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井川あすみ

あとどれくらい一緒にいられるの?

三村優真

半月くらいかな……

井川あすみ

そんな……

あすみさんの涙は止まることなく溢れ

耳の辺りを伝って枕を濡らした

最終的には当直の看護師さんが枕を交換するほどになり

それでもなお止まらない涙を

優真さんがタオルで拭った

井川あすみ

私ずっと消えたいって思ってた

井川あすみ

お母さんとお兄ちゃんから攻撃されて……

井川あすみ

でもね……

井川あすみ

優真に出会って……

井川あすみ

こんなにも私のことを必要としてくれて……

井川あすみ

愛してくれて嬉しかった……

あすみさんの心に欠けてしまったいびつなピースを

優真さんの歪んだ愛が埋めた

優真さんの存在は彼女にとっての生きる希望

井川あすみ

またあの家に戻ることになった時……

井川あすみ

前みたいに消えたいって思わなかったの……

井川あすみ

私には優真がいてくれるって……

井川あすみ

いつか助けに来てくれるって信じてたから……

井川あすみ

今もそう……

井川あすみ

生きていきたいって思う……

三村優真

あすみ……

井川あすみ

だから……

井川あすみ

そばにいてほしいのに……

長い長い夜

あすみさんは泣き疲れたのか

気がつくと眠っていた

それでも優真さんは彼女の手を握り寄り添い

特別に許可されたこの時間の全てを

彼女のために使いたいと思っているようだった

私が何度か仮眠を取るように促したが

三村優真

今は手錠がないので

三村優真

こうしていた方が安心かなって……

寝る時にいつも使っていた手錠

日中でも二人でいる時は使っていた

最初の頃はトイレに行く時にもつけていたようだが

優真さんが出掛ける時とトイレの時

入浴時には外していたようだ

流石に病院内で使うことはできないため

その代わりにずっと手を握っている

長い長い夜

時々、襲ってくる眠気と戦いながら

二人を見守り続けていたが限界を迎え

当直室を借りて仮眠を取らせてもらうことに

でも二人のことが気になっていた私は三時間で目を覚まし

二人の元へ向かった

時刻は午前3時を過ぎた頃

優真さんはベッドに突っ伏した状態で眠っていた

いつもこのくらいの時間になると

あすみさんは目を覚ましパニックになり

昨日はベッドから転落してしまった

今は優真さんが手を握っているからだろうか

あすみさんは落ち着いた表情で眠っていて

これには看護師さんも驚いていた

それから数時間後

優真さんよりも先にあすみさんが目を覚ました

余程、疲れていたのか優真さんはまだ眠っていたが

その右手はしっかりとあすみさんの左手を握りしめていた

看護師さんが来てバイタルをチェックする際も

その手はずっと握られたまま

あすみさんは眠っている優真さんを見つめていた

井川あすみ

ずっと夢を見てました……

井川あすみ

警察に見つかって……

井川あすみ

あの家に戻ってからずっと……

井川あすみ

優真が助けに来てくれる夢を……

沢田マリカ

あすみさん……

井川あすみ

昨日、優真が会いに来てくれる夢を見たんです

井川あすみ

もしそれが正夢になったら……

あすみさんは深く深呼吸をして

私の方に顔を向ける

井川あすみ

私……

井川あすみ

もう離れたくないなんて言わない

沢田マリカ

え?

井川あすみ

例え離ればなれになっても……

井川あすみ

この気持ちはかわらないから……

決意を込めた彼女の強い眼差しは

昨夜までの泣いていた姿とは違い

とても凛々しく私の目に写っていた

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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