瞬きもできないくらい目が緊張してる
雅紀との顔の距離なんてきっと10センチもない
そんな距離で見つめられて顔が火照らない方がおかしい
雅紀
普段とは違う
低めの甘い声で名前を呼ばれる
私、本当に沸騰しちゃいそう
雅紀
いたずらっ子な、昔から変わらない
からかうときにする、笑い方
右の口角だけがクイッて上がって笑う。
私、この顔好きだ
…って、そんなこと言ってる場合じゃない
咲羅
雅紀
やめてよ、雅紀
私どうしたらいいの
雅紀はどうしてほしいの
ドキドキと心臓がさらに早く動く。
ええい
もうどうにでもなれ!
キスするならしろ!
それはそれで本望だ!
もうわかんなくて
バカだってわかってるけど
ギュッて目を瞑った。
…なかなか来ない
それよりかクククって笑いをこらえてる声が聞こえる。
そういえばすっごい震度
ベッド、すっごく揺れてる
もしかして、って思っておそるおそる目を開けてみると
雅紀がお腹を抱えて笑ってた。
咲羅
私が気づいたとわかった瞬間こらえてた笑い声を全て解放したかのような大きな笑い声
…はっずかしい~!
さいあくだ、私アホだ、バカだ、なにやってんだ
咲羅
ガバって起き上がってベッドから降りてリビングへ
後ろから
雅紀
って声が聞こえるけど
もう許してやんない!
リビングへ行くと体を丸めてぼーっとテレビを見ているにのの後ろ姿が見えた。
後ろ髪がちょこんと跳ねていてかわいい
咲羅
和也
特にこちらを見るでなく、返事をする。
私はリビングの椅子に座って水を飲む
その間もニノは何をするでもなく全くうごかずにテレビを見ている。
和也
咲羅
和也
そうなんだ
でもまたどうして
なんで移動してきたんだろ
酔っちゃってて私とニノを間違えたとか?
や、そんなのあるはずないよね
和也
さっきまで微動だにしなかったニノがこちらを向く。
和也
思わず口に含んだ水を吐き出しそうになった。
いちゃつく?
私たちが?
咲羅
和也
いや、楽しいなんてものじゃなかったよ
ちゅーできるねなんて言われたんだよ
なんて言えるわけもなく
雅紀
能天気にあくびをしながら入ってきた雅紀を見てさっきのことが蘇ってくる。
…やだ、恥ずかしい
和也
私はプイと雅紀に背中を見せる。
雅紀
あわあわしている雅紀はすごくおもしろい。
どうしよ、どうしよってきっと頭の中でぐるぐるしてるんだろなあ
だけどさっきのことは許さない
無視だ無視
雅紀
そんな甘えたな声出したってムダムダ
雅紀
咲羅
…あ、返事しちゃった
ああ、私ってなんてバカなんだろ
ある日
突然大学生時代の友達のミカから電話がかかってきた。
咲羅
ミカ
咲羅
ミカ
その言葉、すごくグサッとくる
ミカも焦ってるのわかるけど…
だけど引く様子もないね、こりゃ
咲羅
ミカ
ミカ
ミカ
通話
00:39
私は人数合わせの合コンに参加することになった。
一気に気が重くなる。
昼休み、またいつもの洋食屋に行くけど気分が沈んでる。
急に電話かけてきたくせに明日、だなんて
服なんて持ってないし
何話したらいいかなんてわかんないし
ああ、やだ
雅紀
私と2分遅れくらいで入ってきた雅紀にそう言われる。
そんなに重く見える?
顔に出すぎかな
雅紀
いつものオムライスを食べながら話を聞いてもらった。
それだけで少し気持ちが軽くなった気もしたけどそんなの本当に誤差程度。
雅紀
咲羅
大学も一緒な雅紀はミカのことも知ってるわけで
なつかしいね、なんて大学のときの話で盛り上がる。
咲羅
雅紀
咲羅
雅紀
キリリと少し胸が痛む。
雅紀は私のこと、本当に恋愛対象じゃないんだなーって改めて思った。
余計に気分が沈んじゃう
雅紀
咲羅
雅紀
聞いといて興味なさげ。
もくもくとオムライスを食べ続ける。
そこへニノが大分遅れてやってきて
いつもの大好きな3人の時間が始まった。
いつもより少しおしゃれめな服で通勤。
何も知らないかわいいかわいい後輩たちにデートですか?なんて聞かれる。
そんな楽しいものじゃないのに
雅紀
咲羅
ふわあ~って大きなあくびをして
んーって伸びをしながら私の向かいのデスクに座る雅紀。
じとーって私を舐め回すように見る。
咲羅
雅紀
咲羅
雅紀
頬杖をついて笑うその笑顔に
ドキっと胸が高鳴る。
普段かわいいなんて言われなれてないからかな
うまく言葉が出てこない
雅紀
咲羅
何回言ってもいい相手見つかるといいね
なんて言ってくる。
だけどあなたにだけは言われたくない。
すごく、胸が苦しくなる。
だけど私もそろそろ雅紀から卒業しなきゃいけないのかな
雅紀だって好きな人がいて頑張ってる。
私なんてもうずっと雅紀が振り向いてくれるのを待っているだけ。
…いい機会なのかもしれない
雅紀から離れられる、与えられた機会なのかもしれない
少し、前向きに考えてもいいのかも
咲羅
雅紀
咲羅
急な宣言に雅紀も驚く。
だけど
雅紀
笑顔で応援してくれた。
やっと、これで決心がついた
さよなら、私の初恋…
コメント
1件
続きが気になる〜!