奏
島谷さんどうかしたんですか?
絵音
いやなにも。
奏
顔色悪いですよ。
絵音
なにもないから平気。
奏
そんなの嘘ですよね。
奏
僕わかります。人が嘘ついてること。
絵音
嘘なんかついてないから。
奏
いやわかります。
絵音
ついてないって言ってんでしょ!!
奏
島谷さん。
絵音
あ、ごめんなさい。
奏
いいんですよ。僕のお節介ですから。
絵音
奏くん。1人になりたいの。
奏
今1人になるのは危険ですよ。
奏
たしか修也の家の方向同じですよね。
奏
修也に頼んで家まで一緒に帰ってください。
絵音
そんなことしなくていいよ。
奏
いやでも。
絵音
帰って。
奏
呼んできますね。
奏は廊下に出た。
奏
修也ー!!!!
修也
んだよ。珍しいなお前が大きい声出すなんて。
奏
いや。その。
奏
今日島谷さんと一緒に帰ってほしいんだ。
修也
なんで?
奏
彼女何かあったみたいで。
奏
僕は力になれなさそうだから。
修也
おい島谷。なにがあったんだ?
絵音
なにも。
奏が人に頼むところや
人が苦しんでるところを見ると放って置けなくなるところが
陸馬に似ていて、何度も何度と
前の楽しい記憶が蘇ってくる。
修也
もしかして、大谷陸馬と仲良いのか?
絵音
え?
奏
その名前は言わないでよ。
修也
あー、わりーわりー。
奏
亡くなったんだよね。
修也
あー。自殺だってな。
絵音
なんで知り合いなの?
修也
俺はそんなに知らねー。でもこいつが。
修也は奏のことを指差した。
奏
親友でした。
絵音
私も。陸馬とは親友でした。
奏
たまたま、ピアノ教室が一緒で仲良くしていたんです。
奏
でも喧嘩した次の日、陸馬が姿をあらわすことはありませんでした。
絵音
喧嘩。だから陸馬は東京に?
奏
さあ。それは。
絵音
陸馬を自殺に追い詰めたのも奏くんだったりしたら。
奏
それは違います。僕はあいつがどっか行ってから一度もあってもないし、連絡も取ってませんから。
絵音
喧嘩ってなに。
奏
僕がピアノをやめたきっかけです。
奏
僕は奏って名前がつくぐらいだから気が付いた時にはいろんな楽器に触れ音楽に親しんできました。
奏
コンサートに出てもなかなか芽が出ずに、苦しんでた時期も親は叱るばかりでも、あいつだけは僕を褒めて支えてくれました。
奏
でもある日、あいつも出たコンサートで、僕は予選を突破せず、親にお前の子供じゃないってそう言われてしまいました。
奏
あいつは、そのコンサートで優勝しました。なんの練習もしていなかったのに。
奏
よく考えれば僕が悪かったのに、僕は陸馬を攻めて攻めて結局「お前なんかいなければ」「お前なんか友達じゃない。消えろ」といってしまいました。
奏
それから、一度も陸馬とは会ってません。
絵音
じゃあ陸馬はそのことでずっと悩んでたってわけ?
絵音
それで思い切って死んだんじゃないの?
修也
なんでそんなことがお前にいえんだ?
修也
もう前の話だろ。
絵音
わかんないじゃない。もしかしたら死ななくちゃいけないって思ったのかも知んないし。
絵音
陸馬はこよなくピアノを愛していたし
絵音
ピアノ教室に通う親友の話もしてた。
絵音
奏くん。
奏
違うんです。
奏
でもそのあと僕はLINEで会って話をしたい。申し訳なかったと謝り、許してもらいました。
奏
それから、たまに連絡を取り合う関係に。
絵音
さっき連絡もとっていないといったじゃない!
奏
それはその。
修也
せめんなって。こいつも苦しかったんだよ。
奏
だから、陸馬に悪いと思って、ピアノやめました。
絵音
そんなの、陸馬がかわいそう。
奏
ごめんなさい。
絵音
大人しくて優しい子かと思ってたけど
修也
なんでも勝手にとらえてるオメーがいけねーんだ!!!
絵音
そんなこと言ったって
絵音
陸馬は戻ってこないでしょ?
奏
好きだったんですか?