ジャイアン「え、のび太が自殺・・・?」 スネ夫「そうなんだよ・・・。学校の裏山で首を吊ったらしいよ・・・」 ジャイアン「そうか・・・」 スネ夫「・・・」 ジャイアン「おい、スネ夫」 スネ夫「え?」 ジャイアン「今日は空き地で遊ぶのやめだ。そんな気分にならねえ」 スネ夫「あ、うん」 ジャイアン「じゃあな」 スネ夫「うん、また明日」 ジャイアン母「おかえり、タケシ」 ジャイアン「あれ?母ちゃん、どっかいくの?」 ジャイアン母「ああ、保護者説明会だよ。あんたも噂で聞いてるだろ」 ジャイアン「え、あ、ああ」 ジャイアン母「今日は店手伝わなくていいから。ジャイコを頼んだよ」 ジャイアン「うん。わかった」 ジャイアン母「夕飯は作ってあるから適当に食べなさいね」 ジャイアン「わかった」 …剛田家夕飯… ジャイアン(モグモグ) ジャイコ(モグモグ) ジャイコ「ねえ、お兄ちゃん」 ジャイアン「ん?」 ジャイコ「お母さん、遅いね」 ジャイアン「ああ」 ジャイコ(モグモグ) ジャイアン(モグモグ) ジャイコ「ねえ、のび太さんが死んだのって」 ジャイアン「!?」 ジャイコ「お兄ちゃん、関係あるの・・・?」 ジャイアン「・・・」 ジャイアン「なんで、そんなこと、聞くんだ」 ジャイコ「だ、だって、お兄ちゃん、よくのび太さんのこと、いじめてたから」 ジャイアン「だからって俺は」 ジャイコ「クラスで噂になってる。お兄ちゃんがのび太さんをいじめたからじさつしたんだって」 ジャイアン「!!」 ジャイコ「お兄ちゃんが酷いいじめをしたからって・・・」 ジャイアン「ジャイコ・・・俺とのび太は心の友だ。俺はのび太がじさつするようなことはしていない・・・のび太はそんな奴じゃ、ない」 ジャイコ「お兄ちゃん、信じていいの?」 ジャイアン「ああ・・・」 翌日教室 ジャイアン「おはよー」 ジャイアンに視線が集まる。 ジャイアン「な、なんだよ・・・」 ヒソ、ヒソ、ヒソ ジャイアン(なんなんだよ・・・) ジャイアン「おい、スネ夫」 スネ夫「・・・(無視)」 ジャイアン(スネ夫まで・・・) 男子「人ごろし(ボソッ」 ジャイアン「!?」 ジャイアン「おい、誰が人ごろしだ!!」 静まりかえる教室 ジャイアン「誰だよ!人ごろしって言った奴は!!」 ジャイアン「お前か!!」 胸倉を掴むジャイアン 男子「ち、違うよ」 ジャイアン「お前か!?」 男子「離せよ。人ごろし」 ジャイアン「!!」 男子「離せよ、僕ものび太君みたいに追い詰めてころすのかい?」 ジャイアン「な、俺はのび太をころしてなんか」 男子「じさつに追い込んだじゃないか」 ジャイアン「そんなの、俺が、原因かどうか、わか、わからない、だろ・・・」 男子「わかるよ。君以外何が原因だって言うんだよ」 ジャイアン「しょ、証拠、あんのかよ」 男子「証拠なんかいらないだろ。むしゃくしゃしたからってボコボコにして、新しいバットを買ったら殴り具合を試して、出来ないのをわかっていて野球をやらせてエラーしたらまたボコボコにして、こんなことしたらじさつしても不思議じゃないじゃないか」 ジャイアン「う・・・」 出木杉「もう、やめなよ!!」 出木杉「タケシ君を責めても仕方ないだろ?のび太君が亡くなったのはタケシ君が原因かどうかなんてわからないじゃないか!」 ジャイアン「出木杉・・・」 出木杉「僕達だってタケシ君にのび太君がいじめられているのをわかっていて黙っていた。違うかい?形は違っても僕達だって見て見ぬふりをするといういじめに加担していんだよ!」 ジャイアン「出木杉、俺は、いじめなんて、そんなつもりじゃ・・・」 出木杉「タケシ君、もう過ぎたことだよ。過去を偽っても仕方ない。君は他人の痛みがわかる人間になるべきだよ」 ジャイアン「俺は、俺は、ただ、のび太が・・・」 担任「剛田はいるか?、剛田、先生と一緒に来なさい」 ジャイアン「先生・・・」 職員室 担任「剛田、はっきり言うが野比のじさつに関してあらぬ噂が流れている」 ジャイアン「はい・・・」 担任「マスコミや愉快犯によるお前の個人情報の収集や、中にはお前に危害を加えようとする人間もこの学校やお前の自宅に集まってくる」 ジャイアン「・・・」 担任「今朝の職員会議で決まって親御さんの許可もとってある。お前はしばらくホテルに身を隠すんだ」 ジャイアン「そ、そんな!」 