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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

午前7時頃

優真さんがゆっくりと目を開ける

あすみさんは強い決意を口にした後

強い眠気に襲われ再び眠ってしまっていた

優真さんは優しい笑みを彼女に向ける

沢田マリカ

三村さん……

沢田マリカ

実はさっき……

優真さんに彼女の決意を伝える

三村優真

え?

三村優真

あすみが……

三村優真

そんなことを?

本当は自分の言葉で伝えたかったはず

でも彼女は襲い来る強い眠気に耐えることができず

薄れ行く意識の中でなんとか声を出し

必死に私に訴えてきた

井川あすみ

ゆう……ま……が……

井川あすみ

おき……た……ら……

井川あすみ

つ……たえ……

彼女の意識が途絶え

一気にそこが静かになった

聞こえるのは医療機器の音と

行き来する看護師さんの足音

優真さんが目覚めたのは

そこから更に一時間程が経過した頃

三村優真

あすみが……そんなことを?

沢田マリカ

離ればなれになっても……

沢田マリカ

この気持ちは変わらないからって……

彼女の決意を知った優真さんは

握り続けていた彼女の手の甲に口づけをして

祈るように手の甲に額を当てた

三村優真

あすみ……

三村優真

本当にごめん……

悔しさから溢れる涙

でもこれは優真さんが望んでいたこと

頭ではわかっていても

心が追い付いていかないのだろう

それだけ心から彼女のことを愛している

スヤスヤと眠る彼女の顔はとても穏やかで

優真さんを求め泣いていた時とは別人のようだった

沢田マリカ

何かあったら呼んでください

優真さんにそう告げてその場を離れる

二人きりにしてあげたかった

残り少ない二人だけの時間を

邪魔してはいけない気がした

まだ人のいないロビーの一角

椅子に腰かけて時が過ぎるのを待つ

沢田マリカ

梶原さん……何時頃来るのかな……

これまでのことが頭の中を旋回し始めた

あのマンションでの約三ヶ月は

二人にとってとても大切な時間だった

私もそれなりに恋愛の経験はあったが

こんなにも相手のことを想い

誰よりも愛しく求める

こんな愛の形は見たことも聞いたこともなかった

優真さんの歪んだ愛を受け止め

二人は永遠を誓い合った

しかも最初のきっかけは拉致と言う極めて特殊なもので

普通の男女なら起こるはずのないことが

愛を求める二人に起きた

究極の愛の形と言っても過言ではない

そんな二人の最後が

こんな形になってしまうなんて……

沢田マリカ

辛すぎる……

そこから更に時が過ぎ

気がつけば外来の時間になっていた

徐々に増えていく人の中に

梶原さんの姿があった

梶原智香

沢田!

沢田マリカ

梶原さん……

梶原智香

どうした?

梶原智香

大丈夫?

軽く経緯を説明すると

梶原さんは黙って頷いて優真さんの元へと向かう

あすみさんは目覚めていて

涙ながらに優真さんに語りかけていた

井川あすみ

離れても……

井川あすみ

優真のこと愛してるから……

三村優真

あすみ……

愛を誓う二人の姿に

私も涙が止まらなくなっていた

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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