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真夜中の住宅街

第1話 - 真夜中の住宅街

2020年07月31日

#ファンタジー

佑々木

少女

ねえねえ、お兄さん！

背の高い男性

ん？こんな狭い住宅街に…
君、どうしたのかな。
道に迷っちゃった？

少女

迷ってないよ！

背の高い男性

家は近いのかな？
ここには来ない方がいい、帰りなさい。

少女

一緒にいたお友達がどこにもいないの。

背の高い男性

…え？

少女

お母さんもお父さんもいない！
おうちにも誰もいない。

背の高い男性

……。

少女

お兄さんもでしょ？

少女

ここ、変だもの。

背の高い男性

…君もか…。
こんな小さな子までここに…。

背の高い男性

怖くないかい？
こんな暗いところに
ずっといるのは…。

少女

怖いよ？

少女

だから一緒にいてほしいなって！

背の高い男性

…。

背の高い男性

君はどれくらいここにいるの？

少女

忘れちゃったな。
長いこといる気がするけど
ほんのちょっとなのかも！

少女

お兄さんは？

背の高い男性

…分からない。
もう何も感じない程には
長いこといる気がする。

少女

そっかぁ。

少女

…ここから出られると思う？

背の高い男性

どうかな…。

背の高い男性

ここに来たばかりの時は出られると信じていたのだけれどね。

背の高い男性

今となってはどんどん無気力になって、街灯を頼りに歩き回るだけになっちゃったな…。

少女

あたしは出たいよ、1人は寂しいし怖いもん！

背の高い男性

…僕だって出たいさ。

少女

じゃあ一緒にいてよ！
ここに1人でいるとね、どんどん暗い気持ちになっちゃう気がするの。

背の高い男性

…。

背の高い男性

一緒にいるのはやっぱりダメだ。

少女

どうして…？

背の高い男性

僕はここで友人を1人作ったことがあったけれど、居なくなってしまった。

背の高い男性

この闇に飲まれるように、ほんの一瞬手を離したら姿が見えなくなってしまった。

背の高い男性

僕は思うんだ。

背の高い男性

友人はもっと、ここよりさらに暗い場所に行ったんだろうって。

背の高い男性

怖いんだ。
また喪失感と孤独感を味わいたくない。

背の高い男性

君にも味わって欲しくない。

背の高い男性

いつ僕らも僕の友人のようになってしまうか分からないから…。

少女

このままただ徘徊し続けるの？
この真っ暗な住宅街を。

背の高い男性

…どうしようもないじゃないか。

背の高い男性

ここが何なのか、本当に出られるのかすら分からないのだから。

少女

…街灯が灯ってて、人気がない。
真っ暗な住宅街。

少女

あたし、ここは真夜中だと思うの。

背の高い男性

…真夜中？

少女

そう、明けない訳ないと思うんだ。

少女

朝はきっと来るよ！

少女

ただ、夜が明けるまで暗くて1人は寂しいし怖いから…一緒にいて？

背の高い男性

…分かった。

背の高い男性

ほら手を繋ごう…
はぐれるときっともう会えない。

少女

うん！！

少女

あははっ、お兄さんシルエットしか分からないけど、背が高いと思ってたんだ！

少女

手もおっきいね！！

背の高い男性

…そうだった、僕身長が大きかったんだ。すっかり忘れちゃってたよ。

少女

えへへ、あたしも！

少女

お母さんお父さんのことも、自分の名前すらもう思い出せないんだ〜。

背の高い男性

…僕もだ。

背の高い男性

君は小さくて、とても声が可愛いよ。

背の高い男性

シルエットしか分からないけど、髪も長くて、きっと素敵な女の子だ。

少女

ふふっ、そっかぁ。
もっとお互いのこと忘れないようにお話ししよう！

背の高い男性

うん、そうだね。

少女

朝が来るまで、ずっとね！

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佑々木

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