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僕
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第一章 絶対にあきらめるな
おぼれる! 目覚めたとき、ぼくは水の中にいた。
深い水の中だ。
冷たい。
暗い。
最初に頭に浮かんだの はそのふたつだ。
どっちが水面だ? とにかく手足をばたつかせて、 水の中に出ようとした。
体を捻って向きを変えると、 見えた。
光だ。
周りが徐々に明るくなっていく。
光っているのは太陽だ。
やっぱりあっちが水面だ。
でも、あの太陽……どうして四角いんだ? いや、きっと目の錯覚だ。
それか水の屈折でそう 見ているんだろう。
そんなことよりも、 あとどれくらいで息が持つ? 早く水の上に出なければ。
泳ぐんだ! 肺が風船みたいにふくらみ、 唇の隙間からぶくぶくと空気がもれる。
遠くに見える光を目指し、 僕は閉じ込められた獣みたいに 手足をばたばたさせた。
見えてきたぞ。
必死で水をかくたび、 ゆれる水面がちかづいてくる。
あと少しなのに、 まだ届かない。
体が痛くて肺が焼けそうだ。
泳げ!
泳ぐんだ!
パシっ!
突然、痛みがつま先から 眼球へと突き抜け、 ぼくは身をよじった。
開いた口から声にならない 叫び声がほとばしる。
ぼくは空気を求めて光のほうへ 必死で手を伸ばした。
水面を割って、 ひんやりとしたきれいな空気 の中へ顔を突き入れる。
ぼくは激しく咳き込み、 ぜーぜー息を切らし、 それから笑い声をあげた。
息ができるぞ。
しばらくこのひとときを 楽しみ、目をつぶって太陽の ぬくもりを顔に浴びた。
だが、目を開けたとき、 ぼくは自分の目を疑った。
やっぱり太陽が "四角"だ!
ぼくは強くまばたきした。
それに雲もだぞ?
綿菓子みたいにふかふかした 雲ではなく、 空に浮かんでるのは長方形の 発砲スチロールみたいな形をしたものだ。
自分の目がおかしいんだと ぼくは思った。
ボートから落ちたときに頭を ぶつけて、まだ意識 がもうろうとしているんだ。
いや、そもそもボートから 落ちたりしたか?
そんな覚えはない。
それどころか何ひとつ 覚えてない。
どうやってここへ来たのか、 "ここ"がどこなのかさえだ。
僕
ぼくは叫んだ。
船か飛行機、 それかせめてわずかでも 陸地が見えないかと 首がめぐらせた。
僕
帰ってくるのは沈黙だけだ。
見えるのは海と空だけだった。
ここにはもうぼくしかいない。
というわけでもなかった。
リュウリ🐉。
リュウリ🐉。
リュウリ🐉。
リュウリ🐉。