担任「わかっている。お前は野比をいじめいたつもりなんてない。だが、これはお前の身を守るためだ。ほとぼりが冷めるまではホテルで自習していなさい。教材は送るから自習していなさい」 ジャイアン「・・・」 市内ホテル ジャイアン「・・・」 ジャイアン(のび太、辛かったのかな・・・。俺はただ、あいつが一人だから、とろいから、ちょっかいを出して・・・) ジャイアン「駄目だ!気持ちを強く持たないと!俺は間違ってない!俺はジャイアン!ガキ大将だ!せっかくホテルでダラダラゴロゴロ出来るんだ!」 ジャイアン(とはいえ退屈だな・・・TVでも見るか・・・) TV「えー、私は現在、いじめでじさつしたN君の小学校近くに来ています」 ジャイアン「!?」 TV「こちらの小学校の裏山で幼い命が自ら命を絶ったのです」 モザイクがかかり声を変えられた小学生がインタビューに答えている。 スネ夫「新しいバットを買ったから殴り具合を試させろって嫌がるピーー(被害者)を殴っていました」 ジャイアン「な、なんだよ、これ」 男子「ピーー(じさつした男の子)は野球が苦手なんですけど、ピーー(いじめの主犯格とされる男の子)はエラーしたらころしてやるって脅していました」 ジャイアン「そんな、俺は、そんな、つもりじゃ・・・」 コメンテーター「これは酷いいじめですよね。教師は何をしているのでしょうか。学校はこの問題を隠ぺいしようとしているのでしょうか」 コメンテーター「聞く所によると被害者の男の子は全教科0点で体育もダメ、しかも毎日遅刻していたそうですが、これはいじめの主犯格の子のいじめが酷すぎて脳が萎縮したんだと私は思いますね」 尾木直樹「これはね、子供だから痛みがわからないのが問題なのね。いじめていた子はきっと自分が酷いいじめをしていたことに気付いていないと思いますよ」 ジャイアン(そ、そんな、俺は、俺は、のび太を・・・俺、は・・・) ジャイアンは怖くて泣いた。 自分自身がしたいじめの残酷さに気付き、泣いた。 ジャイアン「こ、ここは・・・」 気が付くとジャイアンは真っ暗な空間に立っていた。 のび太「ジャイア~ン、えへ、えへへ・・・」 ジャイアン「のび太、お前!生きてたのか!」 のび太「ジャイアン・・・君に殴られて、痛かったよぅ~?」 ジャイアン「の、のび太!?」 のび太の頭がぐにゃぐにゃに変形する。 のび太「ジャイア~ン、待ってよ~う、ジャイア~ン、ジャイアンのおかげてこんな頭にななななになたなたなたったよ!ウヒヒヒ」 ジャイアン「く、来るな!のび、太!!お前!」 のび太「えへ、えへへへ、ジャイア~、ン、あ、そぼ、遊んで、よぅ、ま、ま、待って、よよぅー?」 ジャイアン「うわああああああああああああああ!!」 ベッドから起き上がるジャイアン ジャイアン「はぁ、はぁ、はぁ、ゆ、夢、か・・・」 ジャイアン「そうだ、のび太はもうこの世にはいないんだ・・・のび太は・・・」 ジャイアン(ごめん、のび太、俺が悪かった・・・。全部俺が悪いんだ・・・。明日、明日になったら謝りに行こう。もう遅いけど、謝りに行こう) カタン ジャイアン「!?」 時刻は夜中の2時 部屋は真っ暗だった ジャイアン(いま、物音が・・・な、なんの音なんだ!?) ジャイアン(まさか、のび太の幽霊・・・人の気配が・・・!!) カタン、カタン、カタン ジャイアン(ビクッ、ビクッ) ガタガタガタガタガタ ジャイアン(う、うわああああああああああああああ!!) ジャイアンは恐怖のあまり掛け布団にもぐった。 ジャイアン(の、のび、のび太、のび太が、のび、のび太が俺、俺を、俺) カタン、カタン、シュ、シュ ジャイアン(怖い、怖いよ、のび太、俺なんで、こんなこと、嫌だ、怖い、もう、嫌だ!) シュ、シュ、シュ、シュ ジャイアン(気配がする。ベッドの横に誰かいる!覗きこんでる!誰かが、いる!) 掛け布団がゆっくりめくられる。 ジャイアン(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、もう悪いことしません!ごめんなさい) ジャイアンはゆっくりときつくつむった目を開く のび太「えへ、えへへへ・・・」 ジャイアン「うわああああああああああああああ!!」 