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消せない想い

第1話 - 消せない想い

2018年12月30日

#恋愛

ゆづき

シズカ

おはよう、えみ

えみ

おはよう

シズカ

ねえねえねえ、昨日の英語の宿題でさ……

シズカ

この問題なんだけどさ、よくわからなくて

えみ

それ、過去形使えばいいんだよ。ほら、あの……

シズカ

そうだ、ねえねぇ、これ知ってる？

シズカ

消しゴムに緑色のペンで好きな人の名前を書いて、その消しゴムを使いおわると好きな人と両思いになれるんだって〜

えみ

何？シズカ、中学生になってまで、まだそんなおまじない信じてるの？

シズカ

そう！私は乙女なんです！それに結構流行ってるんだよ〜

えみ

あーはいはい

涼介

おはよう

えみ

涼介くん、おはよう

シズカ

おはよう

涼介

今、何かくしたの？

シズカ

……いや、別になんにもかくしてないよね？

えみ

……うんうん

涼介

もしかして、アレ？消しゴムのおまじないのヤツ？

えみ

あ……

涼介

ガキだなぁ〜。つっても、俺もやってるけど

えみ

え〜？

シズカ

え〜？

涼介

で、シズカは誰の名前、書いたの？

シズカ

いや、それは……

シズカ

ナ・イ・ショ！

涼介

えみは？

えみ

え、私？私はそういうの信じないから……

涼介

そういうとこ、えみらしいよな

授業中

えみ

(本当は、私も涼介くんのことが好き。)

掃除中

えみ

あっ

机から教科書や筆箱が落ちてしまった

シズカ

気になるの？

えみ

な、何が？

シズカ

涼介くんの消しゴムに誰の名前が書いてあるのか？

えみ

別に……

シズカ

じゃあ、私が見ちゃおっかな

えみ

やめなよ、シズカ！

シズカ

ちょっとぐらい、いいじゃん♡

えみ

やめ……

涼介

おい！

涼介

何してんの？

シズカ

えみが机の中のものこぼしちゃって……

えみ

ごめん

涼介

もしかして……見た？

シズカ

別に、何も見てないよ

えみ

うん。見てない

涼介

そっか……なんか、きつい言い方してごめん。部活行くわ

シズカ

涼介くん、何か忘れ物？

涼介

ああ、そうそう。その筆箱と体操着

涼介

じゃ

数日後

涼介

えみ！

えみ

涼介くん

涼介

なぁ、今度の日曜日さ、図書館行ってテスト勉強しない？

えみ

え！？

涼介

あ、もちろん、シズカも誘って三人で……

えみ

あ、そうだよね……

涼介

うん

えみ

わかった。シズカに聞いとく

涼介

サンキュー、じゃあまた明日！

シズカ

えみがこんなにひどい女だって思わなかった〜

えみ

シズカ！

シズカ

親友の私が好きな男の子とそんなに仲良くしちゃってさー

えみ

そんなこと……

シズカ

実は、えみも涼介くんのこと好きになったとか？

えみ

ちがうって！

シズカ

……じゃあ、涼介くんと何話してたの？

えみ

今度の日曜日、図書館でテスト勉強しようって。

えみ

も、もちろんシズカも誘って三人でだよ

シズカ

ふ〜ん。じゃあ、えみは行けないね

えみ

え

シズカ

だって、見たでしょ？涼介くんの消しゴム

えみ

……うん

えみ

(わかってる。……分かってるけど……。)

