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司
司はカレンダーを見て呟いた。
3日後の日付のところには『 ピアノコンクール 』と書かれている。
司
そのコンクールで優勝すれば、海外でのコンサートに参加出来る貴重なコンクールだった。
_____♩♩♫ ♪♪♩♩…
練習しているのは、ショパンの幻想即興曲だった。
今日も完璧に弾いた彼は、満足気にピアノの蓋を閉じた。
母
司
母
司
母
完璧、だと思っていた演奏は今日も母には届いていない。
司
母
司
母
司
司の母は、有名な元ピアニストだった。
しかし、父と結婚後に引退した。
司には大きすぎる期待を持っていて、それは司に大きなプレッシャーを与えていた。
司
司の目から零れた水滴は、風呂のお湯の中の1滴へと溶けていった。
司
カレンダーを見ると、残り1日。
緊張と不安しかないのは、母にまだ認めて貰えてないからだ。
静かに鍵盤に指を置き、初めの音を押す。
_____♩♩♫ ♪♪♩♩
同じ旋律、同じ音程でもどこか不安定な音色が部屋に響く。
司
気持ちが焦り、音を押し間違える回数が増える。
司
演奏も続けられず、鍵盤から指を離す。
不安や焦りから気持ちは恐怖へと変わっていた。
司
司
呼吸がままならない司は一旦部屋を出ようと立ち上がる。
が、それも叶わず床に倒れ込んだ。
その時、冷静にもあるものを見つけた。
司
ピアノの下
いつもはカーペットで隠れていて見えなかったが、倒れた拍子に捲られているそれの下には
小さな扉があった。
司
そう思った時には既に司は扉を開けていた。
無意識に母から逃げようとする思いが生まれていることにも気が付かずに。
続く