星夜空
星夜空
ほとけ
うっすらと目を開ける。
外からの光は、明るかった。
ほとけ
ゆっくりと上体を起こす。
眠い目で辺りを見回すと、赤いものが目に入った。
林檎だ。
机の上にあるバスケットに、 溢れんばかりの林檎が入っている。
········誰だろう。
僕には、見舞いの品をくれる友達なんて、いない。
ほとけ
バスケットの傍らに、 破り取られた水色のメモ用紙が添えてあった。
少し体を傾け、それに手を伸ばした。
ほとけ
いむへ 昨日はごめんなさい。 1人にしてあげた方がいむも楽だと思ったので、 少しの間貴方から離れることにします。 お医者様もその方がいいと仰っていました。 でも、貴方が治るまで母さんはずっと日本にいるので、 何かあったら呼んでね。 母さんより
端正な字だった。
ほとけ
·············母さんは、恐らく僕のことが嫌いな訳じゃないのだろう。
でも、
仕事でいつも海外にいて、
滅多に帰ってこないから、
僕は幼い頃からずっと独りだった。
家には、雇っているお手伝いさんがいたけど、
孤独感はそれじゃ到底埋められなかった。
だからだろうか。
ひとり親なのに、僕は母さんに全然懐いていなかった。
まともに話したことすらあまりなかった。
母
ほとけ
母
母
ほとけ
母
ほとけ
ほとけ
ほとけ
あー········
だめだ。
折角明るい気持ちで迎えた朝が台無しだ。
ほとけ
ほとけ
ほとけ
忘れられない。
どことなく、居心地が悪い。
机に置いたあのメモ用紙が、どうしても目に入る。
········最悪だ。
ガタガタガタ······
ほとけ
窓に風邪がぶつかって揺れる。
でも、窓は鍵がないと開けられない。
けど、
·········どうしても、外の空気が吸いたい。
·········そうだ、
ギイィィィィ·····
ほとけ
屋上の扉が開いていた。
······こんなずさんな体制でいいのだろうか、
こんなに緩かったら皆ここで自殺するだろ。
現に、僕だって、
無断で部屋を抜け出してこの屋上に来たのだ。
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
初兎
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
初兎
今日もまた、いつもと同じように屋上へ向かう。
初兎ちゃんと会って、これで1週間。
前はあれだけ病んでいた心も、
少しだけ。
元気になった気がする。
ほとけ
屋上に行ったはいいものの、
肝心の鍵が閉まってて開いていなかった。
ほとけ
少しだけ、そこで待ち続けたが、
結局初兎ちゃんは来なかった。
········検査か何かだろうか。
来ないの、珍しい。
ほとけ
看護師
ほとけ
ほとけ
ほとけ
看護師
看護師
ほとけ
ほとけ
看護師
看護師
初兎
ほとけ
向こうから、看護師さんと一緒に初兎ちゃんが歩いてきた。
初兎
初兎
ほとけ
看護師
初兎
初兎
看護師
看護師
看護師
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
初兎
「_____!」
「_____、_____wwww」
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
初兎
ほとけ
·········フラッシュバックする。
今までの苦い思い出、
あったかい思い出全部、
脳裏によぎる。
ほとけ
ほとけ
ほとけ
はぁ?
お前、出来んのw?
ほとけ
お前なんか混ぜるわけないだろ!
ほとけ
ほんっと面白いな、勘違いもいいとこだよww
さ、コイツ抜きでやろやろ。
何やるー?
ババ抜き!
OK、ジョーカー何枚にする?
・ ・ ・
ほとけ
ほとけ
ほとけ
いらない子だ
いふ
ほとけ
ほとけ
いふ
いふ
ほとけ
ほとけ
いふ
いふ
ほとけ
いふ
いふ
いふ
曇りのち晴れくらいが1番、
ちょうどいいんだから
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎ちゃんは、何故かそれを否定しなかった。
ただ、優しそうに微笑んでいた。
初兎
初兎
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
初兎
·········話。
話ってなんだろう。
確信は無い。無いけど、
どことなく。
嫌な予感がして、
その日の夜はよく眠れなかった。
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
初兎
ほとけ
初兎
初兎
初兎
心臓がバクバクと跳ねる。
心音が全身に伝わる。
うるさい、
静かにして。
どれだけそう思っても、速さが増すだけだった。
初兎
ほとけ
初兎
え·······?
いふくん?
いふくんが、初兎ちゃんに?
え、
え?
ほとけ
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
声が出ない。
出そうとしても、有り余った呼気だけが口から漏れた
初兎
初兎
初兎
初兎
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
初兎
「もう時期、この病院に水色の髪の、」
「“ほとけ”って奴が来る。」
「初兎に、頼んでもええか?」
「俺はその時もうおらんから、あいつのこと見てやれない。」
初兎
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
大っ嫌い
初兎
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
ほとけ
初兎
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
ほとけ
僕の身長より少し低いフェンスに手を掛ける。
靴も何も脱がずに、
フェンスの外に右足から足を出した。
初兎
初兎
初兎
初兎ちゃんが僕の胴体をフェンスの内側に強く引っ張る。
········僕の体力が落ちてるからだろうか。
細々とした腕で引っ張られているのにも関わらず、
力が強いようにすら感じた。
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
結局、僕は初兎ちゃんの力に負け、
引っ張られた勢いでフェンスの内側に倒れ込んだ。
ほとけ
声にならない声を出す。
もはや泣き声ですらない。
初兎
初兎
ほとけ
何で?
なんで生きてるの?
いふくんだけは、味方だと思ったのに。
一緒にいてくれると思ったのに。
裏切らないはずだって、
信じてたのに。
初兎
初兎
初兎
初兎
屋上には、初兎ちゃんの悲壮なか細い声が響いていた。
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