とある春のこと。
春
(あーっ、どうしよう)
春
(雨降って来ちゃった…)
春
(傘持って来てないよ…)
「あの」
私の後ろから、優しい声が聞こえて来た。
春
はっ、はい
黒瀬
…これ、良ければどうぞ
そう言って、その人は私に傘を差し出した。
春
あっ、ありがとうございます
春
あの、お名前は…
黒瀬
黒瀬です
春
は、はい…
黒瀬
では
黒瀬
春
(…黒瀬くん、かぁ)
春
(…優しいな)
翌日
春
(黒瀬くんが貸してくれた傘、返さないと)
ドンッ
春
あっ、すいませ…
黒瀬
あ
春
あっ、黒瀬くん
黒瀬
おはよう
春
おっ、おはよう
春
あっ、この傘、昨日はありが…
私が傘を差し出そうとすると、傘の中から薄ピンクの紙切れが落ちてきた。
春
あっ、ごめんなさ…
私が紙切れを取ると、ひらっと紙切れの中身が見えた。
『春さんへ』
『好きです』
春
…はい
私は、そのまま、紙切れと傘を黒瀬くんに渡した。
春
…返事は、
春
…OK、です