して、僕ら新入生も軽く会釈をする
司会
次は生徒会長…… どんな人なんだろう?
ステージ傍から1人、男子生徒が ステージに上がってくる
すると、周りの女子がざわつき始めた
彼方
まず一番に目に映ったのは、 その整った顔立ち
いわゆる、イケメンってやつ
その顔で、こちらに笑いかけながら 話し始めた
真冬
けど、それより僕が気になったのは、 まるで大人の男の人みたいに 落ち着いた、生徒会長の“声”
初めて聞いた声のはずなのに、 何故か既聴感があった
話す声に耳を傾けて、何とか 思い出そうとしてみる……けど、 中々誰とも一致しない
僕、音楽をしてて“音”には敏感だし、 声を聞き分けるのも得意だけど……
真冬
そんなことを考えているうちに、 いつの間にか話が終わっていた
知ってる人の声と似てたってだけかも しれないし……別に、そんなに気に しなくてもいっか
真冬
順調に式が終わって、やっとあの 重々しい空間から解放された
式をしていた体育館の外に出て、 沢山の人の中、みんなを探して 周りを見回してみる
……って、あそこにいるのって……
真冬
道の端にある植え込みの手前に、 さっきの一ノ瀬会長がいるのが 目に止まった
真冬
さっきの笑顔はなく、無表情で、 何もせずに桜の木の下に佇んでいる
ビュウッ
真冬
不意に、強い風が吹いて、 桜の花びらが空に舞い散った
真冬
その光景をただ見つめる彼に、 思わず目を奪われる
風になびく、少し長い黒髪と、 そこに映えるピンク色の桜の花に、 人目を惹くその容姿
男の僕でも、思わず見惚れてしまう ほど、綺麗で、儚げで…… それでいて、格好良かった
──好きだ
無意識に、そう想ってしまうほどに
……ふと、何かがキラリと反射して、 頬を伝っていくのが見える
真冬
真夏
姉さんの声がしてハッとする
それと同時に、一ノ瀬会長に 見惚れていたことに、今更気づいた
翔太
棗
真冬
3人に手招きされて、後ろ髪を 引かれつつも、会長から目を逸らす
それから、みんなの方に走って行った
まふまふ
そらる
日が暮れ始めて、朝の学校とは打って 変わって、静まり返った僕の部屋
今は、そらるさんと ディスコードで通話中
実は僕、ネットで歌い手をしてて、 歌ってみたとか、たまに自分でも曲を 作って、動画サイトに投稿してるんだ
さっきちょっと言った “音楽”っていうのは、これのこと
それで、通話相手のそらるさんは、 その活動の中で知り合った、 同じ歌い手の人
『そらる』って名前はハンドルネーム だから、本名は知らないよ
でも、つい最近由来を聞いたんだ
「空を見上げることが好きだから」
これが『そらる』の由来らしい
僕は本名の真冬を文字って、 『まふまふ』って名前で活動してる
ボクらはたまにコラボをしたり、 ボクが曲を作って、それを一緒に 歌ったりしてるんだ
直接会ったりせず、こうやって 通話するだけだから、お互いの 顔も知らないけどね
そらる
まふまふ
そらる
その後に、おめでと、と 言ってくれたそらるさん
そらる
まふまふ
たしかそらるさん、 歳って僕の1つ上じゃなかった?
そらる
まふまふ
たしかに、そりゃそうか
この時期だし、式の日が 他校と被ってもおかしくない
それに、聞いたところ同じ県に 住んでるらしいし、尚更だ
そらる
まふまふ
苦笑いを交えつつ、そう答える
でも、そういう代表をするって、 そらるさんすごいなぁ
まふまふ
まふまふ
まふまふ
何となく、そらるさんに話してみる
そらる
まふまふ
そらる
どんな感じか……
まふまふ
人の声を言葉にして説明するのって、 結構難しいな……
そらる
落ち着きがあって、爽やかな、 透明感のある声……
まふまふ
まふまふ
そらる
まふまふ
自分で言って、やっと納得する
そうだ。完全に一致はしないけど、 そらるさんに似てたんだ
まふまふ
そらる
そらるさんのおかげで、 疑問が一つ消える
まふまふ
今活動を続けてるのも、 そらるさんが、ボクの歌が好きだって 言ってくれたからだし
そうじゃなかったら、途中で 挫折して、辞めちゃってたと思う
コンコンッ
ふと、ノックの音が部屋に響く
まふまふ
そらる