セイヤ
くじ引き?
次に俺達がやらされるのは、運試しってことなのか。
これまでと同じように、ハカセに意見を求めようとしてセイヤは気づく。
班編成の変更により、机の位置が変わり、ハカセとは離れてしまったことを。
ツヨシ
運試しだろうがなんだろうが、俺達の班にはセイヤがいる。心配いらない。
セイヤ
よしてくれ。
そんな大したことはしていないから。
マドカ
でも、現に私達の班は誰一人死んでいないわ。
マドカ
セイヤ、もうちょっと自信持ちなさいよ。
ヒメ
ふふふっ。
セイヤ君がいれば安心だね。
マドカ
あんた、仲間を裏切って自分が生き延びたってこと忘れたの?
ヒメ
あれは、カシン君が勝手にやったことだしぃ。
ヒメ
私、裏切ってないもん。
マドカ
セイヤ、ツヨシ。
こんな女にほだされるんじゃないわよ。
ヒメ
えー、なんかマドカ怖い。
まぁ、陰で人の悪口言うくらい陰湿な女だもんね。
ヒメ
今さらになって、かわい子ぶるのも無理だもんねぇ。
セイヤ
ちょっと落ち着いてくれ。
ここで喧嘩してなんになる?
マドカ
ヒメは、か弱い女アピールできるもんねぇ。
このチャンスをヒメが逃すわけないじゃない。
ヒメ
ちょっとセイヤ君。
なにか言ってやってよぉ。
この子、性格悪すぎ。
マドカ
はぁ?
あんたにだけは言われたくないんだけど。
セイヤ
(最悪だ。この2人の相性、かなり悪いぞ)
班編成が変わったことにより、それぞれの班で多少なりとも混乱が生じているようだった。
セイヤ
ヨウタのところは、ナンバーズ2人にカシンか。
セイヤ
さすがのヨウタでもやりにくそうだな。
コミニュケーション能力も高いのだが、やはり人間には相性というものがあるのだろう。
セイヤ
ハカセ達の班はどうだ?
一方、ハカセの班はハカセを中心にして、なにやら話し合いを進めているようだった。
カナとスミオは元々同じ班だったし、それぞれの班から2人ずつ選出されているハカセの班が、もしかするともっともバランスが取れているのかもしれない。
セイヤ
ハカセのところはアカリがフォローしてるから、比較的まとまりはありそうだな。
マドカ
なに?
セイヤ、私じゃ不満?
セイヤ
いや、そういうわけじゃないんだけど、ハカセのところはまとまりがあるなって思って。
マドカ
あら、うちの班だって、どこかの誰かさんを除けば、協調性もあっていいと思うけど。
ヒメ
えー、その誰かさんって誰?
もしかしてヒメのこと?
ヒメ
やば……。
だとしたら、この女かなり陰湿なんだけど。
ツヨシ
おい、喧嘩はやめろって。
セイヤ
(こういうところだよ。うちの班がまとまってないと思うのは)
セイヤ
(それはともかく、もっと心配なのは……シズカの班かな)
そんなことを考えつつ、シズカ達のほうへと視線をやる。
シズカの班にいるのは。ナンバーズの中でも発言権がないイメージの強いシキ。それとツヨシと同じ班だったタツヤにカズヤ。
この班の弱点は、ここまでの決断などを全て他人任せにしてきた印象があること。
セイヤ
シズカ……大丈夫かな?
マドカ
あー、あそこは主体性のない班だもんねぇ。
マドカ
タツヤとカズヤは文化祭の話し合いとかにも一切参加しないで寝てるタイプだし。
マドカ
シキもナンバーズに混ざってるだけで、腰巾着のイメージが強い。
マドカ
シズカなんて言うまでもない。
マドカ
あの班、かなりやばいかもね。
セイヤ
なんにせよ、これから行われる課題次第になるとは思うけど。
まるでセイヤ達の会話を聞いていたかのごとく、担任が手を叩き、周囲からの注目を集めた。
志賀先生
よーし、今から説明するぞ。
それにくわえて担任は教壇のしたから小さな箱らしきものを取り出し、それを開けて周囲に見せる。
志賀先生
これは、お前達の命運を握る抽選玉だ。全部で100個ある。
担任が見せた箱の中には、白くて小さなボール玉が詰まっていた。
志賀先生
で、これを抽選箱に入れる。
箱を抽選箱の上でひっくり返すと、音を立てて抽選玉が抽選箱の中に流れ落ちる。
続いて、担任はポケットからなにかを取り出し、それをみんなに見せるように掲げた。
志賀先生
この黒い玉が当たりだ。
志賀先生
これからお前達には1人ずつ抽選箱から玉を引いてもらう。
志賀先生
この時点で、なんとなく察してくれただろうが、白が外れ。黒が当たりだ。
志賀先生
4人の4班編成だから、全員で16人。
順番に抽選箱から引いてもらう。引いた外れは、抽選箱に戻さなくていい。
志賀先生
全員が引いたら、また最初に戻ってくじを引く。
志賀先生
当たりを引いた班は……生き残りを約束しよう。
志賀先生
それ以外の班は――もう説明するまでもないな。
志賀先生
ちなみに、くじを引けるのは1人につき3回まで。
志賀先生
全員が引いたら、また初めから――という流れを3回繰り返した時点で、当たりを引いた者がいなくても終了とさせてもらう。
ヨウタ
もし、それまでに当たりを引けなかったら?
志賀先生
ヨウタ、わざわざ言わせるか?
その時は全員……分かるよな?
クラスがざわめくが、しかし人数が減ってしまったからか、それともみんな慣れてしまったのか。
セイヤ
3周で誰も当たりを引けなかったら、文字通り終了ってことか。
志賀先生
ちなみにだが、それぞれの班に1度ずつだけ、俺への質問権を与える。
志賀先生
どのタイミングでもいいから、手を挙げて発言してくれればいい。
志賀先生
ただし、俺はそれに対して正直に答えるとは限らない。場合によっては嘘の返答をするかもしれないな。
志賀先生
それでも、状況を打開することはできるかもしれない。
志賀先生
順番については、そっちで話し合って決めてくれ。
志賀先生
ただし、順番は班単位で決めてくれよ。
班の中での細かい順番は、各班で決めてもらっていいから。
志賀先生
とにかく、引く順番がバラバラにならなけらばいい。あんまりバラバラになられると、どさくさに紛れて3回以上引くやつが出てきそうだしな。
ただそれだけだというのに、どうにもセイヤは腑に落ちなかった。
セイヤ
(この胸騒ぎはなんだろう。なにか嫌な予感がする)
セイヤ
(でもやるしかない。こんなところで死ぬわけにはいかないんだ)