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渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

113 - 判決、井川かすみ、井川悟志2

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2021年09月16日

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海辺裁判官

主文

海辺裁判官

被告人を懲役二十二年六月に処する

井川かすみさんに懲役二十二年と半年の実刑判決が言い渡された

あすみさんと静(じん)さんに対する身体的虐待

静さんに対して行った虐待の強要

保護責任者遺棄罪、不保護罪など

それら全てが併合罪加重となり

反省の色が全く見えないと言う理由も重なり

情状酌量の余地はなしと判断されてしまった

かすみさんは静かに

井川かすみ

わかりました……

と呟き

最後まで謝罪の言葉を口にすることはなかった

そしてそれらの虐待を放置し

見て見ぬふりを続けていた井川悟志さんにも

不作為の幇助に該当するとして

懲役二十二年と半年と言う

かすみさんと全く同じ判決が言い渡された

何もしていなくても

これだけの重い罪になる

悟志さんがほんの少しでも父親としての心を持っていたら

かすみさんの暴挙を止めることができていたら

何かが変わっていたかもしれない

でも悟志さんはそれをしなかった

静さんが助けを求めようとしても無視を続けた

悟志さんもまた

最後まで謝罪の言葉を口にすることはなかった

かすみさんと違うのは

最後に大きなため息をついたこと

井川悟志

"あんなもの"のせいで……

あすみさんは血の繋がった実の娘

そのあすみさんのことを

最後まで娘として認めることはできなかったようだ

沢田マリカ

まさか……

沢田マリカ

かすみさんと同じ判決になるなんて……

芹沢大和

井川悟志には父親として娘を守る義務があった

芹沢大和

でも意図的にそれをしなかったんだ

芹沢大和

だから母親と同等の罪に問われてもおかしくないってことなんじゃないか?

かすみさんと悟志さんはまだ四十代前半だが

これからの二十二年半は長すぎる

それでも二人は判決を受け入れ控訴もしなかった

かすみさんは今回の事件に対して

"仕方ないとしか言いようがない"

と言うような発言をしていて

悟志さんに至っては

一貫してあすみさんの存在を"認めていない"と発言

弁護人もそれらの発言から擁護することはできないと判断

虐待の初犯でこれだけの懲役刑になるとは思わなかった

全ての元凶とも言えるトキ子さんはもういない

悟志さんの妹の瑠美さんの消息も不明のまま

臨月だったかすみさんを階段から突き落とし

懲役五年の判決を受け出所後に消息を絶った

瑠美さんがどこにいるのか

生きているのかさえもわからない

自殺したと言う噂もあったようだが

真相は不明のまま

もし瑠美さんがどこかで生きていたとしたら

どんな思いで一連のニュースを見ているのだろうか

裁判の結果が知りたいとあすみさんに頼まれていたため

芹沢さんと共に裁判所からそのまま病院に向かった

病室のベッドにいたあすみさんは意識もはっきりしていて

受け答えもしっかりできるようになっていた

わずかではあるが手を動かすこともできるようになり

まだ自力で起き上がることはできていないが

日中はベッドの背もたれを起こした状態にして過ごしているようだ

一昨日の静さんの裁判の結果と

今日のかすみさんと悟志さんの裁判の結果を報告する

井川あすみ

私……

井川あすみ

どうして叩かれるのかわからなくて……

井川あすみ

でも小さい頃からずっとそうだったから……

井川あすみ

きっと……私が悪い子だからだって……

井川あすみ

でもお兄ちゃんにも傷があったから……

井川あすみ

どうしてなのかわからなくて……

あすみさんに一から全てを説明するには情報が多すぎる

あすみさんには沢山の"なぜ?"があったに違いない

虐待を受けている間にはそれを考える余裕がなかったが

少しずつ傷も癒え

しっかりと物事を考えることができるようになってやっと

これまでのことを整理して考え

"なぜ?"と思えるようになったのだ

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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