テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
217
コメント
1件
体育館の空気が、いつもより少しだけ鋭い
床を踏む音 ボールが弾く音 声と声がぶつかるように響いている
——今日は、音駒との練習試合
女子バレー部も、男子バレー部も 同じ体育館で、それぞれのコートに立っている
港 夏葉
自分に言い聞かせる なのに 視界の端に、どうしても入ってくる
ネットの向こう側 コートに立つその人
木葉先輩
昨日までとは違う 少しだけ鋭い目 でも、どこか余裕のある立ち方 ——あの人の、“試合中”
港 夏葉
視線を切る こっちも試合中だ リベロとして、やることは一つ
拾って、繋ぐ ——その先まで考えて
ーーーーー
ラリーが続く 相手のスパイクは重い、速い、低い
床すれすれに滑り込む 腕に当てる でも少し浮いた
——高い セッターが無理にトスを上げる スパイカーは打ち切れない
相手コートに返る、弱いボール
女バレ
女バレ
声は飛ぶ でも分かってる ——“繋いだ”だけ
“活かせてない” 歯を食いしばる
その時 反対側のコートから、歓声が上がった 思わず、視線が動く 男子の試合
レシーブが乱れる ボールが、ネット際に低く流れる ——苦しい
誰もがそう思う体勢 その中で 一人、踏み込んだ影 木葉先輩
低い姿勢のまま、無理やり体勢を作る トスは完璧じゃない。 少しズレてる
それでも繋げる…
そのあとも、踏み切る 跳ぶ ブロックが二枚、目の前に上がる
普通なら、打ち切れない ——なのに 空中で、ほんの一瞬だけ“間”があった
腕の振りが変わる ドンッ!! 鋭い音。 ボールはブロックの指先をかすめて、コートの奥へ突き刺さった
男バレ
歓声が爆発する ——今の 乱れた流れを、強引に“点”に変えた
繋いだだけじゃない 決めた
港 夏葉
目が離せなかった。 派手じゃない。 でも。 確実に、流れを持っていく一撃
——この人。 “支えるだけ”じゃない。 “決める人”でもある
女バレ
声に引き戻される
港 夏葉
すぐに構える ボールが来る ——今度は
腕に当てた瞬間、考える どこに上げるか どう繋げる
セッターが動きやすい位置へ その先、スパイカーが決められる形へ
ボールは、弧を描いて上がる
女バレ
今度は違う “繋がった”だけじゃない ——“活きた” 胸の奥が、熱くなる
ーーーーーー
試合終了 結果は——負け あと一歩届かなかった
港 夏葉
港 夏葉
頭を下げる 悔しさが、喉の奥に引っかかる
ーーーー
体育館の外。 空気が、少しだけひんやりしていた
一人、座り込む 膝を抱える
港 夏葉
港 夏葉
考えれば考えるほど、足りなさが見える
木葉 秋紀
ふいに、声 顔を上げる そこには 木葉先輩
さっきまでコートにいた人 額に残る汗 少し乱れた呼吸
港 夏葉
そっけなく返す 木葉先輩はそのまま、隣に座った 自然に距離が、近い
木葉 秋紀
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
木葉 秋紀
港 夏葉
港 夏葉
木葉 秋紀
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
——変わった その言葉が、胸に落ちる
港 夏葉
今度はちゃんと聞く 木葉は少しだけ肩をすくめた
木葉 秋紀
木葉 秋紀
港 夏葉
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
少しだけ、真面目な声になる ——さっきのスパイク
木葉 秋紀
木葉 秋紀
一瞬、言葉が詰まる 私は—— 繋ぐことしか、出来なかった、 次に活きる行動が一度しか出来なかった
木葉 秋紀
黙る私に、木葉はふっと笑う 軽い言い方 でも
木葉 秋紀
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
ドクン、と心臓が鳴る 最初に言われた言葉。 あの時と同じ感じ
何も言えない。 でも。 視線は、逸らせなかった
港 夏葉
港 夏葉
木葉 秋紀
港 夏葉
一瞬 木葉先輩が、少しだけ驚いた顔をした でもすぐに、笑う
木葉 秋紀
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
港 夏葉
少し、距離が近づく 心臓が、嫌な音を立てる
木葉 秋紀
木葉 秋紀
木葉 秋紀
木葉 秋紀
目が、逸らせない その言葉が 胸の奥に、まっすぐ刺さる
港 夏葉
やっと出た声は、小さかった
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
——なんとなく その言い方が、ずるい 軽いのに、全部見透かされてるみたいで
港 夏葉
言葉が出ない でも 胸の奥が、じんわり熱い
港 夏葉
港 夏葉
木葉 秋紀
木葉 秋紀
——ちゃんと見てる その一言で また、心臓が鳴る
“繋ぐ人”として まだ未完成の自分と “支えながら、決める人” の先輩
その背中が 少しだけ、遠くて でも 確実に、目標になっていた
そして—— ただの先輩じゃないってことも もう、心の奥底では気づき始めていた
ーーーーーー
next↪︎200♡