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あおい

よーっし、何とか上手いこと抜け出せたね

あおい

で、どこ行く?

美紅

どうしようかなー

美紅

親に連絡行ってると思うから、一旦私は家に帰るよ

美紅

そんで着替えてから合流しよっかな?

美紅

あおいはどうすんの?

あおい

あたし?そうだなー……

あおい

どうせ家に帰ったところで、猿の飼育員やる羽目になるし

あおい

オイオイのフードコートにでも、このまま直行しようかなって

あおい

もう見えてるし

美紅

やばぁ!制服のまま行くのは猛者でしょ!

あおい

えー?別にあの時間帯なんて人いないんだから、別に良くね?

美紅

それもそっか!

美紅

じゃ、また家出たら連絡するよ!

あおい

はいはい、またねー

あおい

チッ

あおい

どいつもこいつも、ジロジロ見てきやがって……

あおい

マジうっぜえ……

ぶつくさと文句を言いながら、あおいは勝手知ったる様子で、ショッピングモールを闊歩(かっぽ)する。

制服姿の女子中学生が1人で歩いていては目立つものだが、関係無い。

今のあおいからすれば、周囲の冷たい視線は『見る目がない大人の視線』でしかないのだから。

人の少ないフードコートの席に座り、紙コップに水だけ入れて、スマホを開く。

そうしてしまえばもう、周りにある全ては、ただの背景に変わり果てる。

あおい

さてと、コメント返信していこっと

あおい

この人の返信はさっき返したから……

あおい

あっ、ご新規さんからコメント来てるじゃん!

あおい

そっち先にしないと、せっかくのフォロワーが消える!

あおい

あおい

これでよし!

あおい

さあて!肝心のフォロワー数は〜?

あおいはすっかり、画面の向こうの数字に――フォロワー数とコメント数に、心を奪われていた。

1時間も待てば、フォロワーの数字は1人、2人くらい増えている。 コメントに至っては、返信がマメなせいもあってか、最低でも10件ほど向けられる。

大した苦労も努力もせず、あっという間に望む反応を得られた事が、あおいからすれば面白くて仕方がなかった。

あおい

ふふ、ふっふふふ

あおい

やばぁ、フォロワー数が100超えたんだけど……

あおい

アカウント作ったの、今日なのに!

あおい

やっばあ!あはは!!

あおい

この調子で行けば、5桁超えるのも時間の問題じゃない!?

あおい

今のあいつのフォロワー数は2万人

あおい

あたしのフォロワー数よりも、めちゃくちゃ多い

あおい

でも!あたしは今まさに、フォロワー爆増中!

あおい

一方のあいつは、更新が遅くなるって言ったからか、フォロワー数は少し減った!

あおい

この勢いでいけば、あいつのフォロワーを超えられる!それは確実!!

あおい

はぁ……早くその日が来ないかな

あおい

一旦セラーノベル閉じよ

あまりにも反応が多いから、通知は切った。 一々反応して見に行ったら、一日中スマホをいじることになる。

アカウントの知名度を上げ、行く行くは本来の自分の投稿物に注目させる。 そのためのなりすましなのだ。これにばかり力を入れてはいられない。

あおいがなりたいのは、望岡きなこ本人ではなく、望岡きなこと同等の影響力を持った自分のアカウントを構築することなのだから。

あおい

あとはあたしが、あいつを超えられるような作品を生み出せばいいだけ

あおい

今まではちょっと本気じゃなかったけど、あたしが本気出して作れば、あいつなんてすぐに超えられる!

あおい

だって、同い歳のあいつにできて、あたしにできないことなんて無いはずだし!

あおい

いい踏み台になってよね、望岡きなこ!

こうして見れば、あおいのなりすまし計画は、快調に進みつつある。

アカウントを作ってすぐだと言うのに、フォロワーは増え、コメントでも多くの人に構ってもらい……あおいの自己肯定感は満たされていた。

しかし、それでもあおいには不満があった。

あおいの評価が高いのは、セラーノベル内でだけなのだ。

だけでしか、ないのだ。

あおい

まあね?評価が限られてるのは、仕方ないなって思ってるんだよ

あおい

セラーノベルでしかアカウントを作ってないしね

あおい

でもなあー、セラーノベルだけで有名になっても、なんというか……

あおい

『有名』って、言えない気がする

あおい

だってセラーノベル自体、知名度が高いんだか低いんだか分からないし

あおい

あたしはもっと、色んな人に知ってほしいんだけどな

あおい

なら、アカウントを別のサイトにも増やす?

あおい

うーん……2つのサイトを行き来するってなると、相当時間食うんだよな……

あおい

それに、あたしにはXYZにアカウントがあるんだよね

あおい

あたしの、本来のアカウントがさ

あおい

まあでも、あっちのは動かす予定ないけど、でも

あおい

考え無しにアカウントを作ると、今度は管理が……

あおい

あおい

おっ

あおい

おーい、美紅!こっちこっち!

美紅

あおちゃんお待たせー

美紅

って、また水1杯でしのいでんの?

美紅

お腹チャポチャポにならない?

あおい

あっはは!なんないって!

あおい

それに、別に注文しないといちゃいけません、って法律で決まってなんかないし?

美紅

言うねー

美紅

で、何してたの?

あおい

あおい

新しいサイトにアカウント作ったから、初投稿!

美紅

おー、どれどれ?どんなの描いた――

美紅

美紅

ん?

