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幼い頃から、俺は優秀だった。 上級妖怪の名に恥じぬほどの実力を持ち合わせていた。
周りからは『天才』と持て囃され、様々な期待を寄せられるようになっていた。
「お前なら次期当主に相応しい」 「お前には期待しているんだ」
そう言われて育ってきた俺にとっては、それが普通だった。当たり前の日常。
そんな俺に擦り寄ってくる奴は皆、金目当てのやつか、媚を売る奴らばかり。
忌々しかったし、相手にするのが面倒だった。
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送られてきた山のような見合い写真にうんざりする。こんなの、読んでも読まなくても同じだろう。
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kyo
kyo
彼は金豚きょー。使用人で、小さい頃から世話になっている。 俺の数少ない理解者でもあるので、気兼ねなく話せる相手でもある。
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kyo
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結婚なんてするつもりは無い。俺は一生独り身でも構わないし、愛する人は自分で探すって決めている。だから、誰かを愛するなんて想像もつかない。
けどきょーさんが言ってたように、跡継ぎは作らないといけないし、いつまでも自由でいられるわけじゃない。
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kyo
kyo
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kyo
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きょーさんは俺が渡した大量の見合い写真を持って部屋を出た
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少なくとも俺は、そんな相手なんていないと思ってるし、これから先も現れないと思っている。
そんな確証の無いものを追い求めるのは時間の無駄だ。
もし仮にそんな人がいるとしたら、それは俺にとって特別な存在になるのかもしれないが、俺にはまだその感覚が分からない。
そもそも自分が人を愛せるのかさえも疑問に思うくらいだ。
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普通はこんな簡単に外出出来ないのだが、誰にも見つからなければ問題はないだろう。
俺は窓から外に出て、脱走を開始した。
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爽やかな風が頬を優しく撫でて、太陽の光が暖かく包み込んでくれる。とても心地が良い。
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なんて、呑気なことを考えながら歩く。
そういえば、屋敷は今どうなっているんだろうか。俺がいなくなって騒ぎになってたりしないだろうか。
rd
帰宅したらきょーさんやコンちゃん達に怒られそうだなと思いながら、あてもなくブラブラと歩く。
というか俺はちゃんと家まで戻れるんだろうか。けどそこは持ち前の記憶力でどうにかなるだろうと高を括る。
俺の記憶力は、物覚えが良いというレベルを超えていて一度見たものは完璧に記憶できるし、それは写真に撮ったようにハッキリと思い出せる。
…もちろん嫌なことも全て
どんなに凄い能力でも不便な面はあるし、便利過ぎてもあまり良いことばかりでは無い。
むしろ“普通”が羨ましく思うことの方が多いくらいだ
rd
嫌なことばかり考えるのは止めよう。 せっかく散歩しているというのに勿体ない。
そして、10分歩いたときくらいだろうか。木々の間から湖がちらりと見えた。
吸い寄せられるようにそこへ向かう
近づくにつれ、水面がきらきらと光って眩しい。太陽の光が反射して、まるで宝石のように輝いている。
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そこには蝶や小鳥達が自由に飛び回り、湖では透き通った水面が静かに波打っていた。
そして次に目に入ったのは、1人の人間だった。
肌は白くて透明感があって、顔立ちも整っている。 髪は橙色だが、光の反射なのか淡く金色にも見える。
彼はこの綺麗な景色に引けを取らないくらい美しく、とても幻想的な光景だった。
蝶や小鳥と戯れていて、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようだ。
視線に気が付いたのか、彼はこちらを振り向いた。
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俺は彼に近づき、自分の顔の前で人差し指を立て、口に当てる。
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彼はニッコリと微笑んだ。その笑顔は春の陽気のように暖かかった。
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彼は戸惑いながらも、おずおずと口を開く。
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困ったようにしてからふんわりと笑い、名前を呼んだ。その呼び方があまりにも心地良くて、嬉しくて思わず頬が緩んでしまう。
ぺいんとの笑顔を見ると、何故か胸の奥がじんわりと温かくなっていく気がした。こんな感覚は初めてでよくわからない。
rd
恋なんてしたことないけれど、こんなに胸が高鳴るものなのか。 心臓がバクバクして五月蝿い。
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俺の顔を下から覗き込んでくるので、上目遣いになっていた。
しかも少し首を傾げる仕草がとても可愛い
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そう言って蝶を指に止まらせ、俺に見せる。 その無邪気な笑顔を見ていると、また胸が高鳴る。
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それから、いろんな話をして親睦を深めた。時間はあっという間に過ぎていったし、ぺいんとのことをもっと好きになっていった。
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そして俺は名残惜しくも、また会えることを期待して手を振って別れた。
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思わずため息が出る
この短期間でこんなに好きになるなんて思わなかった。会ってまた話がしたい。沢山遊びたいし、色んなとこに行きたい。
あの笑顔を俺だけのものにしたい。独り占めしたい……そんな欲望が芽生えてくる。
rd
屋敷に帰ってきたら、このことをきょーさん達に話したい。っとその前に怒られる方が先かな。
なんて考えながらぺいんととのことを思い出し、帰路を辿った。