柘榴
……

?
……

お付きの狐
何ですか?…ふむふむ、わかりました!

柘榴
?

マスクのイケメン君が首にいる狐に何かをこそっと告げ、狐が頷いている。残念ながら口元がよく見えなかったので何を言っているかが分からなかった。
お付きの狐
あなた様は審神者なのかと、鳴狐が気になっているようです!

柘榴
…えっと?

現世で言うコミュ障ってやつ?神様にもあるんだな。私は少し戸惑ってしまい上手な返しができなかった。
お付きの狐
…審神者様ではないのでしょうか?

柘榴
あ、いや、戸籍上は審神者っていう役職になってるけど、前任のようなことはしないから君達の審神者のイメージとはちょっと違うかも。だから傷つけたりは絶対にしません!だからそんなに警戒しなくていいよ

お付きの狐
鳴狐、この方は審神者であり審神者では無い存在だと申しております!

?
…話は…一期から聞いてる

柘榴
⁉

今話した!喋った!コミュ障だとして大きな進展だよ!
柘榴
一期から聞いてるなら話が早いね。これからよろしくね!コミュ障君

?
…鳴狐

柘榴
?名前?

私の言葉に不思議そうにしつつ、控えめに名前を告げてきた。私が問うとこくりと頷いてくれたので名前で合っているようだ。
柘榴
ありがとう!これからよろしくね、鳴狐!私は夜宮柘榴って言うの!あ、でもみんな主って呼ぶから必要ないかもだけど

鳴狐
…名前……嬉しい…

柘榴
嬉しいの?ただの名前なのに

お付きの狐
主殿、知らないのですか?真名を教えると神隠しに遭うかもしれないのですぞ!

柘榴
えっ、その話詳しく教えて!

お付きの狐
此処にいるのは付喪神、神様なのです!その神様が真名を知っているといつでも神隠しができるのです!

柘榴
付喪神って神隠しできたの⁉やばい、完全に忘れてた。あ、でも神気や霊力の問題もあるからセーフ?それよりも真名教えちゃった事のほうが重要……

鳴狐
…でも、嬉しいよ。信用されてるみたいで

柘榴
信用…なら、教えても大丈夫かな。万が一神隠しに遭いそうになっても応戦すれば何とかなるだろうし…じゃあ大丈夫か

神隠しで一つ良い事を思いついた。本当に私をできるのかどうかで。
柘榴
あ、そうだ。鳴狐、私のこと一回神隠ししてくれない?

鳴狐
え?

お付きの狐
何を言ってるのです!神隠しされるということは死ぬということとほぼ同じですぞ!

柘榴
危険なのはわかってるんだけど、ちょっと気になっちゃって。私が言った夜宮柘榴って名前は改名後の名前だから神隠しってできるのかなって

鳴狐
…出来ると思う

柘榴
やっぱり分かるの?

鳴狐
…うん

柘榴
じゃあ試さなくても大丈夫かな。これから気をつけないと

お付きの狐
そうしたほうがいいと思います

お付きの狐
次の主殿は変わった方ですな

鳴狐
…嫌いじゃない

二人が話しているのはなんだか微笑ましいなと思っていると、襖が開いた。
一期一振
主殿、随分と早かったのですな。お待たせして申し訳ない

部屋に入ってきたのは一期。いつ見てもロイヤル王子なので顔面をついつい見てしまう。
柘榴
まあ、ちょっとごたごたはあったけど…逃げてきたから大丈夫だよ!

一期一振
逃げてきたのですか?クスッ、主殿も毎日忙しいですな

クスッと手を口元に当てながら笑う一期。この仕草だけで国宝な気が……。落ち着いているからかなんだか癒される。情緒不安定気味な鶴丸とは大違いだな。同じレアがつく刀なのに二人って正反対に見える。
柘榴
一期ありがとう。癒された

一期一振
いつでも相談に乗りますぞ。って、あ、主殿…?

穏やかな顔だった一期が急に顔を見てっかにして慌てる。一期の目線は私の胸元あたりにあった。
一期一振
そ、それは一体?

柘榴
一期どうしたの?なんか付いてる?

一期一振
…現世でよく言う…キスマークとやらが、首元に…

え?キスマーク?そんなのどこにあるの?見ようとしてもどう頑張っても見えないでいると、見かねた一期が部屋にあった手鏡を渡してくれた。それを使って自分の首元を見ると薄いがキスマークがあった。
柘榴
え、な、なにこれ!?

私は鏡を見て絶叫した。なんでキスマークがあるの?あれ?知らぬ間に生娘卒業…あ、それは絶対にないか。そんな事があったら寝てても絶対に起きるし、でもキスマークをつけるタイミングなんていつだろう?
鳴狐
俺も気になってた

一期一振
…なんと…すみません。少しはだけていたので見えてしまい…。あ、主殿は…い、いつの間に…夜伽を?

柘榴
夜伽なんて一度もしてない!してないから!誰かが夜這いした可能性はあるけど服は脱がされてないはずだから!ん?夜這い…ああぁぁぁ!!

居たじゃん!夜這いしてきた子!鯰尾と骨喰が!多分鯰尾だよね⁉痕がどうとか言ってたし!骨喰が引きはがしたけどギリギリ間に合わなかったのか。
一期一振
何かあったらすぐに言ってください。私がお覚悟しますので

柘榴
あ、ありがとう

にっこり笑いながら殺しますと言っている一期に対して一瞬寒気が走った。やばい、これがちのやつだ。弟は流石にできないよね?言ったら鯰尾がどうなるか分からない…。
柘榴
そういえば鳴狐の手入れだったっけ?

一期一振
あ、そうでした。良ければお願いできますか?

柘榴
もちろん任せて!

柘榴
じゃあ、ちょっと失礼しま~す

私は手入れのために鳴狐の肩に手を添え軽くキスをした。何だかマスクとキスしてるみたいで変な感じ。
鳴狐
……!

お付きの狐
な、鳴狐!大丈夫ですか!?

一期一振
私も最初は驚きました

一期と狐は手入れ中話をしていた。まあそりゃ誰でも最初は驚くよね。
柘榴
ん…はい終わり

鳴狐
あ、りがと

柘榴
痛いところはない?大丈夫?

鳴狐
うん、大丈、夫

お付きの狐
綺麗に治ってよかったですね!鳴狐!

一期一振
ありがとうございます。助かりました…主殿は体調大丈夫ですか?薬研から体調が良くないと聞いていたので

柘榴
あ、うん!ちょっと寝込んじゃったけど薬研に貰った薬飲んだらすっかり元気になったよ!

一期一振
そうですか。それは良かった、主殿に何かあったら皆が悲しみますからね

柘榴
悲しんでくれるの?なんだか嬉しいかも。この本丸の担当をできて、私は幸せ者ね

一期一振
私達も、貴方が主殿で良かったです

鳴狐
…これからもよろしく

柘榴
ありがとう!これからもよろしくね!私も、もっと頑張るから!