のび太「ジャ、イ、アアアン、遊ぼう、よ、」 顔がぐにゃぐにゃになったのび太がいた。 ジャイアン「の、のび太、お前!」 のび太「えへ?う!あ、あああ、いいいい、あら?ウヒ、ウヒヒヒ、アヒ、アハハハハハ」 ジャイアン「のび太、お前、お前」 ジャイアンは泣いていた。 のび太「え、ラー、した、ご、めごめんね、ジ、ジャイ、アン、エ、ラー、し、ごめごめご、ごめん、なななな?なさい、ごめ、ん、フヒ、ウワアアアアアアアアイ!!!」 ジャイアン「のび太、頼む、やめてくれ!もういいんだ!エラーなんて俺が悪かったから!俺が悪かったんだ!」 のび太「い、いた、痛いか、痛いかったよよよ?痛い痛い、頭、痛い痛いいたたたたた」 ジャイアン「ごめん、のび太、俺が悪かった!謝っても許されないけど、ごめん、ごめんなさい!」 のび太「ハ、ヒハ、ジ、ジャイアン・・・」 ジャイアン「のび太・・・のび太、ごめん、ごめんよ」 のび太「えへ、えへへへ、いいんだよ、ジャイアン、今までありがとう」 ジャイアン「え?」 のび太「僕はジャイアンに構ってもらわなきゃずっと一人ぼっちだったから」 ジャイアン「のび..太...」 のび太「僕がとろいから厳しくしてくれてたんだよね。ジャイアン、ありがとう」 ジャイアン「のび太、俺は・・・」 のび太「短い人生だったけどスネ夫みたいに嫌味じゃなくて正面から堂々と僕に構ってくれたジャイアンには感謝してるよ」 ジャイアン「やめろ、のび太、俺は、俺は・・・」 のび太「さようなら。僕はもういくよ。今度は野球がもっとうまく生まれてくるから、また、野球に、誘っ、て、、、ね」 ジャイアン「のび太、違うんだ、俺はお前に酷いことを!待ってくれ!のび太!!」 のび太の気配は消えた。 ジャイアン「のび太・・・」 ジャイアンは泣いた。 罪悪感と後悔の念に泣いた。 翌朝 ジャイアンは自宅に戻った。 ジャイアン母「タケシ、やつれたね・・・」 ジャイアン「うん、俺、やっとわかったんだよ」 ジャイアン母「そう・・・。私達、引っ越すことになったからね」 ジャイアン「母ちゃん、ごめん。俺のせいで」 ジャイアン母「いいんだよ。子供なんだから・・・。子供なんだから、仕方なかったんだよ・・・」 ジャイアン「母ちゃん・・・」 剛田家は引っ越していった。 スネ夫(のび太もジャイアンもいない・・・これからどうしよ・・・) 男子「ねー、スネ夫くーん」 スネ夫「え、あ、な、何?」 男子「スネ夫君の家って金持ちだよねー?ジャイアンに貸してたゲームとか漫画僕達にも貸してくれないかなぁー?」 スネ夫「い、いや、あんまり貸し借りは駄目だってママが」 男子「ええ?ジャイアンには貸してたのにぃ? それって差別なんじゃないのぉ?」 スネ夫「そそんなこと言われても」 胸倉を掴む男子 男子「黙って持ってこいよ。腰ぎんちゃく」 スネ夫「!!」 スネ夫はいじめられた。 のび太がいないから。 ジャイアンが守ってくれないから。 スネ夫はいじめられた。 男子「スネ夫は人ごろしと仲良くしてたよなぁー?クラスからじさつ者がでたから連帯責任で罪は償ってもらうよぉー」 男子「ギャハハハハハハハハ」 スネ夫「そ、そんな、僕はそんなこと」 のび太の死が。 クラスからいじめをなくすことはなかった。 担任「うちのクラスにいじめはないが野比君が亡くなったことに関しては真摯に受け止めたいと思う。 みんなも今後ともいじめには気をつけるようにな」 クラス「はーい!」 スネ夫「せ先生・・・」 担任「ん?なんだ?骨川?」 スネ夫「いいえ」 担任「そうか。お前は野比や剛田と 仲が良かったからな。辛いとは思うが頑張りなさい」 男子「大丈夫ですよ!骨川君は僕達ともうすっかり親友ですから」 担任「良かったな骨川!」 スネ夫「・・・」 男子「スネ夫ー今日も空き地で遊ぼうなー ゲーム持ってこいよー」 男子「持ってこいよー。ププッ」 スネ夫「・・・」 いじめはなくならない。 どんなに大人が気をつけても 絶対になくならない。 誰かが貧乏くじを引かないと 人は集団を維持できない。 人はいじめをせずに 生きられるほどお利口じゃない。 いじめは本能。 いじめは人の性。 だけどいじめはしてはいけない。 いじめを無くそう。
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