出張最終日
地方支社との契約プレゼンが終了し
プロジェクト契約が結ばれる
会議室 午後3時
長テーブルの向こう側
プレゼン資料を前に
支店長の橋田さんをはじめとする役員達が
何度も頷いていた
橋田
橋田
橋田
二口
二口さんが頭を下げ
隣で○○も一緒に一礼をした
橋田
橋田
橋田
○○
○○
○○
○○は静かにそう返した
その一言に二口は横目で彼女をみた
橋田
橋田
拍手が起こり
契約書と手土産が交わされていく
○○は誰にも気づかれないように
小さくため息をついた
会社を後にしたのは夕方の6時半だった
橋田
橋田
と支店長の橋田さんは言った
橋田
橋田
橋田
橋田
二口
橋田
橋田
不審者…か
橋田
○○
○○と二口は頭を下げる
ホテルへ向かう途中
二口
やっと終わった…
芦屋は俺の一歩後ろを歩いている
二口
返答はなかった
二口
後ろを振り返ると
気がつけば芦屋の姿は無かった
いや…は?
なんでいねぇの
通りを振り返って辺りを見渡す
道は静かなはずなのに
どこかざわついた空気があった
二口
二口
二口は足早に
人通りの無いエリアへと引き返した
その頃○○は
○○
繁華街の入口で
じっと人波を見つめていた
スーツ姿の男、学生カップル
買い物帰りの主婦
ざわめきの中彼女の目は
常に何かを観察していた
無意識に。
習性のように
癖だった
スパイとして染み付いた自動反応のような
なんだ…平和じゃん
その時ふと視線に入ったのは
「地元牛乳使用のとろけるプリン」
○○
その瞬間だけ
彼女の顔に緩い笑みが零れた
○○
○○
○○
○○
買ったプリンを丁寧に持ち
満足そうに歩き出した時
二口
○○
ガシッと後ろから手を掴まれた
驚いて振り返ると
そこに立っていたのは
息を切らした二口だった
二口
二口
二口
○○
○○
○○の顔は完全なるキョトン顔だった
まさか自分が襲われるだなんて
1ミリも考えてない○○は
なんで息を切らしているか分からなかった
○○
○○
私がそういうと
二口はしゃがみこみ髪をかき上げた
二口
二口
二口
そういった彼の顔は
少しだけ笑っていた
○○
○○
二口
二口
二口
言葉は呆れ口調
けれどその声にはほんの少し
安心の響きがあった
○○は申し訳なさそうに少しだけ笑った
○○
○○
二口
二口
○○
○○は急いでプリンの紙袋を後ろに引いた
○○
○○
二口
2人の歩幅が
少しずつ揃い始める
その様子を
少し離れた建物の上から見下ろしていた影が
2つ
アイは横で双眼鏡で下を覗いていた
アイ
アイは興奮したまま柵に飛び乗る
ジェイ
アイ
アイ
アイ
アイ
アイ
アイ
ジェイ
エルとは偶然出張先が一緒だった
アイにそれを言うと集中しないだろうから
任務が終わった今2人を探していた
アイ
興奮気味に前に出ようとする
アイ
アイ
ジェイ
ジェイ
ジェイが腕を引いて止める
アイ
アイ
ジェイ
ジェイ
下の道
プリンを持つエル
横でそんなエルの手首を
掴むようにしながら言葉を交わすあの男
アイ
アイ
アイ
ジェイ
ジェイは目を細めて
少しだけ唇を噛んだ
アイ
アイ
アイ
さすがのアイでもエルの異変に気づいていた
ジェイ
アイ
ジェイ
ジェイ
夜風が2人の服の裾を揺らした
週明け
東京の町はいつもの喧騒を取り戻していた
○○は会社の資料室で無意識に
深呼吸をしていた
○○
今朝は初めて少しだけ寝坊をした
だからろくに朝ごはんは食べれられず
プリン味のプロテインバーをかじってきた
…切り替え
もう出張先じゃない
そんなことを考えながら
資料を整理していると
二口
後ろに二口堅治が立っていた
○○
会社であっちから話しかけてきたのは
これが初めてだった
二口
二口
○○
○○
二口
二口
○○
○○
二口
二口
○○
○○
そう言って先に歩いて出てく姿に
私は口元を緩めた
○○
小さな溜息をつき
私は資料の整理を進めた
人工的な光が
冷たい部屋に拡がった
アイとジェイ
2人は無人のモニタールームに腰を下ろした
目の前のスクリーンには
プリンを片手に笑う“エル”と
隣で眉を下げる“二口堅治”だった
スクリーン上で見る2人は
普通の関係、そのものだった
アイ
アイ
アイ
アイ
アイ
ジェイ
ゴーグルを回しながらジェイはため息を着いた
ジェイ
アイ
アイ
ジェイ
アイはわかりやすく落ち込んだ
ジェイ
ジェイ
ジェイ
ジェイ
アイ
アイ
アイ
ジェイ
ジェイ
その時だった
背後から低く、重たい声が響く
X
X
2人は反射的に振り向き
そのまま立ち上がった
そこに居たのは“X”
黒の手袋をした指先を
机をトンと置いた
アイ
アイ
アイ
ジェイ
ジェイ
X
ジェイ
X
X
空気がピタリと止まった
X
X
X
X
X
X
X
ジェイは下唇を噛んだ
Xは静かに背後のモニターを見上げた
そこには屈託なくプリンを見せる
エル…
いや、
○○がいた
X
X
X
X
アイ
X
X
X
X
アイ
X
X
X
X
しんと静まりかえるモニタールーム
Xは淡々と、扉に背を向けながら
最後に言い放った
X
X
X
X