ミカ
咲羅
コツコツヒールを鳴らして歩く私たち
場所は少し駅から遠くて昔話に花を咲かせる。
ミカ
ミカは大学のころの学科が一緒で一番仲よかった友達で
自然と雅紀とも仲良くなって
私の恋愛の相談相手になってくれていた。
咲羅
ミカ
咲羅
そうだ、私、失恋じゃん
想いこそは伝えてないけど立派な失恋だ
気づいて少し気が沈む。
ミカ
咲羅
おーい、って懐かしいメンバーが見える。
同じ学部の独身メンバー。
軽く久しぶりってあいさつしながらお店に入る。
お店に入って名前を言うと奥に通してくれた。
イタリアンなお店でミートソースの匂いが食欲を誘う。
案内された個室に入ると男の人が4人、座っていた。
見た感じ、誠実そうな人ばかりだった。
私も昨日まであんなに嫌々言っていたけど
案外楽しくて
同年代の男の人と話すのってとてもたのしくて
いつのまにか、夢中になっていた。
ミカ
お酒も入ってすごく陽気になったミカは二次会を提案する。
みんな揃ってはーい!って手を挙げるけど
咲羅
さすがにそこまでの元気はない。
やっぱ年取ったな、って思う瞬間
ミカとか他の子たちはこんなことしょっちゆうなわけで、平気らしい。
咲羅
みんなに一応あいさつだけしておいて、帰ろうと歩き始めた。
ダイチ
そしたら、さっきカラオケ行くって言ってた人がやっぱり帰るって言い出して。
ダイチ
駅まで一緒に帰ることになった。
その男の人はたしか私の真向かいに座ってたダイチさんって人。
たしかラーメン屋の話で盛り上がった人だったかな
見かけはすごく誠実そうなんだけど、話しててわかった
この人、結構女慣れしてる
だからちょっと、苦手
ダイチ
咲羅
他愛もない会話で帰り道を繋ぐ。
なんでこんなに駅遠いの
早く着いてほしい
もう話すこと、尽きそう
ダイチ
そんなことを考えているとスッと手を握られた。
駅の方向の道と交差している道路に連れて行かれる。
咲羅
ダイチ
楽しいとこ…
嫌な予感がする
少し進むと煌びやかに光る街並みが広がってきた
…嫌な予感、的中
咲羅
両手でダイチさんの手を引っ張って
今来た道を戻ろうとするけどびくともしない。
全然動かない。
ダイチ
フッて笑うその顔は
いたずらっ子な顔
だけどすっごく嫌い、怖い
咲羅
ブンブン腕を力一杯振りほどこうとするけど離れない
どんどん進んで行く
ダイチ
看板とか見て吟味するダイチさんは
私の気持ちなんて
不安な気持ちなんて全く知らなくて
どんどん視界がボヤけていく
やだ、こんな人となんて、嫌だ
ポロリ
と一粒涙が流れた時
あれだけびくともしなかった腕がふっと離れて
別の暖かい、なんだか心地よい腕に包み込まれる。
雅紀
ボヤけていてわかんないし
その人の胸に背中が当たってて顔なんて見えないけど
声でわかる
何年もずっと隣で聞いてきたんだもん
咲羅
グッて片腕でガタガタ震える私の肩を抱きしめる。
もう片方の手はダイチさんの手を握っていて
雅紀が手をほどいてくれたんだ、って理解した。
ダイチ
雅紀
あまり聞いたことのない低い声
ダイチさんも少し引き気味になってる
ダイチ
はっ、って1つ乾いた笑いを残してダイチさんは夜の街に消えて行った。
空いていたもう片方の腕で私の肩を回して正面を向いて抱きしめられる。
その優しい腕に包み込まれて、なにかがプチってきれて涙が止まらない。
雅紀
優しく頭上から降り注ぐその声と
頭を撫でてくれるその大きな手は
やっぱり大好きで
諦める、なんてできなくて
雅紀の服をきゅっと握りしめる。
…でもなんで?
咲羅
雅紀
少し間を置いて話し始めてくれた雅紀。
心配してくれて、近くまで来てたらしくて
そしたら私が2人で帰って行ったからもう大丈夫って思って駅の方に歩いていたら
急に駅とは違う方向に曲がって行ったから変に思って跡をつけてくれていたらしい。
あんだけ、興味なさそうにしといて
心配なんてひとかけらもしてくれてなかったのに
咲羅
雅紀
咲羅
少し落ち着いて涙が止まる。
なんでそんなに心配してくれたのか、そっちの方が気になって泣き方を忘れてしまったらしい
咲羅
雅紀
少し詰まる、雅紀
…私、バカだからその先の言葉、期待しちゃう
こんなとこまで来てくれて
こうやって抱きしめて安心させてくれて
さすがに私も、もしかして…なんて思っちゃう
雅紀
雅紀
咲羅
止まっていた涙が再び溢れ出す。
私って甘いんだな
そんな急にそんなことあるはずないのに
冷静になればわかる話なのに
ほんとバカだ、期待するなんて、ほんとバカだ
雅紀
…そんなんじゃないよ
鈍感な雅紀はきっと、この涙の理由なんて気づきっこない
咲羅
雅紀
私が泣きじゃくるから
涙が止まらないから
またぎゅうって抱きしめてくれてる雅紀。
幼馴染ってなんだろ
友達以上恋人未満ってやつ?
1番近いはずなのにすっごく遠く感じる
雅紀がこうやって抱きしめてくれてるのも幼馴染だから?
雅紀は何を思って
どう思って私を抱きしめてくれてるんだろ
私には幼馴染を超えた特別な感情があるけど
雅紀にはないのかな
ただの幼馴染
なのかな
…あるわけないか
考えれば考えるほど私には絶望的な答えにしかいきつかない。
胸が苦しい
もうこれ、何回目?
雅紀
咲羅
ひっどい顔を隠すように下を向く。
雅紀は今、どんな顔してるんだろ
めんどくさいって思われてないかな
雅紀
体が離れたと思ったら次は手を繋いでくれて
私の冷たい手に雅紀の熱が伝わる。
暖かくて幸せで、ぎゅっと握り返した。
そのまま駅に向かって電車に乗って家まで帰る。
家の前まで雅紀は来てくれて
それまで私たちはほとんど話さなかった。
話したら、口を開いたらまた泣いちゃいそうで
雅紀
咲羅
やっぱり顔は見られたくなくて俯いたままの私。
咲羅
そんな私のほっぺを雅紀が両手でつねる。
雅紀
つねった手を横に広げてほっぺたが伸びる
…痛い
咲羅
雅紀
咲羅
雅紀
ばいばいって手を振って隣の家に入って行った。
ヒリヒリするほっぺを手で包み込む。
なんだか、少し元気になれた気がした。
やっぱり雅紀は人を笑顔にする天才だ
コメント
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次はエロ系出してね!
キュンキュンしますね