どのくらいの時間が経っただろう
手術室前でひたすら
祈るのみだった
凛
奏多、、、
私達結婚したんだよ
凛
今日は結婚1日目だよ
凛
新婚さんだよ!
なんでこんな、、、
広瀬康太
おい!大丈夫かよ!
おい!!!凛さん!!!
凛
え!広瀬君!
広瀬康太
奏多からメールが入ってた
服を届けに来た時に
凛さんを連れて帰ってって
広瀬康太
来てみたらこういうことか
凛
もう!何でいつも奏多は
大切なことは何も
私に言ってくれない!
広瀬康太
それからもうひとつ
凛ちゃんをよろしく、と
凛
何よ!
奏多はいつも
かっこつけちゃって
凛
私は、私は
3年も帰ってこない
婚約者を待っていた
だから、手術の終わりも
必ず待つ!!!
凛
だけど何でだろう
あの3年間よりも
もっとずっと長く感じる
広瀬康太
なぁ凛さん
少しいいかな
凛
なに??
広瀬康太
凛さんは奏多のことを
大事な話はしてくれない
私は奏多のこと何も知らない
って言うよね
広瀬康太
でも凛さんは誰よりも
奏多のことを知ってると
俺は思うんだ
広瀬康太
奏多は元々口数が
多い方じゃない
それに自分を外に出すのが
とても苦手な人だ
広瀬康太
そんな奏多を
奏多のことを君はいつも
少しの言動で
見抜いてしまう
広瀬康太
俺にはそれが
とても羨ましかった
広瀬康太
幼馴染みの俺以上に
奏多のことを知ってる君が
広瀬康太
それは10年という月日ではなく奏多と君がそれだけお互いにとって必要な存在だということだと思う
広瀬康太
だから俺は
2人を心から応援できたんだ
凛
ありがとう。
私そんなに奏多のこと
知れてたんだね
広瀬康太
ああ。
それから奏多が大切なこと
話してくれないと言うが
広瀬康太
彼は立派な警察官だ
それに警察の中だと
超エリートと言われる
部署にいるらしい
広瀬康太
君に何も話さないのは
君のことを信用していないからじゃない。君のことを守るためだよ。
知れば君にも危害が及ぶ。
奏多はそう考えてたんじゃないかな
凛
それじゃあ奏多が
わたしに何も言わなかったのは
ノートに残していたのは
広瀬康太
そう!
君を守るため!
凛
そん、な、、、
広瀬康太
君は奏多の人生を変えた
今までもそしてこれからも
広瀬康太
だからこそ俺は今から君のために最後の後悔をしようと思う
凛
最後の後悔??
広瀬康太
うん。
今から届かない気持ちを伝える!ありったけの「好き」の気持ち。
広瀬康太
きっと君は断るだろう
それでいい、いや
それがいいんだ!
広瀬康太
だから今
伝えようと思う。
凛
はい。
広瀬康太
立花凛さん
君が入職した時から
君のことが大好きだった
広瀬康太
一目惚れなんて初めてで
それまで遊び歩いてた俺には
どうすれば良いか
分からなかった
広瀬康太
小学生みたいだったよな
からかったりして(笑)
凛
ほんとだよ!
ご飯大盛りとかね(笑)
広瀬康太
そして君の彼氏が奏多
だと知った時
俺は正々堂々君を
奪ってしまおうと
思うこともあった
広瀬康太
だけどさっきも言った通り
君と奏多との間には
とても強い絆があることに
すぐに気がついた
広瀬康太
それは俺すらも
みじんも入れないようなね
広瀬康太
そんな時奏多が
婚約すると聞いた。
広瀬康太
その時に思ったね。
心から幸せになって欲しいと
広瀬康太
こんな気持ちは初めてだった
今まで落とせない女の子は
いなかった俺にとって
凛
ちょっと!!!(笑)
広瀬康太
ふふっ
冗談は置いておいて
心から幸せになって欲しい
なんて自分の好きな人に
心から思う人なんて
そんな偽善者、俺は
いないと思うんだ
広瀬康太
だけど君達は違った。
心からそう思えたんだ
広瀬康太
でもそれは奏多と君
だったから
広瀬康太
もし奏多が君を
手放してしまうとしたら
それは話が違う
広瀬康太
だから
立花凛さん
大好きです。
必ず幸せにします!
付き合ってください
凛
凛
広瀬君、ありがとう
凛
広瀬君が私のことを
大切に想って
くれていることは
奏多のノートで
初めて知った
凛
今考えれば
私はあなたに
とても失礼な態度ばかり
だったんじゃないかな
広瀬康太
ほんとだよ!(笑)
何度も失恋したよ(笑)
凛
ははっ!
そうやっていつもからかって笑わせてくれているよね
凛
だけど、私は
奏多を愛してる
奏多を待っている
凛
私にとってあなたは
大事な同僚のひとりだよ
凛
あなたが奏多と私に
幸せになって欲しいと
思ってくれたように
私もあなたに
幸せになって欲しいと
心からそう思う
凛
本当にありがとう!
だけど
ごめんなさい
広瀬康太
うん!ありがとう
分かってても
やっぱり辛いな
広瀬康太
俺からもうひとつ
君に謝らないといけないことがある
広瀬康太
円香さんと君の家に
行った時
本当は君が円香さんに
奏多のことを話すのを
知ってたんだ
広瀬康太
あの定食屋の亭主から
話は聞いていたからね
凛
あ!そっか
広瀬康太
だからそれを止めるために
俺は家に行った
広瀬康太
その時君が寝てしまって
凛
あ!もうそれ以上は
何も言わなくていい
凛
大丈夫、大丈夫だから
広瀬康太
そうか。ごめん
だけどそれは
意地悪なものでも
なぐさめのものでもなく
ただただ優しい
とても暖かい
最初で最後のキスだった
凛
そのごめんは
奏多に言ってあげて
凛
私はあの時のことを
心にしまって
そっと置いておくから
広瀬康太
奏多は知ってるよ
そのことを話した時
奏多は弱々しい拳で
俺の胸をトンと叩いた
広瀬康太
ただそれだけだった
広瀬康太
力はなかったけど
その重みを俺は
一生忘れないだろう
凛
そっか
広瀬康太
よし!
君のための
最後の後悔をした
広瀬康太
笑顔で奏多を待とうか
凛
うん!ありがとう!
それから2日間
私達は手術室の前で交代で寝たり
これまでのことを話したりしながら