テラーノベル
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1970年、世界は突如として不穏な闇に包まれた。 どこからともなく現れた原因不明の病は、恐怖と絶望を世界中に撒き散らした。最初はほんの一部の地域で報告されていたが、あっという間に世界を巻き込み、どこもかしこも不安と混乱が広がった。 人々はこの病を「血鉱病」と呼ぶようになった。 その名の由来は恐ろしいものであった。病にかかった者の血液が、まるで鉱石のように結晶化し、身体中に無数の鉱石が次々と現れる。最初は小さな結晶だったが、徐々にそれらは成長し、最終的には人間の肉体そのものを覆い尽くす。肌が硬くなり、肉体は鉱石へと変わり果て、やがては死を迎える。恐ろしいことに、血鉱病は確実に命を奪う病であり、感染者が生き残ることはほとんどなかった。 世界中で人々が倒れ、街は荒廃し、国家は崩壊の一途を辿った。何度も治療法が試みられたが、どれも無駄だった。医者たちは恐れを隠せず、専門家たちは病の謎を解明しようと尽力したが、その全貌は未だに明らかになっていなかった。 そして、その病の蔓延から13年が過ぎた1983年、突然一人の人物が現れた。その人物は、まるで伝説のように語られ、目撃した者さえも少なかった。どこから来たのか、誰であるのか、何の目的で現れたのか—すべてが謎に包まれていた。 その人物は、血鉱病に苦しむ者たちを治療し、ついには病を収束させるための方法を見つけ出したという。しかし、その治療法がどのようなものだったのか、彼がどんな力を持っていたのか、いまだに誰も解明できていない。1983年の終わりには、血鉱病はすっかり姿を消していた。 一部の人々はその人物を「救世主」と呼び、また別の者は彼を「魔物」と恐れた。しかし、彼の名前も顔も記録に残ることはなく、すべての証拠が不明なまま、彼の存在は伝説となった。病が去り、世界が再び息を吹き返したにもかかわらず、その人物の正体を知る者は誰一人としていなかった。 時が流れ、血鉱病の影響を受けた地域は、未だにかつての繁栄を取り戻すことはなかった。被害者の家族や遺族は悲しみに沈み、数多くの記憶が風化していった。しかし、誰もが知っていることがひとつだけある。 あの人物が現れなければ、世界は永遠にその病に飲み込まれていたであろうということだ。 だが、なぜ彼が現れたのか、そしてその後どうなったのか、、 それは永遠に謎のままであった。
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