シズカ

あと……もう涼介くんに近づかないでよね

シズカ

だって……私たち

シズカ

親友でしょ？

えみ

……うん

数週間たった昼休み

涼介

えみ、昨日、急に都合悪くなったって聞いたけど……

えみ

ああ、うん、ごめんね

プルルルルルルルル

シズカ

「もしもし、えみ？」

えみ

「あ、シズカ？」

シズカ

「えみにお願いがあるんだけど
」

えみ

「なに？」

シズカ

「明日、私、涼介くんに告ろうと思ってて」

シズカ

「だから……一人じゃ不安だから、えみ、一緒についてきてくれない？」

えみ

「え……」

シズカ

「お願い。私たち、親友でしょ？」

えみ

「うん……わかった」

シズカ

じゃあまた明日ね

翌日

シズカ

行こう、えみ

シズカ

昨日ついてきてくれるって言ったよね？

えみ

……あ、うん

シズカ

緊張するー。でも、消しゴムに私の名前が書いてあったから大丈夫だよね？

シズカ

じゃあ、ここで待ってて

えみ

え？なんで？

えみ

(告白の現場まで見てなくちゃいけないの？)

えみ

あ、私、教室に戻ってる……

シズカ

私は中で涼介くんをまってるからさ。絶対待っててね

涼介がやってきた

シズカ

涼介くん

涼介

話って何？

シズカ

……実は私、前から涼介くんのことが好きだったんだ

シズカ

だから、あの……私と付き合ってくれない？

涼介

ごめん

シズカ

え？なんで？涼介くんの消しゴムには私の名前が書いてあって……

涼介

やっぱり見たんだ

シズカ

あ……

涼介

とにかく、俺、ほかに好きな子がいるんだ。

涼介

だから、シズカとはつきあえない、ごめん！

シズカは逃げ出すように走り去った

えみ

シズカ！

えみ

あ、あのさ。きっとシズカにはもっといい人が……

シズカ

やめてよ、私、知ってるんだから！

えみ

え？

シズカ

えみがいっつも涼介くんのこと見てたの、知ってた。

シズカ

私、ずっとえみの本当の気持ち、言ってほしかったんだよ！

シズカ

だって、私たち親友でしょ！

えみ

それは……

シズカ

そんなふうにウジウジしてるのえみらしくないよ！

シズカ

えみはいっつもクールぶって、本当のこと、何も言ってくれないよね？

えみ

シズカ、ごめん。そんなつもりじゃ……

シズカ

今日はもう私のことはほっといて！

教室

涼介

なあ……えみ

えみ

涼介くん……

涼介

俺……

涼介

えみのことがずっと、好きでした

えみ

……でも、涼介くんの消しゴムにはシズカって

涼介

おまえも見てたんだ……

えみ

えっ

シズカ

シズカもさっき同じこと言ってたから

えみ

ごめん……

涼介

でも、シズカって書いてないから

えみ

……でも

えみ

……ほらやっぱり

シの文字が見えてくる。

涼介

もっとよく見ろよ

えみ

え？

江の文字が見えた

漢字で堂々と書いた「えみ」の文字が出てきた。(江美)

涼介

おまじないなんか信じない江美にしたら、こんな子どもしみたものに頼る俺なんて、カッコ悪いよな

涼介

でも、おまじないなんかに頼って自分の気持ちを言わなかったせいで、シズカのことを傷つけてしまった。

涼介

だから……だから……

涼介

これからは、自分の気持ちをはっきり伝えよう、そう決めたんだ

涼介

俺は、江美のことが好きです

えみ

涼介くん……

涼介

ごめん。そんだけだから

えみ

待って！

涼介

え？

えみ

本当は私も、二人と同じおまじないしてたんだ

えみ

……私もおまじないなんかに頼らないで、自分の気持ちはちゃんと伝える。好きな人にも。親友にも。

えみ

……私もずっと涼介くんのことが好きでした

涼介

……緊張した。でも、江美の気持ち聞けて……うれしいよ

えみ

……うん

その後

シズカ

ああ、もうわかったよ。ムカついてたけど、私、やっぱり江美のことキライになれないや

えみ

シズカ……

シズカ

私に気を遣わないで涼介くんと仲良くしていいからね。あんたたち見てるとじれったくてさ！

仲直りできたよ、って涼介くんに報告したら、一緒に喜んでくれた。

今は、シズカの新しい恋を全力で応援中です！

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