ある日の休日。
晴れた秋の朝。
雅哉はコンビニの袋を片手に、 少し緊張しながらマンションの階段を 上がっていた。
雅哉
インターホンを押す前に、何度も深呼吸をした。
雅哉
―ただ「遊びに来て」って 言われただけなのに。
ピンポーン。
和人
扉の向こうから聞き慣れた明るい声がした。
ガチャ。
和人
和人はいつも通りの笑顔で、 Tシャツにパーカー姿。
少しだけ寝ぐせのついた前髪が、 妙にリアルで、胸がドキッとした。
雅哉
玄関には2足のスニーカーと、 脱ぎっぱなしのスリッパ。
部屋に入ると、思ったよりも狭くて、 でもちゃんと和人らしい空間だった。
日当たりのいいベッド、 観葉植物、漫画が整頓された棚。
机の棚のところには推しの フォトブックが置いてある。
和人
雅哉
和人
雅哉
ソファに並んで座る。 ふたりの間に、微妙な距離があった。
和人が笑いながら言う。
和人
雅哉
和人
雅哉
雅哉はぷいと顔を背けるが、 すぐに和人が自分の隣にぐいっと近づいてきて、思わず肩が触れ合った。
和人
雅哉
和人
雅哉
ふたりの視線が重なって、部屋が静かになる。 カーテン越しの光だけが、 優しくふたりを照らしていた。
和人がそっと言う。
和人
雅哉
そのまま、ほんの少しだけ身体を傾けた 和人の肩に、雅哉の頭が預けられた。
和人
小さな声で呟く
雅哉は何も言わなかったけれど、 ただ静かに目を閉じて、 その温かさに身を預けた。
少しずつ、少しずつ。 ふたりの世界が重なり合っていく気がした――。