画面を眼前に突き出され、美紅は意図的に瞬きをする。

美紅

これ……あおいの絵、だよね?本当に?

美紅

絵柄変わった?

あおい

ちょっとね!

あおい

折角の別サイトデビューだから、気合い入れたんだよね!

美紅

ふーん?

美紅

あおい

それよりどうこれ!
あたし史上最高傑作なんだけど!

美紅

え?あ、うん、そうだね

美紅

とってもエモい絵だと思う、よ?

あおい

でしょー!やっぱりそう思う?

美紅

美紅

もちろんだよ……!

あおい

フォロワーの反応もすごかったし!

あおい

あたしでも上手くできたと思ってんだ!

美紅

うーん、確かにすごく可愛いと思うけどさ

美紅

あおちゃんらしさが……ちょっとないかなぁって

あおい

らしさ?

あおい

あたしらしくないって、どういう意味?

美紅

えっ!?ええと、そうだなあ

美紅

なんかこう、色味に優しさが無くなったって言ったらいい?

美紅

前のあおちゃんの絵って、ぱーっと明るい色使いだったような……

あおい

ふーん?

美紅

美紅

えっと

美紅

まあでも、今までこういう雰囲気の絵を見てきてなかったから、馴染みがないだけかも

美紅

はは……

美紅

美紅

ごめん、なんか悪口みたいになっちゃった

あおい

いや、いいよ

あおい

ちょっとびっくりはしたけど、悪口とは思ってないし

あおい

だから美紅が謝ることなんて、な〜んもないし!

あおい

まあそういう訳で、今回のはあたし的には満足って感じかな!

あおい

でもそっかー、あたしらしさは無いかー

あおい

あおい

ねえ、美紅

あおい

美紅は今のあたしの絵と、前のあたしの絵、どっちが好き?

美紅

どっちも好きだけど……私は前のやつの方が好みかなあ

美紅

元気もらえるような気がして好きだよ

あおい

あおい

そっか

美紅

あおちゃん、どうしたの?

美紅

なんか元気なさげじゃん、なんかあった?

あおい

そうなんだよ、聞いてよ!ここに来る時にさあ!!

スマホを机の隅に置いて、あおいはいつもの調子で喋り出す。

美紅の様子がいつもと違う事に、気付かないまま。

翌日。

あおい母

いい!今日こそちゃんと学校に行くのよ!

あおい母

それで、ちゃんと最後まで授業を受けてから帰ること!

あおい母

どんなに早く帰ってきても、扉は開けませんからね!

あおい

知らねーよそんなもん

あおい

それより、なんでこんな時間から学校行かせようとするわけ?

あおい

しかもこの歳になって、親子で登校とかクソダサいんだけど

あおい

だっる

あおい母

そうでもしないと、あんた、サボるでしょ

あおい母

だから貴方が校内に入るまで、私が監視します

あおい母

言っておくけど、途中で早退とかも無しだからね!

あおい母

ほんっと、昨日は恥ずかしかったんだから!

あおい母

どんな教育してるのって思われたんじゃないかしら……ああ、やだやだ

あおい

ホント、世間体しか気にしねーなこいつ

あおい母

いいからもう行きなさい!

あおい

はいはい、行ってきまーす

あおい

あおい

あいつ、校門超えて中まで入って来るとか、頭おかしいだろ……

そうしてあおいは、ダラダラとした足取りで校舎の中に入る。

既に爽やかとは言えなくなった朝の空気に、あおいは欠伸を噛み殺した。

男子A

お、立花じゃん

あおい

はよぉ

男子A

まだ8時にもなってねーのに、めっずらし!部活……じゃねーよな

あおい

うちの母親がこの時間から行けー行けーって言うから、仕方なくだよ

あおい

ふぁ〜あ、お陰でもう、眠くて眠くて

男子A

え、お前どした?寝不足か?

男子A

寝落ちコース一直線じゃーん?

あおい

別に良くね……

男子A

アレやってたんだろ、配信みたいなやつ!

男子A

それで夜遅くなった!違うか!?

あおい

ぜんっぜん違うし

あおい

あおい

あたしがやってたのは、これ

そうしてスマホを見せたあおいだが、すぐにその手に汗が滲み始めた。

適当に話をする程度のクラスメイトに、創作活動を知られた。しかも、他ならぬ自分の過失で。

今引っ込めたら、疚(やま)しい事があると自白しているようなものだ。迂闊(うかつ)に手を引き戻せない。

迫る身バレの恐怖に、あおいは恐る恐る彼の表情を凝視(ぎょうし)した。

男子A

え、これお前が描いたの?

あおい

ま、まあ。そうだけど?

嘘である。

あおいが表示しているのは、望岡きなこのなりすましアカウントだ。

お願いだから、『色々』とバレませんように。

あおいはただひたすら、そう願う。

男子A

男子A

すっげえ!

男子A

超上手くね!?

あおい

え?

男子A

いやこれ、ほんとめっちゃ上手えって!

男子A

アカウントは確か……きなこだっけ?よっし覚えた!

男子A

いやー、いいもん見た!

男子A

後でセラーノベルだっけ?フォローするわ!

男子A

俺もやってっからさ、そのアプリ!

あおい

あー……ありがとうね

男子A

おう!またな!

ぽかんとするあおいを置いて、体育着姿の彼が下駄箱の前から姿を消す。

まさかその彼が、次の騒動を呼び起こす事になるとは、この時のあおいは思いもよらないでいた。

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