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デビルズパレス
主の部屋
その日は本当に最悪で
昨日から高熱がでていて とても苦しかった
それに追い打ちをかけるように
昔の夢をみてしまった
主
主
目が覚めた私は
朦朧とする意識の中で
無我夢中で今会いたい人の名前を叫んだ
主
ラト
砂糖漬けにしたいちごのように
ラト
甘酸っぱい声がした
主
主
私が伸ばした手を
ベットの傍らにいるラトが
優しく握ってくれた
ラト
ラト
握られた手から伝わる 少し冷たい温もりが
火照った体に染みた
主
私は少し落ち着いて
ぽつりぽつりと怖かったことを 彼に伝えた
主
主
主
起きた瞬間から
目の前に鮮明にあったはずの景色は 消えていった
しかし
その夢への漠然とした恐怖は
はっきりとした輪郭をもって
私の中に居座り続けていた
主
主
主
ラト
言葉にして
私はようやく心を落ち着けた
主
私はぎゅっとラトの手を握った
主
主
見上げた彼は
ラト
ラト
とろけるように優しい微笑みをたたえていた
ラト
ラト
左頬から斜めにヒビが入ったような
大きく醜い火傷のあと
そこに
ラトの手が触れる
ラト
ラト
ラト
ラト
ラト
主
そういったラトは
火傷のあとをなぞるように
主
私の顔に爪をたてた
ラト
彼の楽しそうな笑い声と
無理やり皮膚をえぐられていく激痛が
重なる
私は熱のつらさで感覚が 多少麻痺していたであっただろう
それでもなお
もだえるような痛みを感じるくらいに
ラトは私に深い傷をつけた
ラト
ラト
脈打つ痛みと血の滴る感覚は
耳元で響く彼の声でかき消された
主
握っていた片方の手が
指を絡めるように繋ぎなおされ
ラト
ラト
主
耳元に優しい悪魔の囁きが
心地よく響く
ラト
ラト
ラト
ラト
火照る体に
熟れた果実のような
甘い甘い
ラトの声が染みていく
主
ラト
泣かないでよ
鬱陶しい
主
ラト
本当に醜いわね
その顔
主
主
ラト
近寄らないで
ラト
汚らわしい
ラト
なんであんたなんか…
ラト
主
溢れた涙が
新しい傷に染みた
主
主
主
慣れない優しさは
とても甘美で
主
とても痛くて
主
もう手放すことなんて
ラト
できるわけがない
ラト
ラト
天使のような微笑みを浮かべる悪魔は
ラト
私の血に染まった手で
自分の左頬を指さした
ラト
ラト
私はいつのまにか
苦しさも悲しさもつらさも
何も感じなくなっていた
主
何も考えず
ただひたすらに
赤い指が導く
白くて少し冷たくてやわらかい
愛しい愛しいあなたの頬に
ラト
ありったけの力を込めて
爪をたてた
主
そのまま
主
勢いよく肌をすべった
ラト
ラト
白い頬に赤い血はよく映えた
主
主
主
母が私を拒んだ跡は
愛しい人とお揃いの
消えない傷になった